2012 Fiscal Year Research-status Report
暑熱環境の緩和および地球温暖化対策を目的とした自然冷熱源の利活用に関する研究
Project/Area Number |
24658211
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
松村 伸二 香川大学, 農学部, 准教授 (60165868)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 自然エネルギー |
Research Abstract |
本研究の目的は、①ため池水温成層モデルの構築、②圃場までの冷水導水過程による熱損失の大きさ、③冷水による水稲の外観品質への効果の確認の3つであるが、当該年度の実験計画の一部で変更が生じたが、他は概ね予定していた実験・解析を実施できた。 水温成層モデルの構築に関しては、ため池の水温成層観測が2つのため池のみの実施に留まったため、当初予定のため池数に及ばなかった。しかし、観測を実施したため池の水温観測結果から、両ため池の同一水深における水温はほぼ同一となり、またカンガイ期間中の水の流出によるため池内の二次躍層についてもほとんど形成されないことがわかった。香川県のため池は水深10m未満のものがほとんどであることからも、今後は成層モデルをもっとシンプルな形に単純化することが適当であると考えられる。 冷水の導水過程における熱損失に関しては、浅いモデル水路の水温上昇の理論式を用いて、実際の水路の規格・流速を適用して上昇後の水温値の計算を行った。また次年度予定していた水路での水温上昇過程の観測を前倒しして実施し、水温実測値は計算値に比べてかなり高温になるという結果を得た。これは配水慣行として上流側の水田から順に水を溜めていくため、下流側の水田に導水する時点ですでに10時間以上経過するという時間的ロスに因るものであると考えられた。しかし、実験では3℃程度の昇温に留まり、この程度の昇温であればため池深水層の10~13℃の冷水を流す場合には下流1km程度の水田においても十分効果が得られるものと考えられる。 冷水による水稲の外観品質への効果に関する実験については、当該年度の夏季が目立った高温にならなかったため、冷水処理の効果は確認できなかった。 またため池深水層の水質について、水稲根の好気的呼吸に重要とされる溶存酸素について、その量の経時変化を把握するため新たに長期継続観測を開始している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水深の大きいため池と野池のタイプについては水温観測に遅れを生じたが、他のタイプについては概ね観測が順調に実施できた。導水過程の熱損失の計算は予定どおり実施し、その検証実験は次年度予定であったがすでに実施しており、計画より先行している。水稲への冷水効果の実験は順調に実施できたが、実験結果としては期待されたものではなかったため、引き続き実施していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
概ね初年度と同様な実験を継続していく。 水温成層モデルに関する実験では、遅れていたタイプ別のため池における水温観測を優先して開始し、それ以外にはため池への上流からの流入水の水温成層撹乱への影響が大きなものであるかどうかについてより詳細に調査を行う。 冷水の導水過程による熱損失の実験に関しては、前年度に開始した水路水温観測を継続して実施し、十分な日射と高温環境下における観測データを蓄積し、また水温上昇値計算の実用式の作成も試みる。 水稲への冷水効果の実験については、今年度も同様な実験を繰り返し実施する。本実験は高温年における実験データがより意味を持つが、高温年でない場合の対処も考慮して冷水効果による品質差を捉えうるような詳細な気象環境測定を実施していく。特に影響が大きいと考えられる根圏環境における地温等の観測に重点をおく。 また開始したばかりのため池での溶存酸素の計測も継続して行う。恒常的には水底近くの計測を行うが、定期的に水底から水面近くまでの分布も調査する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画から遅れたため当該年度に購入しなかったため池の水温観測機材について、次年度はこの計測用のセンサとデータロガーおよび水位計を早急に購入する。また、冷水による水稲の外観品質への効果についての実験で使用するデータロガーが故障したため、購入を予定している。
|