2013 Fiscal Year Research-status Report
高速摩擦によるコーティング層生成技術の開発と木材表面の耐水制御・セラミックス化
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24658154
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
大谷 忠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80314615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 毅尚 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90314616)
足立 幸司 秋田県立大学, 付置研究所, 准教授 (70451838)
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Keywords | 高速摩擦 / 木材 / 表面 / 転写 / 耐水性 |
Research Abstract |
本年度実施した研究成果として,以下のことが明らかとなった。(1)工具形状の木材表面への転写性を検討し,工具表面の算術平均粗さが1μmを下回る条件において,形状の転写性が大きく変化すること(2)木材表面をナノレベルで平滑な工具表面を用いて高速摩擦することで,木材表面の算術平均粗さが1μmを下回る表面を生成することができたこと(3)樹脂製工具を用いて高速摩擦を行った木材表面において,表面の成分分析を行った結果,熱軟化性樹脂以外の樹脂も転写される可能性があることがわかった。 上記の研究成果の意義として,(1)の成果に関しては,木材表面へ凹凸形状を転写する際の基礎的データとして意義があると考えられ,より平滑な凹凸形状を転写する際に,木材の組織を考慮した高速摩擦の条件を検討することが重要であることが示唆された。 (2)の成果に関しては,本研究の目的の1つである,ナノレベルの組織まで改質したコーティング層の生成技術の開発に関して成果が得られたと考えられえる。木材表面において従来の研削加工では到達しない表面状態に高速摩擦によって到達することが明らかとなった。ナノレベルまで改質された木材表面における機能性の評価に関しては,次年度以降実施する予定である。 (3)の成果に関しては,前年度までに得られた成果である熱軟化性樹脂を用いた転写を発展させ,木材表面の高機能化に向けて異物の転写を行うに当たり,意義のある結果が得られたと考えられる。しかし,一方でセラミックス化に用いられるフェノール樹脂の転写に関しては,良好な成果が得られていない。そのため,次年度以降の研究の展開として,高速摩擦前の木材の処理方法を工夫するなどして,セラミックス化に向けてアプローチしていく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の計画において実施予定であった,①摩擦による表面組織の構造観察に関してSEMおよびFE-SEMを用いて観察を行い,形状転写された木材表面の状態を把握した。一方で②摩擦した表層のトライボロジー特製の評価,③X線による構造解析については実施していない。その代わりとして,EDXによる元素分析を通して,樹脂の転写の状態を検討することを行った。 現在までの成果を考慮すると,本年度の予定していた内容は十分に実施できていないが,研究全体の目的である,ナノレベルの組織まで改質した表層の開発に関しては,一定の成果を挙げている。そのため,当初計画した内容に関しては概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方向性としては,①摩擦による表面組織の観察および③X線による構造解析を行い,高速摩擦後の木材表面の状態について詳細に把握する。また,ナノレベルの組織まで改質した表層の開発に関して,木材表面の機能性を検討することで,従来から検討している撥水性の他にも付与される機能性があるのかを調べていく。 木材表面のセラミックス化に関しては,化学的な知見も踏まえながら,木材へ樹脂を含浸させる方法などを用いて実験を行い,表層のセラミックス化に向けて研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費に関して,今年度に購入予定であった高速摩擦に用いる凹凸が制御された工具を昨年度購入した物を自ら加工することによって使用したため,予定していた支出額よりも少なくなり次年度使用額が生じた。また,樹脂製工具に関しても,昨年度購入した物が使用できたため,追加して購入する必要が無くなり,次年度使用額が生じた。 今後の方向性として,①摩擦による表面組織の観察および③X線による構造解析を行い,高速摩擦後の木材表面の状態について詳細に把握することを予定している。そのため,①および③に関して,高速摩擦実験を行うために消耗品費および分析のための機器使用費に助成金を使用する予定である。また,それらの実験補助に対する謝金としても助成金を使用する予定である。
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