2012 Fiscal Year Research-status Report
ncRNAをコードする超保存領域T-UCRを標的とする消化管癌の診断・治療展開
Project/Area Number |
24659163
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安井 弥 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (40191118)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ncRNA / 超保存領域(T-UCR) / 消化管癌 / 診断・治療展開 |
Research Abstract |
非翻訳RNA(ncRNA)をコードする超保存領域 (transcribed-ultraconserved regions: T-UCRs)において,特定のT-UCRの発現異常・変異がいくつかの癌で見出され,新しい診断・治療標的の可能性として注目されている。消化管癌において,T-UCRの発現解析,生物学的機能解析を行なうとともに,T-UCRの制御に関わるmicroRNAを同定し,診断・治療への展開を検討することを目的とし,本年度は,以下のとおり研究を実施した。 1)胃癌におけるT-UCRの発現とメチル化による制御 ヒトゲノムに少なくとも481個存在するT-UCRの内,脱メチル化剤によって発現の回復が知られているUCR160, UCR283, UCR346に注目した。9株の胃癌細胞株と正常胃粘膜組織においてT-UCRの発現を定量的RT-PCRで検討したところ,特に,UCR346の発現が,6株(67%)において正常組織に比べて発現が明瞭に低下していることが分かった。組織型との関連はなかった。中でも著しく発現の低下していたTMK-1細胞では,5アザデオキシシチジン処理においてある濃度で発現の亢進が認められた。胃癌組織における発現異常を検討するために,約40例の胃癌組織とそれぞれに対応する非癌部胃粘膜組織からRNA分画を調整した。食道癌においても,サンプルを準備中である。 2)胃癌に特徴的なmicroRNAの発現と機能解析 microRNAマイクロアレイ解析から抽出した胃癌で発現低下しているmiR-148aは,転写・翻訳の両面でMMP7の発現を制御し,癌の浸潤,悪性度と関わることを示した。低分化腺癌組織で発現が亢進しているmiR-143/-145は,主に間質線維芽細胞から産生され,癌の浸潤と形態形成に関与し,予後因子となることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画通り、胃癌細胞株について代表的なT-UCRの定量的発現解析を行ない、いくつかの発現異常を示すT-UCRと細胞株の組合せを見いだした。発現制御に関する検討を行ったが、機能解析に関しては、次年度に行なう予定である。臨床例解析のためのサンプル準備は順調である。一方、T-UCRとmicroRNAの関連解析については、平成25年度の計画としていたが、本年度にいくつかの消化管癌に特徴的な発現を示すmiRNAを同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って研究を推進する予定である。即ち、T-UCRとmiRNAの発現相関解析、特徴的T-UCR、miRNAと臨床病理学的事項・治療情報との関連解析、診断系の確立ならびにsiRNA等による治療実験、である。平成24年度で残っている特徴的T-UCRについての生物学的機能解析を加えて行なう。技術的、設備的には問題なく遂行することができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
T-UCRの発現解析の条件決めに手間取り、標的とするT-UCRの機能解析が順調でなかったために、当該直接経費次年度使用額が生じた。次年度は、当初の予定通り、T-UCRとmiRNAの発現相関解析と制御に関わるmiRNAの同定と転写活性の検証、特徴的T-UCR、miRNAと臨床病理学的事項・治療情報との関連解析、診断系の確立ならびにsiRNA等による治療実験、を行なうのに加えて、上記の今後の研究の推進方策に示したように、特徴的T-UCRについての生物学的機能解析を行なう。そのために、H24年度の未使用研究費は、培養細胞を用いた強制発現系あるいはRNA干渉系の作成および細胞生物学的解析(anchorage-independent growth、細胞増殖、MTTアッセイ、ボイデンチャンバーを用いたinvasionアッセイ、wound healingによるmigrationアッセイ)のための細胞培養用試薬、ガラス/プラスチック器具などの消耗品費に充てる。
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