2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒトデ卵成熟誘起ホルモン受容体候補として新規同定した複合体タンパクの解析
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24657047
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
奥村 英一 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (00323808)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ヒトデ / 卵成熟 / ホルモン / 受容体 / GPCR / ナノアフィニティービーズ / 1-メチルアデニン / シグナル伝達 |
Research Abstract |
全体構想として、ヒトデ卵成熟誘起ホルモンのシグナル経路の全容解明を目指し、本研究は、シグナル経路の最上流にあって、今なお分子的実体の不明であるヒトデ卵成熟誘起ホルモン受容体の実体解明を目的として、新規材料であるナノアフィニティービーズを用いて受容体の単離・同定に挑戦した。 1. 受容体候補として、rendezvin遺伝子産物からプロセシングにより切断されたと予測される3つの蛋白質を単離していた。まず、それらの一次構造を決定するためN末端アミノ酸配列を分析した。3つのうち2つは、N末端が修飾された、いわゆるブロックされた状態のため、解析不能だった。しかし、1つはfurinというプロテアーゼのターゲット配列であることが判明した。全長rendezvinをfurin処理すると分子量がほぼ一致する3つの蛋白質が生成した。受容体候補蛋白は、rendezvin遺伝子産物が、furinによるプロセシングを受け3つとなり、2つの断片については、N末に何らかの修飾を受ける可能性が示された。 2. 受容体候補蛋白質に対する特異抗体を作成し、その機能解析を行った。卵表面に精製抗体を作用させる阻害実験により、候補蛋白質が卵成熟ホルモンシグナルに関わることを明らかした。受容体の構成要素とは示されたが、膜貫通ドメインを有しないため、機能するには、G蛋白共役型受容体(GPCR)である別の分子と協同的に働くことが予測された。 3. 次年度に計画していた、受容体候補蛋白質と結合するGPCRについて、その候補を見い出したため、その解析を前倒して優先的に行った。結合が予測された部位を持つGPCRの断片は、in vitroでの解析でrendezvinと直接結合できた。現在、このGPCRに対する抗体を作製して、その解析を進めている。これまでに報告のない新規構造を持つ受容体となることが予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施した研究において、卵成熟誘起ホルモン受容体の候補分子が、卵成熟シグナル伝達に実際に関与することを複数の抗体を用いた阻害実験により示すことに成功した。これは本研究計画全体の中でも最重要課題であり、この成果により研究計画は大旨達成したと言えたが、さらに、候補蛋白と相互作用するGPCRの候補について予想外の進展があったため、計画以上に進展したと評価した。以下に、平成24年度の研究計画と達成度を記す。 1. 受容体候補蛋白質を精製し、一次構造を決定するためN末端アミノ酸配列分析を計画していた。3つのうち2つは、N末端がブロックされた状態のため解析不能で構造決定に至らなかった。しかし、断片の1つは配列決定に成功し、furinというプロテアーゼのターゲット配列であることが判明し、この酵素で3つの断片が生成できた。計画の一部しか達成できなかったものの、受容体候補分子の構造と生成過程に関する大きな手がかりが得られた。 2. 受容体候補蛋白質対する特異抗体を作成し、卵表面に精製抗体を作用させる阻害実験により、候補蛋白質が卵成熟ホルモンシグナルに関わることを明らかした。ホルモン受容体候補分子が、実際にシグナル伝達に関わることを示す、本研究上最も大きな成果が得られた。計画では、抗体を卵に注射することによる阻害実験も予定していたが、卵表に作用させる実験が成功したため、必須実験ではなくなり保留した。 3. 平成25年度に計画していた、受容体候補蛋白質と結合するGPCRについて、その候補を見い出した。その解析を前倒して着手し、結合が予測された部位を持つGPCRの断片は、in vitroで受容体候補と直接結合することを見いだした。現在、このGPCRの解析を進めており、順調に行けば早期に受容体分子の実体解明という目的が達成されるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトデ卵成熟誘起ホルモン受容体の候補分子が、実際に卵成熟シグナル伝達に関与することが、卵表に抗体を作用させる阻害実験により示されたため、これが受容体である確証を得られるよう、下記の方策により研究を推進する。 (1) <受容体候補蛋白質の局在解析> 卵成熟誘起ホルモン受容体は細胞膜に存在すると考えられる。そこで、平成24年度の解析で用いた候補蛋白質に対する抗体を使用して、間接蛍光抗体染色法により細胞膜上に局在するかを調べる。また、卵の膜画分を単離しウエスタン解析を行うことで、生化学的な手法によっても局在を調べる。 (2) <受容体候補蛋白質の受容体としての十分性解析> mRNA微小注射による蛋白質高発現によりホルモンへの反応性があがるかを調べ、候補蛋白質の受容体としての十分性を検討する。mRNAは、ヒトデ卵内での発現時によく機能するKozak配列を付加した候補蛋白の遺伝子をもとに、AmbionのmMESSAGE mMACHINEを用いて調製する。mRNAをヒトデ卵内に顕微注射し、数時間から一日おき、蛋白を高発現させる。ホルモンによる卵成熟開始のタイミングが早まること、または、最適濃度よりも低いホルモン濃度を処理した場合でも高い比率で卵成熟が誘起されることなどが期待される。 (3) <受容体の構成因子と予想されるG蛋白共役型受容体の解析> 受容体候補蛋白質は、G蛋白共役型受容体(GPCR)と共役して働くことが推測され、平成24年度の解析から、ヒトデ卵cDNAに存在したGPCRの断片ペプチドがin vitroで受容体候補蛋白質と直接結合した。このGPCRが、受容体の構成因子の一つであるかを明らかにするため、GPCRの機能を抗体により阻害できるかを調べる。いくつかの抗原に対して複数の抗体を準備しており、精製抗体を卵表に作用させるか卵に微小注射することで卵成熟の阻害を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の推進方策にそった研究を実施するにあたり、抗体作製に関わる生化学的な実験試薬や動物維持に関わる経費を主とした、下記のような研究費の使用を計画している。 (1) <物品費> 受容体の構成因子の候補として見いだされたGPCRに対する追加の抗体作製に必要な試薬等を購入する。抗原蛋白質を大腸菌内で強制発現するための遺伝子実験に関する試薬、発現した蛋白質を精製するための生化学的な実験試薬、さらに精製した抗原蛋白質を免疫する際の試薬を予定している。また、末端などの特定の部位を狙った短いペプチドを抗原とする際には、ペプチド合成の外注を計画している。抗体関連以外では、卵内での受容体過剰発現のためのmRNAを調製するためのキットや、免疫染色のための試薬を購入する。設備備品に関しては、阻害抗体が得られるまでは、複数の抗原部位を試す経費が必要となることが見込まれるため、それまでは購入を見合わせる。 (2) <旅費> 実験材料であるイトマキヒトデを採集は、神奈川県三浦半島や青森県浅虫、熊本県天草などで行われる。これらのうち何カ所かへの出張を計画している。また、研究の進展により、研究成果を学会にて発表したい。 (3) <謝金・人件費> 使用の計画はない。 (4) <その他> 免疫用のウサギの飼育や、実験材料であるイトマキヒトデの維持のために、動物実験施設の利用料として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Greatwall kinase and cyclin B-Cdk1 are both critical constituents of M-phase-promoting factor.2012
Author(s)
Hara, M., Abe, Y., Tanaka, T., Yamamoto, T., Okumura, E. & Kishimoto, T.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 3
Pages: 1059
DOI
Peer Reviewed
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