2013 Fiscal Year Research-status Report
小規模市町村における市民後見人育成の研修体制についての研究
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24653157
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Research Institution | Fukuoka College of Health Sciences |
Principal Investigator |
古野 みはる 福岡医療短期大学, その他部局等, 講師 (20613433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 浩司 西南女学院大学, 保健福祉学部, 准教授 (80636382)
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Keywords | 市民後見人 |
Research Abstract |
平成25年度は、ドイツ成年者世話法の現状と課題を把握することを目的として、ドイツでの現地調査を行った[訪問先:デュッセルドルフ、期間:平成26年3月22日~3月30日(9日間)、同行者:研究分担者 今村浩司、研究協力者 大垣京子]。現地調査にあたり、平成26年5月から平成26年3月まで毎月1回ドイツの福祉制度やそれを支える民間福祉団体、ドイツ成年者世話法についての勉強会を開催し、併せてそれらに関連する資料や文献の収集、整理を行い、ヒアリング調査項目を確定させた。 ドイツ調査では、ドイツ成年者世話法を三位一体で支えている後見裁判所、世話役所、世話人協会(2ヶ所)を訪問し、それぞれの実施体制や役割を明確化し、世話人の内訳、名誉職世話人の活動内容、支援体制、世話制度の現状等について、聞き取り調査を行った。特に、裁判所と行政、民間支援組織との連携のあり方は、我が国の市民後見人を支える体制づくりにとって有益な知見を得ることができた。 さらに、ドイツでは、名誉職世話人が減少していること、世話人への報酬等財源の問題から、現在は世話制度よりも予防的代理契約を推奨しているとの新しい動向も興味深い点であった。調査が年度末となったので、詳細な整理・分析は平成26年度の予定である。 平成25年度は、前年度に実施できなかった後見センター等の設立を含めた市民後見人のバックアップ体制の現状・課題について、モデル事業の37市区町に質問紙による調査を実施し、市民後見人育成のみならず、その活用やバックアップ体制を含めたシステム構築のための課題を抽出したいと考えていた。しかし、平成24年度以降に後見センター設立や実際の運用を開始している市区町が多いため、平成25年度に調査を行っても有効な回答が得られない可能性が高く、質問紙による調査は平成26年度に実施することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、小規模市町村における市民後見人の研修体制のプログラムモデルを提唱することを最終目的としている。そのために、(1)市民後見人育成の先駆的市町村、国のモデル事業を実施している37市区町の実施状況を調査し、我が国の市民後見人育成の現状と課題を抽出する、(2)ドイツの成年者世話法の現状と課題を調査し、我が国での市民後見人育成の研修体制づくりに反映させる、(3)市民後見人が担う事務の範囲を明確にし、必要な研修体系、支援・監督体制を提示した上で、小規模市町村におけるネットワーク構築等広域的な支援体制づくりを検討する、ことを計画した。 まず、(1)であるが、先駆的市町村の実施状況は文献・資料収集を行い、37市区町のモデル事業の実施状況は厚生労働省に提出された実績報告書の分析を行い、平成24年度に複数の市町にヒアリング調査を行った。各々の自治体の研修委託先、内容、組織体制の構築、適正な活動のための支援等、専門職や住民組織、後見センター等を含めた社会資源の状況を把握することができた。但し、後見センター等の設立を含めたバックアップ体制については、平成24年度以降に設立・運営を行う自治体が多いことから、平成26年度に質問紙による調査を行う予定である。 (2)のドイツ現地調査は、平成25年度末に実施し、ドイツ世話法を三位一体で支える後見裁判所、世話役所、世話人協会を訪問し、我が国の市民後見人を支える体制づくりにとって有益な知見を得ることができた。ドイツでは、名誉職世話人が減少していること、世話人への報酬等財源の問題から、世話制度よりも予防的代理契約を推奨しているとの新しい動向を知ることができた。調査が年度末となったので、詳細な整理・分析は平成26年度の予定である。 (3)については、平成26年度に取り組む予定であり、これまでの研究目的については、おおむね達成していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は最終年度であるので、24年度、26年度に積み残した課題に取り組みたい。 まず、平成24年度に実施予定であったが遅延している、モデル事業の37市区町への質問紙による調査である。これら市区町が市民後見人育成後に後見センター設立や実際の市民後見人の運用を含むバックアップ体制を整備するのに時間を要していたため、明確な回答が得られる可能性が少ないと考え遅延していたが、26年度はこれらの調査を実施し、市民後見人の実際の運用に最も影響を及ぼすバックアップ体制を含め、市民後見人育成システム構築のための課題を抽出したい。特に、人口規模の少ない市町のセンター設立等については、その要件を詳細に確認していきたい。 次に、平成25年度末に実施したドイツ現地調査の整理・分析が未実施であるので、この点についてはドイツの世話制度の現状を示したうえで、後見裁判所、世話役所、世話協会、それぞれの機関が担っている役割や課題を明確にし、我が国の市民後見人運用に反映させたい。特に、財源をめぐる問題から、ドイツでは世話制度の運用よりも予防的代理契約を推奨しているという現実は、持続可能なシステムの構築ということを考慮すれば、我が国にも当てはまる課題であるので、引き続きその動向を調査・把握していきたい。 上記2つの課題に取り組み、市民後見人が担う事務の範囲を明確にし、それに必要な研修体系、その後の支援・監督体制を提示し、最終的には、社会資源の不足する小規模市町村において、市民後見人育成の研修体制のプログラムモデルを提唱したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度はドイツ現地調査を実施したが、業務の都合上、調査日程が3月22日~30日の年度末であったので、調査時の通訳、資料の翻訳等の人件費、旅費の一部の請求については次年度に請求することとなり、次年度使用額が生じた。 平成25年度に実施したドイツ現地調査においての通訳、資料の翻訳等の人件費、旅費の一部にあてたい。 さらに、平成24年度より積み残しとなっているモデル事業の37市区町への質問紙による調査を実施する予定である。
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