2012 Fiscal Year Research-status Report
ベタレイン合成酵素遺伝子の探索と非ナデシコ属植物での発現解析
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24657026
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小関 良宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50185592)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ベタレイン / オシロイバナ / アントシアニン / DOPA / ナデシコ属植物 |
Research Abstract |
ベタレイン合成系の全酵素遺伝子を同定するため、赤色花のオシロイバナ花弁において発現している遺伝子を次世代シーケンサーを用いて解析を行なった。まず予備実験として野生の赤色花オシロイバナから RNA を抽出して cDNA を合成し、これをプラスミドに導入して約 1,000 の独立クローンをランダムにピックアップして、その塩基配列を決定した。その結果、約 30% の cDNA がウイロイド RNA 由来であることが明らかになり、ウイロイド感染している個体を網羅的解析に用いると、このウイロイド由来の RNA が大きなノイズとなって、ベタレイン合成系酵素遺伝子由来の RNA に対するリード数が少なくなってしまうことが明らかになった。そこでウイロイドに感染していない野生の赤色花オシロイバナ個体の探索を行なった。その結果、ウイロイドに感染していない赤色花個体を 1 個体見いだすことができたので、この花弁から RNA を抽出し、次世代シーケンサー Genome Sequencer FLX システム(GS FLX+) による網羅的塩基配列決定を委託した。その結果、平均リード長が約 550 bp、670,000 リード、40,800 コンティグが得られた。この中には、すでに当研究者が見いだした 4,5-DOPA dioxygenase 遺伝子および cyclo-DOPA 配糖化酵素遺伝子が含まれていることが明らかになった。またチロシンから DOPA への合成に関与していると考えられるシトクロム P450 系酵素ならびに 2-オキソグルタレート依存型オキシゲナーゼ酵素に対する遺伝子群も見いだすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画において平成 24 年度において赤色花と白色花の 2 種類について次世代シーケンサーによる花弁において発現している遺伝子由来の網羅的 RNA 解析を行なうとしていた。赤色花と白色花の 2 個体ではなく 2 種類としたのは、各個体において遺伝子の塩基配列に見られる SNPs が、個々のリードにおける塩基配列の違いとなってしまうため、20 個体以上の独立個体由来の花弁 RNA を混合して集団化させることにより、網羅的塩基配列解析の中において、その違いが棄却できることを期待していた。しかし、研究計画を立案した時にはわからなかったこととして、オシロイバナの多くの個体がウイロイドに感染しており、個体によっては全 RNA の約 30% がウイロイド RNA であることが判明した。このウイロイド RNA が花弁で発現している遺伝子由来の RNA の網羅的解析において大きなノイズとなって、オシロイバナ由来の RNA 解析リード数が低下してしまうことが予測された。そこで、次世代シーケンサーによる解析の前にウイロイドに感染していない個体を探し出す必要が生じてしまった。今回のオシロイバナの材料は栽培したものではなく、野生において生育しているものを用いることとしていたため、ウイロイド感染している個体であるか否かは検定してみるしかなく、これに非常に長い時間がかかってしまった。この検定による非感染個体を探索している間に夏の終わりが近づき、オシロイバナの花期が終わりかけ、そこでようやくウイロイド感染していない 1 つの赤色個体を見いだせたので、独立個体の集団化はあきらめ、この個体についてのみ次世代シーケンサーによる解析を行なった。このため、当初予定していた白色花の解析には至らず、白色花については次年度の初夏から再スタートせざるをえなくなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 24 年度において、多くの野生オシロイバナがウイロイドに感染していることが明らかになり、それを材料として次世代シーケンサーによる網羅的塩基配列解析を行なうとウイロイド由来の RNA 配列が大きなノイズとなることが判明したため、ウイロイドに感染していない個体を探し出すのに非常に時間がかかり、花期の最後になってようやくウイロイド感染していない赤色花個体を見いだすことができ、この個体の花弁で発現している遺伝子由来の RNA 配列の網羅的解析を 1 回行なうことができた。当初の予定では、ベタレイン合成系酵素遺伝子が発現していない白色花についても RNA 配列の網羅的解析を行なうことにしていたが、ウイロイド感染していない白色花個体を見いだす前に花期が終わってしまい、解析に至らなかった。平成 25 年度においては、初夏の花期が開始すると同時に白色花個体に集中してウイロイド感染していない個体を探索することを行なう。ウイロイド感染していない個体を見いだしたところで、この花弁から RNA を抽出し、Genome Sequencer FLX システム(GS FLX+)による網羅的塩基配列解析を委託する。得られた塩基配列データについて、平成 24 年度において得た赤色花の RNA 塩基配列データと比較することによって、赤色花で発現していて白色花では発現していない遺伝子を探索することを行なう。さらに赤色花において発現している RNA 塩基配列データをもとに DNA アレイを作成し、赤色花、黄色花、白色花から RNA を抽出して、これらの間において発現していない、あるいは発現量の低下している遺伝子がどれであるかを探索することを行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成 24 年度において、ウイロイド感染していない個体を見いだすために時間を費やしてしまったため、赤色花と白色花について各々次世代シーケンサーによる委託解析を予定していたが、赤色花についてのみウイロイド感染していない個体を見いだすことができたので、こちらのみを委託解析に出し、白色花の委託解析のために計上していた研究費について平成 25 年度に繰り越した。平成 25 年度において、初夏の花期の早い段階からウイロイド感染していない白色花個体の探索を開始し、感染していない個体を見いだしたところで、速やかにその個体の花弁より得た RNA についてGenome Sequencer FLX システム(GS FLX+)による網羅的塩基配列解析を委託し、平成 24 年度から繰り越した研究費を使う。また平成 24 年度に得られた赤色花において発現している遺伝子の網羅的塩基配列解析結果をもとに、平成 25 年度初めよりカスタム DNA アレイ作成に必要なカスタムアレイ配列設計を委託し、この設計に研究費を用いる。平成 25 年の花期である夏に赤色花、黄色花、白色花、それぞれ最低 20 個体から RNA を抽出し、得られた RNA を個々の花色ごとに等量ずつ混合する。混合するのは個々の個体ごとに存在する SNPs による塩基配列の違いを集団化して平均化するためである。ここで得られた赤色花、黄色花、白色花、3 種類の RNA 集団サンプルを用いてカスタム DNA アレイの作成とハイブリダイゼーション、さらに変動遺伝子抽出サービスを委託し、この委託解析に研究費を用いる。
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Research Products
(22 results)