2012 Fiscal Year Research-status Report
新規抗菌薬S-ニトロソ化α1-酸性糖タンパク質の創製と多剤耐性菌治療への応用
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24659076
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
丸山 徹 熊本大学, 薬学部, 教授 (90423657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田切 優樹 崇城大学, 薬学部, 教授 (80120145)
異島 優 熊本大学, 薬学部, 助教 (00457590)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | α1-酸性糖タンパク質 / 一酸化窒素 / 多剤耐性 / 抗菌活性 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、感染時に生合成が亢進する一酸化窒素( NO )とα1-酸性糖タンパク質( AGP )の反応物であるS-ニトロソ化AGP( SNO-AGP )が、① NOの細菌内輸送担体として機能すること、② 既存薬とは異なる機序で強力(pmol / L )かつ広域な抗菌スペクトルを獲得すること、③ 薬剤耐性克服効果を有する可能性を見出した。本年度では、SNO-AGP のユニークな抗菌活性を基盤とした多剤耐性菌に対する新規抗菌剤の可能性を追求した。 その結果、1) SNO-AGP の多剤耐性菌に対する抗菌活性評価( in vitro )M9 培地中へ各細菌( メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の中でも分離率が高い菌株 ; S. aureus OM481,OM505, OM584, OM625 ))、バンコマイシン耐性腸球菌( VRE )、ペニシリン耐性肺炎球菌( PRSP )、耐性緑膿菌(MDRP ; P. aerugiosa PAO1 )、耐性サルモネラ菌( S.typhimurium LT2 )、耐性肺炎桿菌( K. pneumoniaMGH78578 )、耐性結核菌 )を添加した系に、種々の濃度のSNO-AGP を加え、37℃・9 時間反応後の濁度( OD630 )を測定した際、強力な抗菌活性を示した。 2) 既存の抗菌薬とSNO-AGP を併用した系での上記細菌に対する抗菌活性評価( in vitro )の検討を、広域な抗菌スペクトルを有し、臨床現場で耐性化が懸念されるカルバペネム系抗菌剤(イミペネム)、ニューキノロン系抗菌薬(シプロフロキサシン、レボフロキサシン)を共存した系で行い抗菌作用の相加・相乗効果について、統計学的解析法であるisobologram法により検討した結果、相乗的な抗菌活性を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画では、以下の4つの項目を行う予定としていた。 1) SNO-AGP の多剤耐性菌に対する抗菌活性評価( in vitro )2) SNO-AGP のバイオテロリズム細菌に対する抗菌活性評価( in vitro )3) 既存の抗菌薬とSNO-AGP を併用した系での上記細菌に対する抗菌活性評価( in vitro )4) NO 担体としてのAGPの構造活性相関( in vitro ) 現在、このうち3つの項目においては終了している。また、ここまでの業績は、FASEB Journalにも掲載されるほどのデータを出していることを鑑みて、『おおむね順調に進展している』と評価付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進展していることから、当初の実施計画に基づき、今後も研究を行っていくことで、大きな問題は生じないと考えている。具体的な実験予定としては、以下の通りである。 1) 薬剤排泄トランスポータに及ぼすSNO-AGP の影響( in vitro )グラム陰性桿菌や緑膿菌の多剤耐性において主要な役割を果たしているRND 型多剤排出トランスポータ( PmpM など)あるいはMRSA 耐性に関連する排泄トランスポータ( NorA やTet (K)など )の発現が確認されている耐性緑膿菌、サルモネラ菌、MRSA、あるいはこれらのトランスポータを大腸菌に組み込んだ系、さらにはこれらのトランスポータをノックアウトした肺炎桿菌をSNO-AGP 処理することにより、トランスポータの発現量( RT-PCR )やその基(エチジウムブロミド)及び抗生物質の細胞内残存量を測定する。2) SNO-AGPによるクオラムセンシング阻害活性の評価( in vitro )細菌におけるバイオフィルム形成は薬剤耐性の一因である。このバイオフィルム形成において重要な役割を果たしているクオラムセンシングに対するAGPあるいはSNO-AGPの阻害効果を検討する。具体的には、緑膿菌バイオフィルム形成能を有する緑膿菌に対して、AGP あるいはSNO-AGP を添加し、フィルム形成あるいはオートインデューサーに対する抑制効果を評価する。3) 感染モデルマウスに対するin vivo 抗菌活性評価( 単独及び抗菌薬併用 )1)、2)で抗菌活性が認められた菌種に対しては感染マウスによるin vivo 実験を行う。具体的には、4週齢マウス( 1群10 匹 )に対して、5%ムチンに懸濁した菌を腹腔内に投与し、感染モデルを作成する。これらマウスに対してSNO-AGP を腹腔内に投与し、血中や肝臓中菌量数並びに生存率を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(24 results)