Research Abstract |
夏期のオフィスを想定し, 電力使用量の削減と快適性の両方を実現できる身体を冷却するシステムとして, 水の蒸発を利用した冷却衣服を作成した. 衣服を用いることで, 個人ごとに調節できる上, 冷却対象の空間を限定できるため熱負荷も軽減できる. また, 水の蒸発潜熱は大きく, 少量であれば入手が容易である. 水の蒸発を促すため, 小型のデスクファンを併用した. 水を供給するモーターポンプを駆動する直流電源をコンピュータによって外部制御し, 使用者が冷却力調節できる様, ”強”, ”中”, ”弱”の冷却レベルを設けた. 供給する水分量の制御法として, 滴らない水分量の中で最大の冷却力を与える最大蒸発量に基づく制御を採用した. この冷却衣服をその他の送風式パーソナル空調と比較する目的で, 30°C・50%RH, 25°C・50%RHの環境条件で被験者実験を行った. 比較に用いた冷却機器は, USBファン (消費電力2.5W), 小型デスクファン (同25W), 大型デスクファン (同40W), 等温パーソナルデスク空調 (消費電力は不明)である. 冷却衣服はその他の冷却機器よりも冷却力が高く, 高温環境をより受容しやすくなることがわかった. 冷却衣服の冷却力を定量的に評価するため, 人工気候室でサーマルマネキンを用いた実験を行った. 29°C・50%RHに設定した環境でサーマルマネキンの表面温度を一定に発熱させ, 表面温度を維持するために要した発熱量の冷却衣服の使用に伴う増加分により, 冷却衣服の冷却効果を評価した. 水分を供給した胸, 背中襟元では高い冷却力を確認したが, 全身で見るとわずかな冷却力であった. 冷却部位を背や上腕の後側へも拡大し, 空調服と併用させた条件では, 胸部前や背中襟元に加え, 背や腰でも高い冷却効果を発揮した.
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