2012 Fiscal Year Research-status Report
コミュニケーションのためのイルカ用広帯域スピーカーの開発とプレイバック実験
Project/Area Number |
24657015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
宮本 佳則 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (80251685)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 行動生態 |
Research Abstract |
本年度実施予定であった,1)イルカ鳴音の収集と2)イルカスピーカーの再生音の向上の内,1)イルカ鳴音の収集については,これまで録音していた鳴音の解析に留まっが,野外での野生イルカの鳴音収録の方法を確立する為に網走沖で行われたシャチの調査に参加して,鳴音収録を実施した。 2)イルカスピーカーの再生音の向上は,5kHzから150kHzまでのチャープ音を用いてスピーカーの周波数特性を計測し,高音部と低音部において周波数特性が円滑になるように工夫するとともに,指向特性の改善した。具体的には,高音部では素子の配列の見直しを行い,サイドローブの低減を図った。低音部では,積層電歪素子を変更し共振周波数の低い素子とした。さらに,特異的なピークを持つ周波数については,電気的な信号処理(ダンピング抵抗やノッチフィルター)を行うことで,プラスマイナス6dBの範囲で,5kHzから150kHzで再生が行えるイルカスピーカーを試作した。 ただし,20kHz以下の再生音は十分に平坦な周波数特性とは言えず,別のスピーカーを用いる必要性が検討されている。また,プラスマイナス6dBの周波数特性をハード的に改善することは限界であり,製作したイルカスピーカーの周波数特性を基に,原音をデジタル的にイコライジングすることでより原音に近い再生を目指す研究を進めている。 これらの成果を,海洋音響学会へ論文投稿(51) 三島由夏,宮本佳則,笹倉豊喜:イルカスピーカーの開発,海洋音響学会誌,40(1), p.27-36,2013. )すると共に,2012年アジア水産音響学会(AFAS2012, 釜山)において口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イルカの鳴音の周波数帯域(数kHzから150kHzまで)をカバーする為に,振動子を積層電歪素子を用いることで超音波では困難であった広帯域化を実現している。しかし,低周波側での落ち込みが大きいため,低周波側専用の積層電歪素子を用いることでイルカ鳴音の帯域をカバーすることが可能となった。 しかしながら,製作したイルカスピーカーの周波数特性は平滑とはならず,電気的な処理(ノッチフィルターやダンピング抵抗)により改善を行ったが十分と言えず,原音をデジタルイコライジングすることを始めている。 一方,イルカ鳴音のバースト音と呼ばれる鳴音とビデオによる行動を同時に記録することは,行うことができなかった。しかしながら,本研究を申請する以前に収録したデータもあるので本年度はこのデータを解析することを主な研究として実施した。 以上のことから”おおむね順調に進展している”と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
イルカ鳴音の収録に使用しているA/Dコンバーターは,データロガーであり,音響特性が優れているとは言えない。また,独自のフィーマットによる収録のため,再生の為にはデータフォーマットの変換が必要である。また,鳴音再生に用いているD/Aコンバーターでは,固有の電気的ノイズを有していることが判明しているので,スピーカーそのものの改善よりも,システムとしての音響特性の改善を図る。 また,イルカ鳴音の収録が十分に行えていないので,収録を進めるとともに,鳴音データの解析を進める。 可能であれば,年度後半にプレイバック実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イルカスピーカーシステムの改善のために,最先端の水中音響技術を知るため6月に開催される1stUnderwater Acoustics Conferenceに参加する。 また,これまでの成果発表は,技術的な学会での発表であったので,12月に開催される20th Biennial Conference on the Biology of Marine Mammalsでの発表を予定している。 また,システムの改善として,新規にA/D,D/Aコンバーターの購入を計画している。 これ以外では,イルカ鳴音収録のための旅費を計上している。
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