2013 Fiscal Year Annual Research Report
錯体化学的手法によるフォトクロミック分子の厳密直交化と多重分子メモリー素子の開発
Project/Area Number |
24655043
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二瓶 雅之 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00359572)
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Keywords | 光スイッチ / フォトクロミック分子 / 磁性 / スピン転移 |
Research Abstract |
本研究では、これまで困難とされてきたフォトクロミック分子の厳密直交化を錯体化学的手法により達成することで、偏光照射による選択的フォトクロミック反応の達成と偏光多重分子メモリー素子への展開を最終目的とした。ジアリールエテン(DAE)は、光照射により二種類の状態(開環体と閉環体)を可逆に変換可能なフォトクロミック分子であり、光開環反応の遷移双極子モーメントは大きな異方性をもつ。従って、DAE部位をもつ配位子と金属イオンとの錯形成反応を最適化することで、配位構造を利用してDAE部位を直交化できると期待される。 平成24年度においては、ジアリールエテン部位をもつ二座配位子の合成と錯形成挙動の解明について検討を行った。その結果、代表的な二座配位子フェナントロリンにジアリールエテン部位がπ共役系を介して連結された配位子(o-btphen)の合成に成功した。さらに、鉄(II)イオン、及び二座補助配位子との反応により、ジアリールエテン部位をもつ新規鉄(II)錯体の合成に成功した。本錯体は、固体、及び溶液中で鉄(II)イオンの可逆なスピン転移を示すことを明らかにした。さらに、溶液中における紫外・可視光照射によりジアリールエテン部位の可逆な開環・閉環反応を示した。平成25年度においては、上記の錯体のフォトクロミック反応と鉄(II)イオンのスピン転移挙動の相乗性について見当を行った。その結果、紫外光照射によるフォトクロミック反応に伴い、鉄イオンのスピン状態が常磁性高スピン状態から反磁性低スピン状態に変化することが明らかになった。すなわち、DAE部位をもつスピン転移錯体が、光応答性磁性スイッチ分子として極めて有用であることが分かった。さらに、o-btphenを分子内に複数有する他核錯体合成法の検討を行った結果、構造について明らかにできなかったものの、反応条件を最適化することで合成可能なことが示唆された。
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Research Products
(7 results)