2012 Fiscal Year Research-status Report
積層圧延を利用したFe/Ni多周期積層構造を有するバルク永久磁石の開発
Project/Area Number |
24656212
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 正基 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20274623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 博俊 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10136533)
柳井 武志 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30404239)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Fe-Ni / 規則-不規則変態 / 圧延 / 多周期積層構造 / 永久磁石 / レアアースフリー / 結晶磁気異方性 / 保磁力 |
Research Abstract |
本申請では、材料が潤沢で安価なFe,Niを用いた永久磁石材料の開発を念頭におき、積層圧延を用いたFe原子層とNi原子層の多周期積層構造の形成による「レアアース」・「レアメタル」を利用しない新規なバルク永久磁石の開発を目的とする。具体的には、Fe原子層とNi原子層を圧延により人工的に交互に積層させ規則化した組織を構築する事により、「高い結晶磁気異方性」を起源とした永久磁石材料の開発を目指す。具体的には、積層したFe板/Ni板に冷間圧延を施し、各層10 nm以下の多周期積層構造を構築する。 平成24年度は,圧延と誘導加熱を利用しFeとNiの各層が数10 μm厚の積層構造の試料が作製できることを確認した。今後は、この誘導加熱を利用したFeとNiの金属間結合後の試料に圧延を施す方法をさらに検討する必要がある。 加えて平成25年度は,FeとNiを重ね合わせた積層圧延における1度の圧延工程において、①圧延工程の前処理を施すと共に、圧延率50%以上の強圧延を利用した積層構造の構築、更にその繰り返しによる多周期積層構造構築や②低温での規則ー不規則変態に対する添加物の効果に向けての実験も行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、Fe/Ni多周期構造を形成するにあたり、①ステンレス板にFeとNiを挟み込んだサンドイッチ圧延、②めっき法によるFe板上へのNiめっき、③赤外線加熱もしくは誘導加熱による金属間結合の誘導といった3つの手法を用いて、圧延前の出発材料を作製した。一部積層構造を実現した試料については、トータルの圧延率{ (圧延前の厚み-圧延後の厚み) ÷ 圧延前の厚み} をパラメータとして、磁気特性を評価した。 これまでの実験結果を踏まえると、単に上記の①や②の手法では、FeとNi板の間の金属間結合を生じさせることは困難であることが明らかとなった。すなわち、①に関しては、現状の1回あたりの圧延率では金属板表面での原子同士の結合を促す条件を見出すことができていない。更に、②に関してはFe板上でのNiめっきを施す実験は実現したものの、圧延途中もしくは圧延後にそのメッキ膜がFe基板上より剥離する様子が観測された。したがって、平成24年度におけるFe板とNi板の多周期構造を実現した結果は、③の熱を利用した金属間結合、中でも誘導加熱装置を用いた手法が最も有望であることが明らかとなった。 上述したように、「FeとNiの金属間結合の実現」が、申請前の予想に比べ著しく困難であったため、当初の進捗計画よりもやや遅れているものの、1年間の研究を通じ、金属間結合を促す手法ならびに知見を獲得したため、平成25年度では積極的に試料のナノ構造の多層周期化を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては,誘導加熱を利用しFeとNiの金属間結合を促すことにより各層が数10 μm厚の積層構造の試料を実現できることを確認した。そこで平成25年度は、各層が10 nm以下のFe/Ni多周期構造を形成するにあたり、冷間圧延での積層圧延の条件(1パスあたりの圧延率等)の最適化を検討する。特に1回あたりの圧延率を50 %以上とした強圧下圧延を利用し、誘導加熱利用なしにナノレベルの積層構造の構築に向けての実験も遂行する。その際、結晶磁気異方性・磁気特性を評価すると共に、TEM(透過電子顕微鏡)やMFM(磁気力顕微鏡)観察により得た物性値をパラメータとして計算より算出した磁気特性の解析値と実験値とを比較検討し、保磁力800 kA/mを目標値に掲げ冷間圧延の最適条件を絞り込む。 更に平成25年度は「熱間圧延」を用いて、前年度と同様な試料の作製ならびに評価・観察・解析を進める。その際、熱平衡状態図でL10型結晶相が安定領域である300 ℃以下の低温熱間圧延を利用し、その最適条件を検討する。更に、低融点元素であるGa,Cuを添加した試料(Ni-Ga,Ni-Cu板)を用い、熱間圧延の効果を促進させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在の研究室において、「VSM装置(磁気特性評価)」・「トルクメータ(結晶磁気異方性評価)」・「着磁器」・「MFM」・「SEM・EDX(組成分析)」・「計算機解析用パソコン」等が使用可能である。更に平成24年度において整備した圧延機も準備できている。材料費等の消耗品も欠かせないものであり、ここでは昨年度と同様、1年間の実験内容に対し考えられる経費を全て申請した。特に、25年度の消耗品の中には、4段圧延機の熱間圧延用のロール1セット(4本)の購入を計画している。更に国内旅費に関しては、「学術的な内容」に関しては速やかに学会発表を行うために申請した。加えて、本学共通装置(透過電子顕微鏡、X線回折装置)の使用に伴い発生する「使用料」も申請した。
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