2012 Fiscal Year Research-status Report
材料組織が示す全エネルギーとそれに基づく局所組織変化の理解
Project/Area Number |
24656407
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 純教 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10144213)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミクロ組織 / フェーズフィールド法 / ゆらぎ |
Research Abstract |
金属材料のミクロ組織変化の本質的な理解が、エネルギー論に基づいたフェーズフィールド法により進んできている。しかしながら、実際の材料でしばしば観察される突発的で大きな局所組織回復の主要因については、ほとんど理解されていない。本研究では、この局所不連続組織変化の本質を物理的な観点から明らかにする目的で、フェーズフィールド法における発展方程式に付加的なゆらぎ項を導入してシミュレートするとともに、その結果を、外部ゆらぎを与えて実験した組織変化の結果と比較することで、エネルギーのゆらぎが局所的な組織回復に果たす効果を調べた。 今年度の試料として純ニッケルを用いた。圧延によって歪を導入した試料を所定の温度で種々の時間保持することによって生じた回復・再結晶のミクロ組織を、光学顕微鏡および方位解析装置付き走査型電子顕微鏡(SEM/EDSD)観察により調べた。それとともに、ゆらぎ項を導入したフェーズフィールド法により、再結晶の組織発展過程をシミュレートし、実験結果との対応を調べた。その結果、以下のことが明らかとなった。 (1)純Niの回復・再結晶実験において、温度変化を外部擾乱として与えた試料では、温度一定として行った実験試料に比べ、結晶粒サイズ分布が大きな標準偏差を示した。これは、外乱を加えた試料でより不均一な組織変化が生じたことを示すものである。(2) Phase-field法による再結晶シミュレーションにより、組織形成エネルギーに外部擾乱を与えてシミュレーションを行った結果、結晶粒サイズ分布が大きな標準偏差をもち、実験とよい対応を示した。これよりミクロ組織変化における局所的な不均一性は外部擾乱としてのエネルギーのゆらぎが大きな要因であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実材料におけるミクロ組織における突発的な変化について、金属の再結晶現象を対象として外部エネルギーのゆらぎ項を考慮したフェーズフィールド法によりシミュレートすることができた。この変化は純金属の実験結果ともよく対応しており、外部エネルギーのゆらぎが突発的なミクロ組織変化の大きな要因であることが確認でき、おおむね順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、純金属の回復・再結晶組織に外部からのエネルギーゆらぎの効果が確認された。そこで、平成25年度では、複数の元素を含む実用材での実験を行う。特に、階層構造を示し複雑なミクロ組織をもつラスマルテンサイト系の耐熱鋼について、そのミクロ組織変化を調べる。ここでは、外部擾乱の要因として温度ゆらぎと組成ゆらぎが考えられるが、一般の実用耐熱鋼では組成ゆらぎはほとんど無いと考えられるので、温度ゆらぎに絞って検討を行う。具体的には、階層構造であるマルテンサイト相組織から安定相であるフェライト相への一連の回復過程を実験で調べるとともに、ラスマルテンサイト相回復のフェーズフィールドシミュレーションを行う。これらの実験とシミュレーションを比較検討することで、ラスマルテンサイト相の回復における局所組織変化の主要因を明らかにしてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は最終年度であり、特に大きな支出はない。実験消耗品およびシミュレーション結果のデータバックアップメディア、あるいは情報収集旅費等に研究費を使用する。
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