2013 Fiscal Year Research-status Report
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24654134
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川勝 年洋 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20214596)
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Keywords | トポロジー不変 / 自己無撞着場理論 / 高分子濃厚系 / 粘弾性 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、環状高分子の経路積分に絡み目不変量を有効に取り入れる方法について検討した。検討した方法論としては、絡み目不変量を計算する際に必要となるベクトル秩序パラメタを導入した自己無撞着場理論を構成することを試みた。濃厚なポリマー系の粘弾性特性の再現のためには、ポリマー鎖のボンドの配向に相当するベクトル秩序パラメタだけでは不十分で、ボンドの確率分布を表すテンソル秩序パラメタの導入が必須である。これら、ベクトル秩序パラメタとテンソル秩序パラメタとで書かれる系の変形にともなうエネルギー上昇を、スカラーポテンシャル場を通じて取り入れる手法を開発し、シミュレーションを行った。このシミュレーションの結果、歪みを与えられたポリマーメルトにおける歪んだ鎖の配位エントロピーの定量的な評価を行うことに成功したが、ポリマーメルトの粘弾性特性(レプテーション理論との対応)を再現するまでには至っていない。 上記の基礎的な定式化の検証と並行して、トポロジーの不変なネットワークの粘弾性特性を理論とシミュレーションで再現するために、絡み目不変量を自己無撞着場理論の中にベクトルおよびテンソル秩序パラメタを用いて取り入れる方法を具体的に検討した。 平成25年度は、後者の研究のために研究補助員の雇用を予定していたが、想定する候補者が年度当初に他の予算で雇用されることとなってしまったために予定の研究を行うことができず、平成26年度に繰り越して実施することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、トポロジー不変量を自己無撞着場理論に取り入れたモデルの具体的な計算機シミュレーションを実施し、実験系の結果と比較することを計画していた。この目的のために、自己無撞着場理論の理論的な内容に関する深い知識と、その計算機シミュレーションを行うための充分な知識と経験を有した研究補助員を雇用して、研究の進捗を加速する予定であった。しかし、この研究補助員の候補として予定していた人材が他の予算で雇用されることとなってしまった。必要な人材は、特殊な知識と技能を必要とすることから、研究補助員を新たに補充することができず、平成25年度は研究代表者が理論的なモデルの考察を行うことだけしかできなかった。 これらの状況を鑑みて、平成25年度に予定していた研究は、予算を平成26年度に繰り越すことにより実施することとして繰り越し申請を行い、承認された。すでに適任の研究補助員が平成26年4月1日付けで採用されており、具体的な理論の構築とシミュレーションの実施が急速に進んでいる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は当初の計画通り、研究補助員の補助のもとで、ベクトルおよびテンソル秩序変数をもつ自己無撞着場理論の定式化に基づいた計算機シミュレーションのプログラムを開発し、系統的なシミュレーションを実施する。シミュレーションで得られた結果を実験と比較することで検討し、理論の定式化の不備な点を修正する。 研究計画の遅れが生じてはいるが、基本的な研究方針に全く変更はなく、当初の計画に従って着実に進んでいる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、研究計画を加速させるために自己無撞着場理論の理論的な内容に関する深い知識と、その計算機シミュレーションを行うための充分な知識と経験を有した研究補助員の雇用を予定していた。しかし、この研究補助員の候補者が他の予算で雇用されることとなってしまい、研究を遂行するにたる知識と経験を有する代替の研究補助員を新たに補充することができず、予算を平成26年度に繰り越すことにより実施することとなった。 平成26年4月1日より、本研究の遂行に非常に適した研究補助員を雇用できており、平成26年度の研究経費は、ほとんどがこの研究補助員の雇用費に当てられる。残額は研究補助員の出張の際の旅費や消耗品に宛てる予定である。
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