2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒ素感受性関連遺伝子群の探索と毒性発現・生体防御機構の解明
Project/Area Number |
24659301
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
信國 好俊 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (80295641)
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Keywords | 三酸化ヒ素 / 薬毒物感受性 / 薬毒物耐性 / 抗がん剤耐性 / ジーントラップ / ゲノム機能 / トキシコゲノミクス / 責任遺伝子探索 |
Research Abstract |
「ヒ素中毒の予防と治療法の開発」および「ゲノム機能学的責任遺伝子探索法の確立」を目的に、ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いたヒ素感受性関連遺伝子群の探索とその機能解析に取り組んでいる。しかし、平成25年度は職場環境・研究環境の悪化から実験がほとんどできなかった。現在、問題を大学本部へも報告し、実験再開に向けての職場環境・研究環境の改善を待っているところである。そのため平成25年度はこれまでに明らかとなった候補責任遺伝子群の情報検索と比較検討を行った。 1.ヒ素感受性低下(耐性)変異細胞の単離と責任遺伝子の解明:ジーントラップ挿入変異CHO細胞ライブラリー(Nobukuni et al., JBC, 2005)から、三酸化ヒ素処理(40μM, 3~4 hr)でも生き残ったヒ素感受性低下変異細胞34クローンの解析を行った。ジーントラップ法で生じたキメラRNAの内因性遺伝子部分をRT-5’RACE法で増幅後塩基配列を決定し、その配列をBLAST検索することで、トラップされた遺伝子11個(P450関連遺伝子1個、シグナル伝達関連遺伝子1個、蛋白合成関連遺伝子2個、がん関連遺伝子1個、機能未同定遺伝子6個)を同定した。その中のP450関連遺伝子について、miRNAを用いた遺伝子ノックダウン細胞を作製し検討を進め、P450酵素系がヒ素感受性を決定する因子の一つであることを確認した。 (以上平成24年度実績概要) 2.ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた遺伝子探索でこれまでに明らかとなったジフテリア毒素感受性、抗腫瘍活性物質Agelastatin感受性、あるいは細胞内コレステロール代謝輸送に関与する候補責任遺伝子群の情報検索と比較検討を行い、ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた責任遺伝子探索法の有用性を確認した。(以上平成25年度実績概要)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成24年度は順調に進展したが、平成25年度は職場環境、研究環境の悪化から実験をほとんど行うことができなかった。現在、問題を大学本部へ報告し、職場環境・研究環境改善への対応をお願いしているところである。実験が再開できる状況になり次第、以下の研究に取り組む予定である。 1.ヒ素感受性関連遺伝子群のスクリーニングと同定に関して:(1)三酸化ヒ素感受性低下細胞34クローンの解析から、トラップされた遺伝子(ヒ素感受性関連候補遺伝子)11個を明らかにすることができた。(2)上記で明らかとなったヒ素感受性関連候補遺伝子の一つ、P450関連遺伝子の機能解析から、P450酵素系がヒ素感受性決定要因の一つであることを確認することができた。また、ヒ素誘導性アポトーシスにP450酵素系からの活性酸素の関与が推定された。P450活性は様々な薬毒物、化学物質等による誘導も受け、また大きな個人差があることが知られている。今回の結果は、ヒ素感受性の個人差、あるいは他の様々な環境有害物質との複合影響を理解する上での大きな知見であると考える。(以上平成24年度) 2.ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた遺伝子探索法の確立に関して:これまでに明らかとなったジフテリア毒素感受性、抗腫瘍活性物質Agelastatin感受性、あるいは細胞内コレステロール代謝輸送に関与する候補責任遺伝子群の情報検索結果とそれらの比較検討から、ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた方法の、機能トキシコゲノミクス的遺伝子探索法としての有用性を確認した。(以上平成25年度)。
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Strategy for Future Research Activity |
職場環境、研究環境の悪化から平成25年度は実験をほとんど行うことができなかった。現在、問題を大学本部へも報告し、職場環境・研究環境の改善をお願いしているところである。実験が再開できる状況になり次第、以下の研究に取り組む予定である。 1.三酸化ヒ素感受性低下変異細胞の単離:更に、ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーからの三酸化ヒ素感受性低下細胞の単離を試みる。 2.トラップされた遺伝子が「真の責任遺伝子」であることの証明:遺伝子ノックダウンあるいは遺伝子導入により、トラップされた遺伝子が「真の責任遺伝子」であることを順次確認する。① miRNAを用いた遺伝子ノックダウンによる正常細胞のヒ素感受性低下の確認:Tetracyclin Repressorを用いた遺伝子スイッチでmiRNAの発現をON/OFFする薬剤誘導性遺伝子ノックダウン細胞株を樹立する。このことで、目的遺伝子のノックダウンと正常状態を1つのクローンで解析することが可能となる。目的遺伝子のノックダウンによるヒ素感受性の低下を確認することで、「真の責任遺伝子」であることを証明する。② ヒ素感受性低下変異細胞への野生型正常cDNAの遺伝子導入によるヒ素感受性回復の確認:ヒ素感受性低下変異細胞での、Tetracyclin Repressor 遺伝子スイッチを用いた正常cDNA発現細胞株を樹立する。正常cDNA発現によるヒ素感受性の回復を確認することで、「真の責任遺伝子」であることを証明する。 3.ヒ素感受性関連遺伝子群の情報を手がかりに、ヒ素の毒性発現機構及びヒ素に対する生体防御機構の解明を目指す。更に、ヒ素に関する本研究を推し進めることで、他の様々な環境有害物質の標的分子や感受性に関与する遺伝子群、生体防御機構の解明を可能とする新たなゲノム機能学的、機能トキシコゲノミクス的遺伝子探索法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
職場環境、研究環境の悪化から平成25年度は実験をほとんど行うことができなかった。現在、問題を大学本部へも報告し、職場環境・研究環境の改善への対応を待っているところである。実験が再開できる状況になり次第、以下の研究に取り組む予定である。 1.更なる三酸化ヒ素感受性低下変異細胞の単離。2.遺伝子ノックダウンあるいは遺伝子導入によるトラップされた遺伝子が「真の責任遺伝子」であることの証明。① miRNAを用いた遺伝子ノックダウンによる正常細胞のヒ素感受性低下の確認。目的遺伝子のノックダウンによるヒ素感受性の低下を確認することで、「真の責任遺伝子」であることを証明する。② ヒ素感受性低下変異細胞への野生型正常cDNAの遺伝子導入によるヒ素感受性回復の確認による「真の責任遺伝子」であることの証明。3.ヒ素感受性関連遺伝子群の情報を手がかりにしたヒ素の毒性発現機構及びヒ素に対する生体防御機構の解明。更に、ヒ素に関する本研究を推し進めることで、他の様々な環境有害物質・薬毒物の標的分子や感受性に関与する遺伝子群、生体防御機構の解明を可能とする新たなゲノム機能学的、機能トキシコゲノミクス的遺伝子探索法の確立。
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Research Products
(3 results)