2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松下 範久 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00282567)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マツタケ / 共生 / 外生菌根 / 根分け |
Research Abstract |
マツタケを人工栽培するためには,「シロ」と呼ばれる外生菌根と菌糸の集合体を形成させる必要がある。本研究では,「マツタケ菌根苗に別種の外生菌根菌を接種して宿主の成長を促進させることにより,マツタケのシロを形成・発達させる」という新たな方法の確立に挑戦する。平成24年度は,1本のアカマツ根系に2種の外生菌根菌が互いに接触することなく菌根を形成できる「分根培養系(split-root system)」の構築手法の検討等を行い,以下の成果が得られた。 1.アカマツの挿し木方法を検討し,実生苗から根分けに適した挿し木苗を効率よく作出する手法を確立した。 2.得られた挿し木苗の根系を2つに分け,角形シャーレを2個貼り合わせた容器に移植した後,片側の根系にウラムラサキの培養菌糸体を接種した。その結果,接種した側の根系にはウラムラサキの菌根が形成され,反対側の根系にはウラムラサキの菌根や菌糸は観察されなかった。このことから,この培養系により,根分けをした根系間での菌糸の移動(コンタミネーション)が起こらない状態で外生菌根共生系を維持できることが分かった。 3.構築した分根培養系に,ウラムラサキとコツブタケを接種した。また,両側に同じ菌種を接種したもの,片側だけに接種したもの,無接種のものを対照とした。現在培養を継続しており,次年度に菌根形成率や成長量等の測定を行う予定である。 4.次年度の実験に使用する外生菌根菌の菌株を収集し,新たに9種15菌株を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
挿し木苗の作出手法の検討や,培養系に用いる培養土の検討,苗木の栽培条件の検討などに想定していたよりも多くの時間が掛かってしまったものの,今年度の最大の目標であった「分根培養系の構築手法の確立」については達成することができた。この培養系を用いることにより,次年度の研究を円滑に行うことができると考えられる。また,この手法は,今後,外生菌根共生系内における物質の移動や共生者間の相互作用の解明など,様々な研究への応用が可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した分根培養系に,マツタケを含めた複数種の外生菌根菌を接種し,数ヶ月間培養する。その後,菌根形成率や宿主の地上部と地下部の成長量,土壌中の菌糸体量を測定する。また,培養中に与える窒素等の量を変えて同様の実験を行い,共生系の形成・発達過程に対する養分条件の影響について評価する。得られた結果から,他種の菌根菌による宿主成長促進効果を利用した人工的なマツタケのシロ形成方法について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分根培養系の構築に時間を要したため,今年度予定していた菌根菌間の相互作用の解明に関する解析を年度内に行うことができなかった。そのため,今年度の研究費を次年度の研究費と併せて使用して,その解析を行う。計画時に想定していたよりも効率よく培養系を構築する手法が確立できたため,今年度予定していた残りの研究を次年度の研究と併せて推進できると考えている。
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