2012 Fiscal Year Research-status Report
超臨界二酸化炭素を用いるフッ素化炭化水素系新規ナノ流体の合成と熱物性評価
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24656134
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
佐藤 正秀 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10261504)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ流体 / 超臨界流体 / フッ素化炭化水素系流体 |
Research Abstract |
高発熱密度 CPU が実装されたデータセンタサーバにおいては、従来の空冷冷却では冷却ファン等の消費電力が相当な割合を占めるため、より高効率な CPU冷却に関する検討が必要とされる。本研究ではCPU直接液冷に用いられているフロリナートやノベック HFE に代表されるフッ素化炭化水素系流体(F C流体)の熱輸送能力を飛躍的に向上させることを目標に、超臨界流体技術によりFC流体中にnmサイズで均一分散する金属および金属酸化物ナノ粒子を化学合成することで、FC 流体ベースの新規ナノ流体を開発する。 さらに非定常細線加熱法によるナノ流体の熱伝導率の評価と単相流冷却実験を順次実施し、新規伝熱流体としての有用性について検討を行う。平成24年度に得られた成果は以下の1~3の通りである。 1.耐圧容器、定量ポンプ、ヒータ、圧力計等から構成される超臨界CO2によるナノ粒子合成システムを製作した。 2.上記の合成システムを用い、各種フッ素化炭化水素系界面活性剤/水/超臨界CO2マイクロエマルション中で金属 アルコキシドの加水分解反応によるチタニアおよびシリカナノ粒子合成反応を試みた。合成したナノ粒子はSEM観察およびノベック中で分散したナノ粒子のSAXSによる粒子径分布測定より、70nmから130nm程度の平均粒子径を有することがわかった。また用いる界面活性剤の種類によりFC流体中での分散安定性に違いが生じたが、もっとも良好な分散安定性をしめした系では、合成してから半年以上経つ現在に至るまでナノ粒子の凝集・沈降は認められなかった。 3.研究室保有のナノ流体の熱伝導率が測定出来る非定常細線加熱法実験装置を用いて、 前項2によって得られたチタニア分散FCナノ流体の熱伝導率を測定した。測定値はHamilton-Crosser 式の推算値と良好に一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書で平成24年度に想定した研究計画の主要項目である以下の3項目に関してはおおむね順調に進展している。 1.超臨界CO2によるナノ粒子合成反応装置の開発 2.1.で開発した新規合成装置を用いて、フッ素化炭化水素系界面活性剤/水/超臨界CO2マイクロエマルション系内での金属アルコキシドの加水分解-重縮合反応によるチタニアおよびアルミナナノ粒子の合成 3.前項1~2によって得られたFC流体ベースナノ流体のうち、チタニアナノ流体に関して非定常細線加熱法による熱伝導率測定 さらに、FC流体中における合成ナノ粒子の分散安定性に関して、もっとも良好なものでは、半年以上に渡って凝集、沈降が認められず、極めて分散安定性の高いナノ流体が合成出来た。一方でナノ粒子のサイズに関してはSEM観察から10nm程度のナノ粒子が強く凝集した形態をとっており最も小さいもので50nm程度と想定よりもやや大きいものが得られている。このサイズをより小さくすることが出来れば、FC流体中での分散安定性のさらなる向上と単相流冷却などの応用時に問題となる流体粘度増大が抑制されることが期待出来るため、次年度のナノ粒子合成では、この点に主眼を置いて研究をすすめるとともに、単相流冷却伝熱性能に及ぼす粒子サイズの影響についても検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、ナノ流体の合成と熱物性評価を実施する。ナノ粒子合成では、1次粒子の粒子径である10nmに出来るだけ近いサイズで、FC流体中に自発的に分散するナノ粒子の合成方法に主眼をおき、圧力、温度等の操作パラメータと、高圧反応セル内への反応物質の供給方法(バッチ、フローなど)とフローの場合の原料供給速度などが合成ナノ粒子粒子径に及ぼす影響について検討する。 新たに薄型セラミックヒータを模擬CPU熱源とした単相流冷却試験装置を製作し、ナノ流体を冷媒とした場合の伝熱性能評価を行うとともに、伝熱性能に及ぼすナノ粒子の種類、ナノ流体中のナノ粒子体積分率、ナノ粒子サイズ等の影響について実験的な検討を行う。 これまでに得られた成果の報告として2件の学会発表(日本伝熱シンポジウム(仙台)、8th International Workshop on TWO-PHASE SYSTEMS FOR GROUND AND SPACE APPLICATIONS(ブレーメン、ドイツ)を行う予定である。また研究論文の投稿も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額15,915円に関して、以下の費目で4月支払分として全て使用済みである。 費目 物品費(試薬、容器) 7,915円 その他(学会参加費) 8,000円 合計 15,915円
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