2012 Fiscal Year Research-status Report
光誘起による核スピン偏極を利用した19FーMR核酸類イメージング法の開発
Project/Area Number |
24655149
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | フッ素ラベリング / RNA検出 |
Research Abstract |
フッ素を検出核種とするMRIは、生体バックグラウンドの低さから新たな生体分子イメージングのモダリティーとして注目されている。これまでに種々のイメージングプローブが提案されており、タンパク質、酵素、核酸の検出が報告されている。しかし、その検出感度が十分ではなく、生体内での応用例は少ない。実際、応募者も最近、核酸を認識部位に用いた19F MRIプローブの開発を行い、配列選択的に核酸類をOFF/ON型で認識することに成功しているが(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011, 41, 303.)検出感度は数μMと不十分である。一方で、光ラジカル反応により検出核の超偏極状態を作り出すことで、NMR検出感度を数100倍にまで増強できる超偏極核磁気共鳴法(Photo-CIDNP:Photochemically Induced Dynamic Nuclear Polarization)(J.Am.Chem.Soc.,1972, 94, 6262.)が提案されている。しかしながら、この手法においても、超偏極状態の寿命は短く、現状では数100秒が限界である。これでは標的分子に到達する前に検出感度が低下してしまい、イメージング検出の高感度化は望めない。こで本研究では核酸類の生体内可視化を目指し、狙った位置およびタイミングで超偏極状態のプローブを誘導することで高感度検出する新しいイメージング法の創出を目的としている。また、最終的には標的RNA配列選択的DNA光ライゲーション反応の系で19F NMR感度の増強効果を評価し、19F NMRシグナル増強法の新原理ならびに核酸類の高感度検出法を開発する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では光ライゲーションとしての実績のあるビニルウリジン骨格(J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 5646.)を参考に、光ライゲーション可能な高感度フッ素含有ヌクレオシド誘導体を設計し合成を行うこととしていた。その合成経路の中でもジフルオロベンゼンとグリカールのC-C結合形成反応過程が最も困難と考えており、実際に触媒、配位子、保護基、温度等をいろいろ条件検討を行ったところ、Palladium acetate (II) 、Triphenyl arsineの触媒系を用いる事で可能となる事が判り、この触媒系を用いた時、Glycalの3’を保護してなくてもβ体を生成する事が判った。この条件検討に苦労をしたものの本合成の最大の山場は超えたものと考えられる。一方で、思いがけず立体選択的合成が可能であることも見出すことが出来たことも合わせて、おおむね順調に進展していると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度より合成を始めたジフルオロベンゼンヌクレオシドのホスホロアミダイト誘導体を用いて、DNA自動合成機により短鎖のオリゴDNA(10量体程度のモデル配列)を合成、HPLC精製を行い、MALDI-TOF-MSにより同定する。相補的オリゴDNAと混合した溶液に対し光照射(312, 366 nmなど)を行った後、HPLC解析を行う。HPLCで検出されたピークのMALDI-TOF-MS解析から、光ライゲーション体の生成を確認する。種々の分光学的手法を用いて光照射後に生じる三重項ジラジカル活性種の寿命を調べ、これと検出感度増強効果との比較から、超偏極状態への遷移反応機序を明らかにする。具体的には、時間分解ESR測定、過渡吸収スペクトル測定により活性中間体としての三重項ジラジカルの存在の有無を明らかにし、その寿命と検出感度増強効果の相関から反応機構を検証する。最終的には相補的microRNA存在下、最適波長の光照射前後で19F NMR測定を行い、光反応による検出感度増強効果について定量的に評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既に設計し合成途中である高感度フッ素プローブ含有ヌクレオシドの全合成をさらに押し進めようと考えている。その為の有機合成試薬ならびに有機合成溶媒等、各種ガラス器具を購入しようと考えている。また、合成したヌクレオシドをDNA自動合成機に適用するためのホスホロアミダイト化剤、DNA合成機関係試薬類も購入予定である。さらに次年度はこれらプローブを用いて、光ラジカル環化反応に伴うフッ素NMR増強効果を検証しようと考えている。検証に用いるターゲット核酸として23merのmicroRNAを想定している(MiR-27b; 5’-UUCACAGUGGCUAAGUUCCGC-3’)。相補的microRNA存在下、最適波長の光照射前後で19F NMR測定を行い、光反応による検出感度増強効果について定量的に評価する予定である。これらmicroRNAに関連する生化学試薬類の購入も必要と考えている。その他分析機器などは大学ならびに研究室保有の機器類で行う予定であり特に購入は考えていない。
|