2012 Fiscal Year Research-status Report
脳内ペプチド遺伝子パラログにおける機能代償のZFN法を用いた実証
Project/Area Number |
24657050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 良隆 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70143360)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 / 動物 / 生理活性 |
Research Abstract |
太古の時代から引き継がれてきた生殖という現象は、神経系と内分泌系の巧みな協調によって見事に調節されている。申請者はこうした神経系と内分泌系の協調のしくみを理解する目的で、脳内の生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)およびそれを制御するキスペプチン(遺伝子kiss1/2)というペプチド神経系の神経内分泌的機能に注目して研究を展開してきた。本研究は、遺伝子kiss1/2機能の多様性に関する最近の我々の発見をきっかけとして、遺伝子重複により生じたパラログ遺伝子の機能の多様化に関する進化生物学的解析を可能とする技術を開発して、多細胞生物における「遺伝子のロバストネス」を初めて実験的に証明しようとする、極めて挑戦的な研究である。 一般的に、ゲノム重複によって倍化した遺伝子は、異なる機能をもつ遺伝子(パラログ)に分化していることが知られている。単細胞生物では、パラログの存在により遺伝子欠失の際に機能補償が起こり得ることが示唆されているが、多細胞生物では詳細は不明である。申請者らは、上述のパラログkiss1/2において、神経機能代償の例を発見した。そこで、この系を題材として、非モデル生物にも適用可能な遺伝子ノックアウト技術であるTALENをまずはメダカそして次には両生類であるXenopus tropicalisを用いて、進化の途上で起こった遺伝子の機能喪失を実験的に再現する、という斬新なアイディアを実験的に証明しようとするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書を提出後に予備実験と最新情報の分析をした結果、原理的にはZFNと類似しているが、効率の格段良い方法としてTALENと言う方法を使うのが良いと判断されたので、この方法の開発を次のような手順で行った。(1)TALENコンストラクトの作成、His-tagを用いた精製(複数候補を作成) (2)精製したTALENコンストラクトのin vitroでの切断効率の検証 (3)メダカを用いて遺伝子kiss1/2やgnrh1-3などのノックアウト動物を作成するための条件検討。その結果、各種TALENユニットを系統的に作成することができ、これを組み合わせることにより、各種遺伝子をターゲットとするTALENを容易に作成できるようになった。これまでに、kiss1を含むいくつかの遺伝子をターゲットとしたTALENコンストラクトを作成し、これから作製したmRNAをメダカ受精卵に注入しkiss1遺伝子が切断されたメダカの作出に成功している。ゲノムシーケンスより、このメダカはモザイク状にkiss1遺伝子の破壊された細胞をもつことがわかり、また正常に発生することもわかった。 一方で、本研究においてはXenopus tropicalisを用いてトランスジェニック動物を作成するような実験を行うため、Xenopus tropicalisの飼育設備を整備し、メダカ同様トランスジェニック動物が作成できるような体制の構築を開始している。 以上のように、本研究計画はかなり挑戦的なテーマではあるが、おおむね予定通り順調に達成されていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果により、モザイク状にkiss1遺伝子の破壊された細胞をもつメダカが生まれてきているので、今後これらを掛け合わせることにより遺伝的ホモ個体を得る。これらを用いて表現型の解析を各種の生理学的な手法を用いて行う。これには、行動学的な解析、ターゲットとする遺伝子を発現するニューロンおよびそのニューロンを含む神経回路の電気生理学的解析、生殖腺や脳の分子形態学的および分子生物学的な解析など多方面の解析が必要とされるので、それなりの時間と労力を要する予定である。一方、Xenopus tropicalisのトランスジェニック動物を作成するため、前項までの方法によりわかった最も効率の良いTALENコンストラクトのXenopus受精卵へのマイクロインジェクションを行う。 以上のような方法を開発して、当初の目的であるkiss2遺伝子喪失前の四足動物であるXenopus tropicalisを用いて、kiss2ノックアウトにより進化の過程で起きたkiss2の喪失に近い状態を実験的に再現し、kiss1遺伝子がkiss2遺伝子の喪失を機能補償し得るかどうかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
薬品 400千円 実験用動物 200千円 ガラス・プラスチック器具 100千円 など、当初の予定通りである。ただし、計画では計上していた実験補助のための人件費・謝金は、上記の消耗品の使用と併せて無理のない範囲に留める予定である。
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[Journal Article] Time-of-day dependent changes in GnRH1 neuronal activities and gonadotropin mRNA expression in a daily spawning fish, medaka.2012
Author(s)
Karigo, T., Kanda, S., Abe, H., Okubo, K., and Oka, Y.
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 153
Pages: 3394-3404
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Female-specific target sites for both estrogen and androgen in the teleost brain.2012
Author(s)
Hiraki, T., Takeuchi, A., Tsumaki, T., Zempo, B., Kanda, S., Oka, Y., Nagahama, Y., and Okubo, K.
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Journal Title
Proceedings of the Royal Society. B, Biological sciences 2012 Dec 22
Volume: 279
Pages: 5014-5023
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Embryonic Expression and Function of Kisspeptins and their Receptors in a Teleost Fish, medaka2012
Author(s)
Okubo, K., Hodne, K., Kanda, S., Shimada, H., Oka, Y., Weltzien, F.A.
Organizer
The 2nd World Conference on Kisspeptin Signaling in the Brain
Place of Presentation
The University of Tokyo, Tokyo
Year and Date
20121106-20121109
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[Presentation] Electrophysiological and Morphological Analysis of Kiss1 Neurons in Trasgenic Medaka, Oryzias latipes2012
Author(s)
Shimada, H., Kanda, S., Akazome, Y., Abe, H., Okubo, K., Oka, Y.
Organizer
The 2nd World Conference on Kisspeptin Signaling in the Brain
Place of Presentation
The University of Tokyo, Tokyo
Year and Date
20121106-20121109
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[Presentation] Effects of Kisspeptins on LH Secretion and GnRH1 Neuronal Activities in Goldfish and Medaka.2012
Author(s)
Karigo, T., Uenoyama, Y., Oishi, S., Fujii, N., Mitani, Y., Kanda, S., Oka, Y.
Organizer
The 2nd World Conference on Kisspeptin Signaling in the Brain
Place of Presentation
The University of Tokyo, Tokyo
Year and Date
20121106-20121109
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