2012 Fiscal Year Research-status Report
超流動ヘリウム3表面束縛状態のマヨラナ粒子性検証のための新技術
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24654114
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池上 弘樹 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 専任研究員 (70313161)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / 表面束縛状態 / 微小SQUID / 毛管凝縮 / マイクロ構造 / マヨラナ粒子 |
Research Abstract |
超流動ヘリウム3-B相では、その波動関数のトポロジカルな状態を反映して、表面には表面束縛状態が形成される。特に、自由表面に形成される表面束縛状態は、粒子と反粒子が等価なマヨラナ粒子的性質を示すことが理論的に予想されている。表面束縛状態がマヨラナ粒子的であることを検証する唯一の方法は、表面束縛状態のイジング的異常磁気応答を観測することである。本研究の目的は、毛細管現象と微小SQUIDを利用することにより、これまで困難であった自由表面を壊さずにかつ自由表面近傍の磁化を測定できる実験系を構築することである。 本年度は、マイクロメーター領域での液体ヘリウムの毛細管現象の詳細の理解、およびそのための技術開発を行うために、マイクロチャネル構造中への液体ヘリウムの毛細管現象研究を中心に研究を進めた。幅1.6マイクロメートル程度のチャネルを作製した。このチャネル中では、毛管凝縮したヘリウムの表面は平らになると予想される。表面に電子をトラップして移動度を測定したところ、毛管凝縮したヘリウムの表面は平らになっていると思われる結果を得た。これと並行して、自由表面近傍の磁化を測定するための微小SQUIDデザインおよびSQUID測定回路系の構築を進めいている。発熱量を抑えるため、当初予定していたブレークジャンクション型の微小SQUIDではなく、基板上に展開した微小SQUIDを作製する事とした。今後、微小SQUIDの作製、冷却テストおよび発熱量の評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初予定していたブレークジャンクション型の微小SQUIDでは、発熱量が抑えられないということが判明した。そのため、予定を変更し、基板上に展開した微小SQUIDを作製する事とした。基板上の微小SQUIDを作製することへの計画変更により若干の遅れがある。しかし、液体ヘリウムの毛細管現象の実現は順調に進んでおり、全体としてはそれほど大きな遅れではない。
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Strategy for Future Research Activity |
液体ヘリウムの毛細管現象の実現は順調に進んでいる。そのため、基板上の微小SQUIDの作製、冷却テストおよび発熱量の評価を中心に行う。特に、常流動3Heで磁化測定を行い、表面状態を測定するために必要な十分な感度を要するかどうかを見極める。その後、微小SQUIDと毛細管現象マイクロ構造を組合わせたシステムを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基板上の微小SQUIDを作製することへの計画変更により若干の遅れがある。そのため、微小SQUIDを作製するための経費、およびSQUID測定回路系を構築するための経費を次年度に使用することになる。翌年度以降に請求する研究費は、主に、微小SQUIDと毛細管現象マイクロ構造を組合わせたシステムを構築するための経費として使用する。
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