2013 Fiscal Year Research-status Report
二光子レーザー開発を目指した,二光子遷移レートの人為的操作方法の探索
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24654132
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
植竹 智 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80514778)
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Keywords | 二光子レーザー発振 / マクロコヒーレンス / 誘導ラマン断熱励起 |
Research Abstract |
本研究の目標は,冷却原子集団からの二光子放射レートを人為的に増強し,二光子レーザー発振実現を目指すことである.平成25年度の研究目標は,(1) 高い密度および高い初期コヒーレンスを持ったパラ水素分子集団を準備し,(2) 二光子遷移レートの増強を実験的に実証することであった.1点目の目標については,一立方センチあたり2×10の20乗個の高密度水素ガスにおいて高い初期コヒーレンスを準備することに成功した.2点目の目標に対しては,高いコヒーレンスにより生成される4次ラマン光を種とし,二光子放射を発生させることに成功した.観測に成功した二光子放射は,二光子自然放出レートに比べ19桁(10の19乗)以上の放射レート増強に相当するものであり,非常に高い増幅率を得ることに成功した.すなわち,目標としていた「二光子遷移レートの人為的増強」は達成できたと考えられる.なお,この過程は当初想定していたものと異なる新しいコヒーレント現象であり,これ自体が物理的に興味深いものである.現在,新たなコヒーレント現象の追試実験および詳細な理論解析を進めており,二光子放射レートをさらに増強する最適条件も明らかにしつつある.そのための実験準備も進めており,より高い二光子放射レートの実現を今後目指す. なお,平成24年度に開発を終えた二光子放射誘導中赤外レーザー(波長4.8μm)については米国光学会の論文誌Optics Lettersに投稿し出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目標としていた二光子遷移レートの増強については,19桁以上の非常に大きな増幅率が得られている.また,当初予想していたものと異なる新たなコヒーレント現象も発見し,その発生機構も明らかにしつつある.二光子遷移レートをさらに高めるための実験条件も明らかにしつつある.以上から,当初の計画以上に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画になかった新しいコヒーレント現象を発見したため,今後その追試実験およびシミュレーションによる発生原理の解明を進める.二光子放射レート増幅率を向上させるための最適条件をシミュレーションにより明らかにし,さらなる増幅を目指す. また,当初想定していた手法を用いた二光子放射レート増幅のための光源開発も行っており,この光源を使った放射レート増幅実験・コヒーレンスの制御実験も進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にパラ水素を用いた二光子遷移レート増強及び二光子レーザー発振実験を進める予定であったが,パラ水素分子を用いた二光子遷移レート増強実験中に,新たなコヒーレント現象を観測した.このため計画を変更し,新たなコヒーレント現象の追試実験及び解析を進めることとしたため,未使用額が生じた. 新たなコヒーレント現象の追試実験及び解析を次年度に行うこととし,未使用額はそれらの実験に使用する光学部品など消耗品の購入に充てる.また,国際会議で発表するための経費として使用する.
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Research Products
(4 results)