2012 Fiscal Year Research-status Report
実証的群集生態学に革新をもたらす環境DNA分析手法の確立
Project/Area Number |
24657020
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (30388160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
源 利文 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特命助教 (50450656)
山中 裕樹 龍谷大学, 理工学部, 実験助手 (60455227)
丸山 敦 龍谷大学, 理工学部, 講師 (70368033)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境DNA / 魚類群集 / DNAバーコーディング / 環境モニタリング / 琵琶湖水系 |
Research Abstract |
琵琶湖生息魚種のシーケンス情報取得 琵琶湖生息魚類のうち、チトクロムb領域についての配列情報が蓄積されていない種について、同領域のシーケンスを行い、環境DNA分析に用いるプライマーの設計に必要な情報を揃えた。 種特異的な検出・定量系の確立環境 DNAを用いた生息種定量に向けて種特異的な検出・定量系を確立するため、琵琶湖淀川水系に生息する魚種のうち、オオクチバス、コクチバス、ブルーギル、アユ、アユモドキ、スズキ、ボラの検出・定量系を開発した。このうち、ブルーギルについては、止水域において在/不在を検出する手法を確立し、環境DNA手法でより高精度に在/不在を判定できることなどを明らかにした(Takahara et al., PLOS ONE, 2013)。 環境DNA放出・分解速度の解析 環境DNAを用いた魚類のバイオマス推定に向けて、体サイズと環境DNA放出量の関係に関する知見を得た。また、ブルーギルをモデル生物とした水槽実験により、環境DNAの分解速度に関する基本的な知見を得た。 環境DNAの効率的濃縮法の開発 野外で採取した水から環境DNAを、より高い回収率と再現性で回収するための手法を比較検討した。その結果、機器や電気供給が十分でない調査現場でも確度の高い環境DNA分析を行えるようになった(Molecular Ecology Resources誌に投稿中)。 マルチプレックスPCRによる多種同時検出系の開発 種特異的なプライマーセットを複数種同時に使用することで、1チューブで複数のターゲット種のDNAを同時に増幅するマルチプレックスPCRの系の検討を行った。今年度はスズキ、ボラ、アユの3種系でマルチプレックスPCRを試行したが、まだ成功には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書には以下の研究計画を記した:1. 琵琶湖に生息する全魚種試料の入手とチトクロームb遺伝子の情報解析;2. マルチプレックスPCRの実験系開発と種間の増幅効率の比較;3. 水槽実験によるPCR系のテスト。 上記研究実績の概要に示した通りすべての項目について計画通り順調に研究は進められており、期待された成果を得ている。それに加えて、体サイズと環境DNA放出量の関係の解析を通じて環境DNAの生産・消失過程に関する理解がすすむことで、定量系の開発に着実に迫っている。また、マルチプレックスPCRによる多種同時検出系の開発に取りかかり、スズキ、ボラ、アユの3種系でマルチプレックスPCRを試行した。まだ成功には至っていないが、今後、感度良く検出ができるPCRの条件検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の四点の課題を中心に2013年度の研究を推進する。 環境DNA放出量の測定 魚類から放出される環境DNAのうち、粘液、糞、死体由来のものの割合を把握するため、これらから放出される単位重量あたりの環境DNA量を調べる。ブルーギルをモデル生物にした水槽実験で明らかにする。 野外環境下でのDNA減耗についての検討 魚類から放出されたDNAの時間経過に伴う減耗について水槽実験、および野外実験によって明らかにする。具体的には魚類から放出されたDNAの残存時間や拡散範囲について、周囲へのDNAの拡散について基礎的知見を得ることで、ある地点で採取した試料水はどの程度の範囲の生物相を反映しているのかをある程度推定できるようにする。 複数種同時検出系の確立 複数種の同時検出を実現するため、24年度にひきつづきマルチプレックスPCR系の確立を目指す。既に開発済みであるプライマーセット(コイ、ブルーギル、オオクチバスなど)を用いて、水槽実験、野外実験によりマルチプレックスPCRによる複数種同時検出の手法を確立する。 サンプリング誤差の推定とサンプリングプロトコルの作成 環境DNAによる定量を精緻化するためには、サンプリング場所、サンプリング深度、抽出ステップ、PCRなどによる誤差がどれほどあるかを把握する必要がある。このため、水槽実験および野外実験によって、これらの誤差を把握し、正確な定量のためのプロトコルを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
龍谷大と神戸大で並行して研究を進める必要性から、それぞれの機関において以下の通り研究費を使用する予定である。 龍谷大学(近藤・丸山・山中):プライマー/プローブを8セット(計40万円程度)。シーケンス外注(96サンプル)を5回行うための費用(計20万円程度)。その他に、分子生物学的実験に関わる諸消耗品やPCR試薬などに使用する予定である。 神戸大学(源):プライマー/プローブを4セット(計20万円程度)。シーケンス外注(96サンプル)を4回行うための費用(計12万円程度)。その他に、分子生物学的実験に関わる諸消耗品やPCR試薬などに使用する予定である。 また各機関において、論文執筆やそれにともなう諸費用(英文校閲等)、研究の進捗状況によっては琵琶湖における野外調査に関わる旅費・消耗品等の費用が必要になる。
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