2012 Fiscal Year Research-status Report
ダイオキシン毒性機構の新展開:ロイコトリエンB4増加の毒性学的意義と油症との関連
Project/Area Number |
24659053
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 英之 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40142351)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ダイオキシン / メタボローム / ロイコトリエンB4 |
Research Abstract |
ダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin, TCDD) によって肝臓のロイコトリエンB4 (LTB4)が蓄積する可能性につき、より詳細な事実確認、並びに機構解明と毒性学的意義付けを目指して研究を行った。TCDDは摂餌量の低下を惹起することが古くから知られている。従って、TCDDによるLTB4増加に接餌量の低下が寄与する可能性もある。そこで本年度は、対照群とTCDD処理群に加え、摂餌量をTCDD群と同じに制限したpair-fed対照群を設けて3群間での比較検討を行った。ラット肝抽出物をUPLC-TOF-MSに付してメタボローム解析を実施した結果、LTB4はpair-fed対照群においても有意に増加したが、TCDD群においてはそれよりも遥かに顕著に増加した。従って、LTB4の増加は摂餌量の低下以外の要因が主に寄与することが判明した。 LTB4増加の機構について解析を行った結果、1)アラキドン酸をLTB4前駆体のLTA4に変換する5-lipoxygenaseの増加、並びに2)LTA4を別経路(LTC4生成)に導くLTC4 synthaseの発現抑制の2つが寄与することを見いだした。 LTB4は炎症誘起に関わると言われており、本物質の増加がTCDD毒性に寄与する可能性がある。そこで、TCDD未処理ラットに単回経口投与して過剰LTB4の障害性確認を試みたが、体重や肝重量には変化が認められなかった。しかし、LTB4の不安定性や解析スケジュールの不適切のため障害を検出できていない可能性も残った。TCDDは芳香族炭化水素受容体 (AhR)の活性化を通して、毒性を惹起するとされている。本研究の結果、TCDDの5-lipoxygenase誘導にはAhRが関与することが示唆され、この誘導は毒性に関与する可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定通りか、むしろ想定以上に進んだ状況である。当初はLTB4増加をより定量性の高い手法で解析する計画にしていたが、それよりもpair-fed群での解析を追加する方が重要性が高いと判断して、計画を変更した。当初よりも作業量の多い計画に変えたにも関わらず、研究が順調に進捗した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、LTB4を未処理ラットに投与してもTCDDによる消耗症(体重低下や肝臓肥大等)を再現することができなかった。これは投与方法/スケジュール、あるいは投与後の解析タイミング等の不適切が原因とも考え得るので、最終年度はこれらの点を改良して詳細に解析する。一方、LTB4は炎症応答に深く関わると言われており、これがTCDD毒性に寄与する可能性も考えられる。そこで、今年度はこれを検証する一環として、サイトカイン類の網羅的解析を行う。 TCDDによる5-lipoxygenaseの誘導にはAhRが関与することが示唆された。しかし、まだ証拠が不十分であるので、5-lipoxygenase遺伝子上流をluciferase遺伝子に連結し、これを肝由来細胞に形質転換してレポーターアッセイを実施する。5-Lipoxygenase遺伝子上流にはTCDD結合配列が存在するので、この配列を変異させたコンストラクトについても同様に解析する。TCDDによるレポーターの誘導が変異の有無で変化すると予想しており、これを検証することによって、AhRの役割を実証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(2 results)