2012 Fiscal Year Research-status Report
地球潮汐と地震波干渉法を利用した地殻浅部地震波速度の応力依存性に関する研究
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24654141
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西村 太志 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40222187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 佐千子 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット, 任期付き研究員 (30551535)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地震波速度 / 時間変化 / 地震波干渉法 / 地球潮汐 |
Research Abstract |
雑微動に地震波干渉法を適用し,地球潮汐による地震波速度変化を調べる.本年度は、防災科学技術研究所Hi-net観測点の連続雑微動データを解析した.東北地方にある118観測点の2010年の1年間の上下動速度連続記録を調べた.自然地震の混入を避けるために,各観測点で10分間ごとにRMS振幅値を計算し,1年間の中央値の5倍を閾値とし,それを超える波形データは除去した.二値化処理を行い,1-2Hz,2-4Hzの周波数帯域で自己相関関数(ACF)を計算した.潮汐による10^5 Pa程度の応力変化に伴う極微小な速度変化の検出を試みるため,比較的静穏な日のデータを選択した.各観測点における理論潮汐体積歪みを計算し、体積歪が5.0×10^-9以上と-5.0×10^-9以下のグループに分け,前者の期間を膨張時,後者の期間を収縮時として,それぞれの期間でACFをすべて重合した.膨張時のACFをDACF,収縮時をCACFとし,両者の相関係数が0.99よりも高い観測点のみを抽出した.相互相関のラグタイムから,CACFに対するDACFの速度変化率を求めた.CACFに対するDACFの速度変化率が安定して得られているものを選び、速度変化率の推定誤差が0.01%未満の結果のみをまとめた.その結果,2-4Hzは27点の観測点で速度変化率は-0.06%~0.06%に求められた.ピークは-0.01%にある.収縮時に速度が速くなっていれば負の符号となるので,応力変化により地震波速度が変化している可能性がある.ただし,平均値とその標準偏差を求めると-0.006±0.005%となり,必ずしも顕著に有意な変化とはいえない.1-2Hzの速度変化率は45点の観測点で測定され,平均値と標準偏差は0.0±0.004%となった.これまでのところ応力変化による地震波速度の顕著な変化は認められていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方のHinet観測点の連続データの解析のためのソフトウェアの作成がほぼ終わり、1年間のデータの解析を行うことができた。 本研究では、極微小の構造の時間変化を抽出するため雑微動の自己相関関数を利用し、観測点を震源および受信とした疑似反射記録としている。この自己相関関数は、地球潮汐による変化のほかに、降雨や地下水の変動、ノイズ源の時空間的な変化によっても変化していると想定される。このような他のノイズ源の影響を以下に小さくするかについて、自己相関関数の安定性を数値的に評価することにより、求められる時間変化の信頼性や精度を高めるアルゴリズムを開発することができた。これまでは1-2Hz、2-4Hz帯での解析を追えたが、同様の解析は高周波側にも適用できるので、次年度に早急に結果を出すことができる。 雑微動の到来方向や位相速度をもとにして、雑微動の種類や到来方向を取捨選択し、地震波干渉法の精度を高めることができる。そのための地震計アレー観測を11月から岩手山焼け走りキャンプ場で実施した。7点の観測点を設置し、ほぼ順調にデータの取得が進んでおり、今後解析ができる状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析では1-4Hz帯の自己相関関数には地球潮汐による時間変化が認められない。これは観測点が100m程度の深さにあることや、波の種類に依存している可能性がある。そこで、周波数帯域を4-8,8-16Hzにあげて自己相関関数法を適用する。東北地方全域の観測点をすべて取り扱うことにより、地盤構造との比較や地域的な特徴と比較し、地殻応力による地震波速度変化の成因を考察する。 地震計アレー観測によるデータを解析し、地震波到来方向や、近場の観測点(東北大学焼け走り火山観測点)のひずみ計記録を解析し、その変動記録の安定性をみて、雑微動を重合することにより、自己相関関数の信頼性を高めて解析を行う。この結果と比較することにより、これまでに進めてきた信頼性を高めるために利用したアルゴリズムの妥当性を検証する。 さらに、地震計アレー間で相互相関関数を求めることにより、2つの地震計間を伝播する地震波が再現できる。この地震波はほぼ地表面にエネルギーが集中する表面波であり、浅部構造の時間変化の特徴を調べるとともに、地球潮汐に対する応答を調べる。また、異なる場所で地震計アレー観測を実施することにより、信頼性を高める。 なお、自己相関関数および相互相関関数ともに、これまで開発したソフトウェアやアルゴリズムを利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ解析および地震計アレー観測はほぼ順調に進んでいるものの、データ解析の高周波成分解析がやや遅れている。また、アレー観測の撤収が約1ヶ月ずれこんだために、物品費や旅費の使用がやや遅れ、助成金が生じた。 次年度は、アレー観測の撤収及び高周波成分の解析を進める。また、新規にアレーを設置及び維持、撤収のために観測旅費を計上する。このアレー観測の実験補助及びデータ整理で謝金を、観測用資材や計算機消耗品、地震波形データ解析用のPCの物品費を計上する。研究成果の発表のため、国際学会参加のため旅費を使用する。
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Research Products
(1 results)