2012 Fiscal Year Research-status Report
ミリ秒電波トランジェントの発見と起源解明に向けた観測システムの開発
Project/Area Number |
24654049
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 貴弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (30624845)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 突発天体 |
Research Abstract |
本研究の目的は,電波トランジェントと呼ばれる短寿命の電波バースト現象について新たな知見を得ることであり,その手段として (1) ディジタル分光器の開発と (2) 電波トランジェント発見速報システムの開発を行う.(1) の分光器は電波トランジェントのスペクトル情報取得のための装置であり,(2) の速報システムは他の観測所によるフォローアップ観測を促すためのものである. 当該年度に置いてはまず (1) の分光器開発に先立ち,手作業に基づくスペクトル観測の試験を行った.実際には試験観測の簡略化のため,特定の天体のスペクトルを取得するという試験ではなく,Crabパルサーのジャイアントパルスを検出するという観測を行った.というのも,スペクトル観測とパルサー観測は解析方法が本質的には同じであり,またジャイアントパルスであれば短時間の観測で即座に検出できるであろうと推察されたからである.しかし実際に観測したところ,ジャイアントパルスを検出することはできなかった.観測装置の感度不足などを疑ったものの,根本的な課題はいまだ断定できていない.(1) の分光器開発については,当該年度のほとんどをこの試験観測の試行錯誤に費やし,分光ソフトウェア開発は行ってきたものの,それを実際の観測装置として実装するには至っていない.今後はシステム開発と並行して試験観測を続け,観測の試行錯誤を行っていく. また (2) の電波トランジェント発見速報システムに関しては,開発工程の7割程度を終えた.本システムは,観測データの自動解析による天体検出,既存カタログとの照合による天体同定,その解析結果の電子メール送信,という3段階に分けることができる.このうち,既存カタログとの照合プログラムが未実装であるが,それを除くプロセスを完成させることができ,その開発進捗について学会発表を行った(日本天文学会,2012年9月).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GPU分光器の使用用途となる一つであるパルサー観測の試験として,観測からデータ解析まですべて手作業によるCrabパルサーのジャイアントパルス観測を行った.しかし実際にはジャイアントパルスを検出することはできず,その試行錯誤に多くの研究時間を費やすこととなってしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
Crabジャイアントパルスの試験観測を行ったものの,ジャイアントパルスは検出することができなかった.スペクトルデータの積分回数を増やすことでスペクトル取得やパルス観測は可能であるので,引き続きGPU分光器を開発し天体のスペクトル取得を図る.しかし同時にジャイアントパルスを検出できなかった原因を探っていく必要がある.というのも,本研究における大きな観測対象の一つであるミリ秒電波トランジェントは,本質的にはジャイアントパルスと同様のものであり,その観測能力が必要であるためである.検出できなかった原因は感度不足としか考えられないが,推測の上では感度は達成できているため,その推測の再検討と併せて他の要因も探っていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
GPU分光器開発に必要となるコンピュータ等周辺機器の購入を予定している.同時に,ジャイアントパルスが検出できなかった原因を検証し,その結果次第では,ジャイアントパルスおよびミリ秒電波トランジェントの観測能力を得るための,観測機器整備費用が必要になると思われる.
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