2012 Fiscal Year Research-status Report
超低バックグラウンドX線CCDを用いたガンマ線未同定天体の研究
Project/Area Number |
24654052
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
尾崎 正伸 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (90300699)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 撮像素子 / 荷電粒子 / 雑音除去 |
Research Abstract |
開発する素子の概念検証を目的として、既に製品化されている裏面照射型X線検出用CCD素子を2枚組み合わせて、多層素子のプロトタイプとこれを駆動・読み出しする為の治具を製作・評価した。この際、駆動・読み出しに必要な電子回路と計算機系は既存のCCD駆動系を流用することで、素子が通常の電子回路で扱える物である事の検証も同時に行った。両素子の間隔(隙間)はおよそ2mmと、最終目標の素子(接着による密着で10μm以下の間隔が望ましい)に比べ2桁以上広いが、両素子の対向する面同士はアルミニウムで被覆されかつ電気的に接続されているので、電気的特性は等価だと期待できる。 結果、入射X線に対して既存CCD素子と同様の感度およびエネルギー分解能を維持していること、荷電粒子(約 1 MeV のベータ線)が背面側に配置した素子まで到達し検出できることを確認した。これにより、検出器としての多層CCDが原理的に動作可能であり、従来と同等のX線検出装置として使用可能であることを実証した。加えて、これはCCD素子を重ねる事で透過的に空乏層圧を倍にできる事を示している。 一方で、裏表両素子の間で荷電粒子痕跡の空間的相関を取ることに関しては成功していない。これは、表側素子表面にほぼ垂直に入射した荷電粒子が出射する時にはランダムかつ大幅に方向を変えている事を示唆している。従って、相関を取る為には素子間隔を劇的に狭めなければならないと思われる。この検証の為、モンテカルロシミュレーションによる現象の定量的理解と素子間隔を狭めた新たな素子の試作が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初の素子の試作および評価まで終了し、今後は目的を満たす素子をどのように作れば良いかの探求に注力できる体制を作り上げた。最初の素子の評価が完了したことと体制が完成したことは、当初予定以上の進捗である。但し、評価素子は放射線除去関連の性能が思いのほか得られず、これを改良するにはパッケージの新規開発が必要と考えられる。従って、ゴールを考えた時には上記の「予定以上」の分を食いつぶす必要があり、全体としては「ほぼ予定どおり」となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
新たに素子間隔を狭めた実装方法(パッケージ)を開発し、これで荷電粒子バックグラウンド除去性能を評価する。また、隙間を設けて重ねた素子を荷電粒子が貫通する時にどのような経路を取るかをモンテカルロシミュレーションを用いて評価し、許容できる隙間の大きさを粒子線質ごとに決定する。 上記の結果がまとまったところで、CCDのみならず一般的な半導体撮像素子への展開を視野に入れて情報を公開(論文化)する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新パッケージによるCCD素子を開発するのと並行して、モンテカルロシミュレーションによる荷電粒子挙動の研究を行う。研究費のほとんどはパッケージ開発に用い、残りは打ち合わせおよび成果発表旅費に用いる。
|
-
[Presentation] 荷電粒子バックグラウンドの除去効率を高めたX線CCD検出器の開発2013
Author(s)
岩井將親, 藤永貴久, 井澤正治(東工大、ISAS/JAXA), 堂谷忠靖, 尾崎正伸,夏苅権(ISAS/JAXA), 松田佳子, 近藤恵介(総研大、ISAS/JAXA), 林田清, 中嶋大, 穴吹直久(阪大)
Organizer
日本天文学会2013年春季年会
Place of Presentation
埼玉大学
Year and Date
20130320-20130323