2012 Fiscal Year Research-status Report
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24654188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
齋藤 和史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70251080)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 微粒子プラズマ / 波動 |
Research Abstract |
YCOPEX装置を用いた大面積2次元流と障害物の相互作用実験において,障害物の下流側のボイドと流れの境界領域において,流速が亜音速の場合に少数の微粒子が滞留すること見出した.このような滞留が生じるメカニズムは,欠損流速によって障害物後方で流速が遅くなる領域が存在すること,障害物によって2分された微粒子流が再び合流することによって局所的に負電位の大きな領域が形成されることなどであると考えられる. 強結合状態での微粒子流を形成するには,如何にして微粒子の熱運動エネルギーを抑えるかが重要である.YCOPEX装置では,微粒子に作用する力の内,中性粒子によるドラッグ力とイオンによるドラッグ力が主たるものであると考えられる.そのため,中性粒子温度,イオン温度,電子温度の制御ができれば,より容易に強結合の微粒子流を形成できると考えられる.そのため,小型の装置を用いて雰囲気温度が液体窒素温度において微粒子プラズマを生成し,これらの温度制御を試みた.その一環として,電子温度を下げるためにアフターグロー中で微粒子に直流電場によって波を励起し,その波の興味深い性質を発見した. これらの成果を以下の国際会議や学会,研究会で発表した:Y. Saitou, Y. Nakamura, T. Kamimura, and O. Ishihara; International Congress on Plasma Physics (Stockholm, 2012): Y. Saitou, A. A. Samarian, and O. Ishihara; 13th Workshop on Fine Particle Physics (NIFS, 2012): 齋藤和史,中村良治,石原修; 日本物理学会 (横浜国大, 2012): 齋藤和史,石原修ほか; 日本物理学会 (広島大学, 2013).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では,結晶構造を保った微粒子流を生成して障害物との相互作用を調べる実験を今年度中に行う予定であった.しかしながら,予想以上に結晶構造を保ったままの微粒子流を作ることが困難であって未だに解決策が見出せていない.一方で,以下のようにそれなりの成果が出ているため,やや遅れているという判断になった. 微粒子プラズマと導体障害物の相互作用の物理については,障害物の下流において微粒子の流速が亜音速の場合に少数の微粒子が滞留する.その滞留メカニズムについて,流体力学における欠損流速の考え方を援用した説明が可能である主旨の結果を得て国際会議で成果発表している.より定量的に説明ができるようになれば学協会誌の論文として出版可能であると思われる.目的としている,障害物と微粒子流の相互作用の理解について,現時点で,ある程度達することができていると考える.障害物の上流側では,微粒子の流速が亜音速の場合には目立った構造形成はなく,超音速の場合にバウ・ショックが形成されることはすでに論文として出版しているため,明らかにすべき現象で取り得ず現時点で未解明だと考えられるものは,亜音速流の場合の下流における航跡波様構造の形成メカニズムと,超音速流の場合の下流における微粒子流の挙動である. 一方,微粒子プラズマ中の新しい波動の可能性がある波動現象を,小規模かつ流れのない微粒子プラズマのアフター・グロー中で見出した.この波動についてモデリングと分散式の導出を試みているところである.大面積の2次元微粒子流とは若干,波動の励起条件が異なっているが,微粒子プラズマ波動の新しいモードを見出すという意味での目的は達成できるのではないかと期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
結晶構造を保ったままの微粒子と障害物の相互作用については,その困難さの度合いに鑑みてしばらく方法の考察に留め,本来の目的である大面積の2次元微粒子流における新たな波動モードの探究と,新たに見出した小規模なアフター・グロー中における微粒子の波動に関するモデル構築と分散関係の導出を中心とする. YCOPEX装置では,微粒子に働く力の内,中性粒子によるドラッグ力が主たる力であるため,より正確にガス圧を制御する必要がある.そのため,絶対圧測定用のキャパシタンス・マノメーターを導入する.様々な圧力環境下において超音速流,亜音速流それぞれと障害物の相互作用による衝撃波や航跡波の励起を測定し,さらに,個々の微粒子の運動を追跡することで,微粒子流と障害物の相互作用について体系的な理解を目指す. アフター・グロー中波動のモードが新しいものであるか否かについては,分散関係を調べることが確実である.新しい波動のモデルとして妥当な物理モデルを構築して理論的な分散関係を求めることができるように努力する.同時に,実験パラメーター応じて,これまでに知られている微粒子波動の分散関係を求める.これらの理論的な結果と実験データを比較し,新しい波動のモードを同定することを試みる.そのためのソフトウェア導入が必要である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
絶対圧測定用キャパシタンス・マノメータ(一式489千円),金属部品ほかの実験用消耗品等を購入予定である(計200千円程度). また,実験結果の解析と数値計算用のソフトウェアを購入予定である(計300千円程度). 第12回アジア太平洋物理会議(2013年7月14日~19日,幕張),International Conference on the Physics of Dusty(2014年3月3日~7日, Delhi)等で研究成果発表の予定であり,さらに,研究打ち合わせのため横浜国立大学に2日×2回程度出張する予定であるため,その旅費として使用する予定である(計300千円程度).
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