2012 Fiscal Year Research-status Report
レトロトランスポゾン挿入配列によるmRNAの局在・代謝制御機構の解析
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24657123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 真一 独立行政法人理化学研究所, 中川RNA生物学研究室, 准主任研究員 (50324679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ノンコーディングRNA / 4.5SH / NF110 |
Research Abstract |
これまでの研究により4.5SHは二本鎖RNA結合タンパク質として同定されていたNF110と複合体を形成していることが示唆されていた。今年度はこの可能性を生化学的に検証するため、NF110のリコンビナントタンパク質を精製することを試みた。BACを用いた組換えバキュロウイルスの系を用い、これまでにNF110の全長及び各種機能ドメインを欠いた変異分子を発現させる事に成功している。これらのタンパク質はGSTのタグが融合されており、グルタチオンビーズによって精製可能である。これらのタンパク質は、来年度以降精製し、各種生化学的実験に用いる予定である。 本研究において技術的に非常に需要な課題は、特定のRNAを含むような複合体を生化学的な方法によって精製・同定可能か、という点である。今年度は、まず、4.5SHと複合体を形成しているターゲットのmRNAを同定も試みた。核分画をスクロースの密度勾配遠心で分離し、フリーの4.5SHを除き、複合体を形成していると思われる沈降係数の大きいフラクションを集め、RNAを精製した。さらに、精製されたRNAを用いて、4.5SHに対するアンチセンスオリゴDNAを用いて4.5SHを精製した。その結果、ポジティブコントロールである4.5SHが精製されている事が確認できた他、これまでに4.5SHのターゲットとしてCenpFなどが濃縮されていることがqPCRレベルで確認することが出来た。一方、Gapdhや7SKなど4.5SHのターゲットでないRNAは濃縮されていなかった。これらの結果により、4.5SHのノックダウンによって発現が変化するようなRNAは実際に細胞内で複合体を形成していることが強く示唆された。なお、これらの研究は東京大学工学研究科鈴木勉教授の研究室との共同研究によって進められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目的の一つは、機能未知の核内ノンコーディングRNAである4.5SHの機能解析である。これまで4.5SHのノックダウンによって特定の遺伝子の発現が変化すること、また、それらの遺伝子の転写産物の細胞内局在が変化することなどが分かっていたが、それらが直接の影響なのか、あるいは間接的な影響なのか、全く分かっていなかった。今回、東京大学工学研究科の鈴木勉教授とタイトな共同研究を行い、特定の核酸配列に対してデザインされたオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ターゲットと複合体を形成している4.5SHを精製する事に成功した。一般論として、特定のRNA複合体を精製する手法は、UsnRNAなどの特殊な例を除けばほとんど確立されておらず、今年度我々が行った生化学的な解析は非常に大きな進歩であると考えている。 一方、レトロトランスポゾン配列を持つRNAが熱ショックにより特異的に分解される機構の解明というのが本研究の柱であったが、上記の研究が意外にも大きく進展したために、当初の計画通りの実験(すなわち熱ショックによって特定のRNAが分解される分子メカニズムの解明)に十分な時間を取ることが出来なかった。きわめて重要な成果は得られているものの、当初予定した計画は若干当初の計画からは遅れており、総合的に見て「おおむね順調」という自己評価をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまで我々が長年研究を進めてきた4.5SHの分子動作メカニズムの解明に加え、レトロトランスポゾン挿入配列を有するmRNAが熱ショックに応答して急速に分解されるという全く新しい現象を解明する事を目的としていた。これまでに4.5SHの動作メカニズムについては相互作用するタンパク質の同定をはじめとして予測以上の成果が得られているが、レトロトランスポゾン挿入mRNAに関する研究に関しては、若干、研究の進展の遅れが見られる。そこでレトロトランスポゾン挿入配列を持つmRNAの安定性の制御に関わる因子の同定をより集中的に試みる。その一方、4.5SHの動作メカニズムに関しては徐々に新知見が積み上げられつつあるので、その方面での仕事もしっかりと進めていく事が重要であると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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