2012 Fiscal Year Research-status Report
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24656419
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
竹内 早苗(田村早苗) 東京理科大学, 基礎工学部, 講師 (90277286)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 該当せず |
Research Abstract |
研究代表者らはこれまでに、焼成したホタテ貝殻の粉末が水溶液中のNaイオンなどを吸着することを見いだした。平成24年度には、(1)粉砕や焼成の最適条件の探索、(2)吸着可能な金属種の系統的調査、(3)吸着可能な金属イオン濃度範囲の調査を行うことを目的とした。しかし「11.現在までの達成度」に記した理由により、研究の中核をなす金属イオン濃度の測定ができなかったため、(1)及び(3)は平成25年度に先送りせざるを得なかった。 (2)に関しては、Na以外のアルカリ金属とアルカリ土類金属を調査した。「11.現在までの達成度」に記した理由により、原子吸光分析及びICP発光分析を外部機関に依頼した(※依頼分析の費用は本助成金を使用していない)。その結果(【以下、注】○:吸着、△:若干、×:吸着なし)、Li×、Na○(※助成金申請時点で既に判明)、Mg×、K×、(Caは貝殻主成分のため除外、)Sr△、Cs○、Ba△という結果が得られた。これ以外にも、Cu○(※研究実施計画にはなかったが、追加)、Au○(※助成金申請時点で既に判明)という結果が得られていることから、属やイオンの価数以外のものが吸着機構にかかわっている可能性が示唆された。 また、本助成金で購入したSEM-EDX(※中古)により、ホタテ貝殻の微細構造を観察した。焼成前のホタテ貝殻の主成分はCaCO3であるが、市販試薬のCaCO3には見られない稜柱構造が観察された。この稜柱構造が金属の吸着に寄与していると予測しているため、さらに、EDX機能によりCsイオン吸着後の粉末表面上の金属元素の分布状態を測定した。(特性X線を用いるEDXでは、Naのような軽元素は感度が低いため、重元素のCsについて測定した。)その結果、表面に吸着しているはずのCsは、EDXの検出限界以下であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が所属するキャンパス(北海道長万部町)では、基礎工学部1年生のみを対象とした全寮制教育を行っており、教養部教員の研究費は専門部に比較して少ない(年額49万円)。また、卒業研究を行う4年生や大学院生がいないことから、学生実験が行える程度の実験設備しかない。本研究で測定する金属濃度は原子吸光光度計(以下、AASと略)もしくはICP発光分析装置(※定価 数千万円)でないと測定できない。本研究を行うにあたり、長万部漁協でホタテのウロに含まれるCdの分析に使用していたAASを無償貸与してもらえることになっていた。しかし、この機器はしばらく使用されておらず、大学に移送して試運転を行ったところ、動作しないことが判明した。そこで様々な方策を講じて修理を試みたが、結局修理不能であることがわかり、それまでに長期間を浪費した。 測定試料数が少なければ、外部機関に分析を依頼したり、専門部(千葉県野田市)に出張して測定することも可能であるが、系統的な実験を行うためには、頻繁に測定する必要があり、現実的でない。AASの購入には数百万円が必要であり、資金調達はすぐには困難であったため平成24年度には間に合わなかったが、大学の別予算でAASを購入し、平成25年度より測定できるようになった。今後、急ピッチで測定を行う計画である。 また当初、材料としてのホタテ貝殻の個体差(もしくは経時変化)を考慮せず実験を行っていた。しかし、実験ごとの金属吸着量の測定値に再現性に乏しく、貝殻の貝齢(稚貝か成貝か)や、海水からあげてからの時間(生きていた状態のものを使用したか、あるいは廃棄物投棄所で風雨にさらされた状態のものを使用したか)などによって、無視できない個体差(もしくは経時変化)が存在することがわかった。これらの貝殻の状態をそろえた上で、測定し直す必要があり、このことも研究の達成度が低くなる要因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本来、平成24年度に行う計画であった(1)粉砕や焼成の最適条件の探索、及び(3)吸着可能な金属イオン濃度範囲の調査を、平成24年度の(2)で吸着が認められた金属種(Na、Sr、Cs、Ba、Cu、Au)に関して急ピッチで進める。 またそれに加えて、(4)吸着機構の解明を行う。ホタテ貝殻の主成分はCaCO3であり、焼成後はCaO、焼成後のものを水溶液中で使用する際にはCa(OH)2となる。前述の吸着特性は、市販されているいずれの試薬にも見られなかった。したがってこの特性は、ホタテ貝殻の化学成分によるものではなく、ホタテ貝殻の微細構造に起因するものであると考えている。焼成した貝殻粒子表面における金属吸着位置を特定することによって、金属の吸着機構を解明する。平成24年度に行ったSEM-EDXによるCs吸着後の貝殻粉末表面上の金属元素の分布状態の測定では、表面に吸着しているはずのCsは検出限界以下であった。そこで、より高分解能の測定を、EPMAの依頼分析により行う(※依頼分析の費用は本助成金を使用予定)。 また「11.現在までの達成度」にも記したように、生体(軟体動物の外骨格)であるホタテ貝殻は、人工的に合成された材料と異なり、貝殻の貝齢(稚貝か成貝か)や、海水からあげてからの時間(生きていた状態のものを使用したか、あるいは廃棄物投棄所で風雨にさらされた状態のものを使用したか)などによって、無視できない個体差(もしくは経時変化)が存在していた。貝殻はCaCO3の結晶とコンキオリンと呼ばれるタンパク質を主とする物質の複合体であることが知られている。焼成時に有機質の大部分は飛散し、その部分が空隙になると考えられるため、吸着特性に影響を及ぼすと予想される。そこで、貝殻粒子表面の比表面積の測定を、依頼分析(窒素ガス吸着法)により行う(※依頼分析の費用は本助成金を使用予定)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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