2012 Fiscal Year Research-status Report
配慮を要する学生を対象としたホームルーム(特別支援)クラス制度導入の試み
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24653298
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
鬼塚 淳子 九州産業大学, 基礎教育センター, 常勤講師 (90585613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 優 九州産業大学, 経済学部, 教授 (70231842)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 障がい学生支援 / 特別支援クラス / ホームルームクラス制度 / 居場所 / ピア・サポート(学生相互支援) / 自己表現場 / 感性コミュニケーション / PCA(パーソンセンタードアプローチ) |
Research Abstract |
本研究の目的と意義は、何らかの障がいや心理的問題によって、大学に来ることが出来ない、来ても教室に入れないなどの不適応学生を支援することであり、そのひとつの方法として不適応学生のためのホームルームクラスを創出し、大学内に心理的・環境的安全感のある居場所を作ることにより、修学を促すことにある。 H24年度(初年度)計画は、まず1)配慮学生・修学に困難を抱える学生抽出とクラス編成、ホームルームクラス開講(週1時限講義およびホームルーム通年単位化)、2)心理職有資格者支援担当教員の配置、心理職TA(ティーチング・アシスタント)の配置とした。 まず前期は準備として、1)自主事業計画を策定し、各学部・事務に通知、2)学生抽出のための通達と面談、3)授業科目設置・単位化の手続き、4)教室・ホームルームの確保、5)支援スタッフの雇用計画を行った。 後期より上記計画に添って実施した実績は、以下の通りである。1)要支援学生の抽出において、既存のコミュニケーションが苦手な学生のグループ、基礎ゼミナール担任・教務課職員・学生相談カウンセラーからの紹介などにより27名を登録し、後期より実践キャリア演習C(ピアコミュニケーション)という授業科目を開講し、単位化(基礎ゼミナール相当、半期15回、2単位)した。2)同時にピアルーム(ホームルームクラス)を開設、空き時間や昼食時などに利用し、交流を図った。また、時間外に学外での交流会や春休み期間中の交流イベント等を実施した。3)実践キャリア演習D講義履修者25名中単位取得者は15名、ピアルーム利用者は延べ327名であった。4)支援スタッフについては、臨床心理専攻の大学院生5名、臨床心理学科学部生4名、経済学部生1名の計10名を雇用し、基本1コマ1人体制(授業とホームルームが集中する曜日のみ2人体制)でサポートを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自己点検評価:やや遅れている 理由として以下の点が挙げられる。 1、事業計画書の作成・告知、ホームルームクラスの設置、講義の開講、支援スタッフの雇用等の当初の目的は達成されている。ホームルームクラスを居場所として交流する学生や、PCA(パーソンセンタードアプローチ)グループによってコミュニケーション講義の単位を取得できた。 2、ホ―ムルームクラス教室の確保が出来ていない。現在は授業の教室とホームルームとして使用している研究室と居場所が2つに分割されており、教室は他の講義にも使用されるため、自分たちの教室としての設えが出来ない状態にある。 3、クラス登録後1~2回は出て来られるが、その後大学に来られなくなっている5名の学生への対応が不十分である。 4、クラスルームを利用する学生が固定化しており、所属学生全体の居場所にはなり得ていない。上記3の事由の学生にとって、安心して居られる場所にはなっていない。 5、当初の予測はなかった、支援スタッフの心のケアの必要性が重要な問題となっている。発達障がいや精神障がいの学生の特質として、依存傾向や他者との距離感を取り辛く過剰な対応を要求して来るケースからトラブルが出現しており、臨床心理大学院生にとっても対応が心的負担となっている。当初の計画段階では、学生相談室による心理的支援とクラスでのピアサポート教育の役割を分担することで障がい学生の問題へも対応可能としていたが、予想以上に病態が重い学生がピアルームのスタッフにも学生相談カウンセラー同様の対応を求めて来ており、当初のホームクラスルーム運営とは異なる状況になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1、講義は単位取得のために出席するが、ホームルームには参加しない、または逆(ホームルームのみ利用、講義は未履修)の場合など、学生たちが同じクラスルームの所属感を実感できる機会がなかなかない。大学は個別履修のため、一斉にホームルームに集う時間が取れにくいため、工夫が必要である。 2、教室の確保は急務であり、教務課との折衝を推進する。 3、教員とアポイントを取らなければ大学に来られない、1人でホームルーム教室に入れない学生に関しては、まずは一旦個別支援に戻し、教室へ促す継続した関与と工夫が課題である。 4、より多くの学生がホームルームクラスを利用しやすい環境づくりを行っていく。まずは上記2が早急の課題であるが、研究室にホームルームクラスらしい要素(日直や班決め、自己紹介カードの張り出し、自分の椅子の確保など)を取り入れて行く。 5、重症学生に関しては、対人関係力の構築以前に、従来の個別対応や学生相談室に戻すことも視野に入れ、より専門性の高い心理職の確保、現学生支援スタッフのケアや業務の範囲も見直しが必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、当初の予算のうち印刷物(対人関係スキル・自己表現スキルアップのためのワークブック)、効果測定オリジナルスケール開発等が未実施のため、次年度に繰越しが生じた。これらを加えた次年度の計画は以下の通りである。 1、支援スタッフの人件費:現状のスタッフ体制から質・量共に強化する必要があり、当初の予定よりも人件費が増大すると思われる。そのため、単価の調整や役割分担など体制の再調整を行う。 2、コミュニケーションスキルトレーニング講義のためのワークマニュアル作成費:実践キャリア演習C(ピアコミュニケーション)講座において、学生の自己表現度や交流度をアップすることを目的とした段階的なプログラムを構築。汎用化を行う。 3、学生交流機会の創出のためのイベント運営費:上記講義やホームルームにおいて、学生相互の交流を促進するためのツールや場の提供のために必要な物資の購入や移動旅費に充当する。 4、学生相談学会参加、日本人間性心理学会発表のための参加費および旅費:障がい学生の動向への見識を深め、本研究の経過報告を学会発表で行い、今後の研究の成果および課題と新たな指針を得る。 5、学生の自己表現度、自己成長度測定(自己評価、他者評価)のためのスケールの開発・作成:本研究の成果測定に必要な、質的研究法に基づいた独自のスケールを開発する。並びに、本研究のように成果の可視化が困難なフィールドにおける、目に見えるわかりやすいアウトプット法も検討する。
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