2013 Fiscal Year Research-status Report
暑熱環境の緩和および地球温暖化対策を目的とした自然冷熱源の利活用に関する研究
Project/Area Number |
24658211
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
松村 伸二 香川大学, 農学部, 准教授 (60165868)
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Keywords | 自然エネルギー / ため池 / 水温 |
Research Abstract |
本研究では、①ため池水温成層モデルの構築、②圃場までの冷水導水過程による熱損失の大きさ、③冷水による水稲の外観品質への効果の確認の3つとしていたが、①については前年度の観測結果より単純なモデルの構築に修正している。また、新たな測定として溶存酸素についてのルーチン観測も実施した。当該年度の実験計画は概ね予定どおり実施できた。 ①の水温成層モデルの構築に関しては、当該年度の観測結果から水深によりため池を分類し、各タイプ別の単純な水温成層パターンのみで本研究のため池深水層の冷水利用効果の有無(可能性)が判別できることが概ね明らかとなった。 ②の冷水の導水過程における熱損失に関しては、前年度の実験結果から水路末端では3℃程度の昇温レベルであることが明らかとなったが、当該年度は通常より深い樋門からの導水を1回のみであるが実施したことにより、水路始点で17℃程度の水温が水路末端でも1℃程度の昇温で抑えられたという結果を得ることができた。が、その複雑な導水過程(導水した水田の範囲等)・経路の詳細が把握できていなかった。 ③冷水による水稲の外観品質への効果に関する実験については、当該年度の夏季が高温となったが、16℃の冷水処理を担う地下水汲み上げ用ポンプの突発的な故障のため、代わりに23℃の地下水槽の冷水による実験に切り替えて実施した。その結果、猛暑の際には23℃レベルの冷水では外観品質改善の効果はまったくなく、通常の水路に流れる25、26℃レベルのカンガイ水を掛け流しても高温年にはほとんど効果はないものと予想された。 また、溶存酸素の観測では計測機器にトラブルが多かったため継続的な測定ができなかったが、冬季から夏季にかけては0.1から0.02程度まで低下しており、池深部ではかなりの低酸素状態であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
水深の大きいため池と野池のタイプについては水温観測にトラブルが生じたため、開始が遅れ、なおかつ欠測が多かったが、現在では概ね観測が順調に進んでいる。導水過程の熱損失の計測は予定どおり実施できたが、導水の過程、いつどこで湛水が発生したか等については複雑に入り組んだ水路の流れを把握することが難しく、それについては今後の課題である。水稲への冷水効果の実験もポンプの突発的な故障があったため予定していた実験を変更することになったが、計画と異なる温度レベルの冷水による実験に切り替えたため、外観品質の改善に効果のない温度レベル範囲を特定・確認することに役立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
水温成層モデルに関する実験では、バッテリの消耗による欠測が多かったため、監視体制を強化して継続する。冷水の導水過程による熱損失の観測に関しては、水路水温観測を継続し、水路中の流れの方向や合流、分流、滞留などの詳細な把握に努め、流れの停滞がある場合の昇温程度を明らかにし、高温環境下における水温上昇値計算の実用モデルの作成も試みる。さらに、冷水効果の観点から導水後の水田内の水温についても測定を実施し、広い水田内のカンガイ水の昇温過程についても検討する。水稲への冷水効果の実験については、地下水による冷水による実験を再開して実施する予定であるが、ポンプの修理が進まない場合は地下水槽の冷水による夜間掛け流し実験に変更して実施することも考えている。また、溶存酸素の長期観測も継続して行うが、水深別の溶存酸素分布を把握するためにも定期的に水深別測定を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
溶存酸素計に異常データが発生しているため、科研費で購入予定の水位計を大学の研究経費で支出し、次年度での溶存酸素計の修理・点検の経費として充てるため未使用額が発生した。 次年度に溶存酸素計の修理・点検の経費として使用する。
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Research Products
(2 results)