2013 Fiscal Year Research-status Report
昆虫体内の微量元素の質的量的解析と気象解析に基づく昆虫の長距離移動特性の解明
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24658058
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 部長 (10215923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 年則 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (10300930)
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 研究員 (20435712)
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Keywords | 長距離移動 / 日本脳炎媒介蚊 / 飛翔エネルギー / 放射光照射法 / 中性子放射化法 / PIXE分析 / 流跡線解析 |
Research Abstract |
海外より飛来することが示唆されている日本脳炎媒介蚊であるコガタアカイエカの飛来源を推定する手段として,微量元素分析を試みた.放射化分析ならびに放射光照射の長距離移動性昆虫の発生源の推定への応用は初めての試みであり,学術的に大きな特徴である. これまでの実験で,土壌および蚊(合計59検体)を機器中性子放射化分析および安定同位体比の解析に供し,代表的な微量元素24元素を抽出し,コガタアカイエカとその生息地の土壌との両方に共通する元素種をある程度絞り込むことができた.一方で大型放射光施設(SPring-8)において放射光解析を新たな試みとして取り入れ,放射化分析で測定不能であった元素類の再評価,および成虫各部位における元素マッピング等の予備的な実験をほぼ計画通りに実施した(課題番号2011A 1089, 利用課題実験報告書).その結果,乾燥した蚊の各部位にX線を照射し,Ca, Mn, Fe, Cu, Zn, Crに対応するチャンネルのスペクトルを記録しマッピングを行った結果,部位や個体間で変動が見られた元素が存在する一方で,採集地による明確な傾向が見られない元素があることも明らかになった. 本年度は,仁科記念サイクロトロンセンター(NMCC:岩手県滝沢村/2014.1より滝沢市)において,PIXE分析を実施し微量元素を解析した.PIXE分析の中でも微量試料の測定に最適である無標準法の条件検討を行い,適用可能な状態にした.無標準法が適用可能となったことで,従来の放射化分析では難しかった蚊1個体あるいは1個体単位での部位別測定が可能となった.また,無標準法では放射化分析の場合よりも定量可能な元素数(13元素:Na,Mg,P,S,Cl,K,Ca,Mn,Fe,Cu,Zn,Br,Sr)がほぼ倍増し,特にPやS等,生物多量元素についての知見を得ることが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PIXEによるコガタアカイエカの測定法は確立したが,天候不順により屋外でコガタアカイエカの採取を十分に行えなかった.また,放射光照射による微量元素分析(兵庫県播磨市Spring-8)に関しては,特徴的な元素の目立つ個体の発見がなかったことから,来年度以降の施設利用申請と研究計画を立てるに留まった. フライトミルにより飛翔させた個体の使用エネルギーについての解析は,実験環境が整わなかったことで本年度は実施できなかったため,次年度に予定することとした.
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Strategy for Future Research Activity |
NMCCを利用したPIXE分析については新たに採取されたコガタアカイエカを測定する.H26年度は5回程度の測定を行い,1個体全体や部位別での元素含有率に基づく多変量解析を実施し採取地別での元素的な特徴の把握を目指す. フライトミル試験で連続飛翔時間が長かった個体と短かった個体について,試験終了後に冷凍保管された乾燥個体を用いて,前年度に実施できなかった脂質代謝に関する解析を行うとともに,PIXE分析あるいはSpring-8で構造解析を行い,飛翔時間の長短に影響する微量元素の比較を行う予定である. これまでに実施したフライトミルによる飛翔実験,脂質代謝,後方流跡線解析,SPring-8,PIXE分析等から得られる情報を総括し,コガタアカイエカの飛来源ならびに飛来経路推定を行う.
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