2012 Fiscal Year Research-status Report
NOGマウスを用いた画期的なヒト白血病モデルの開発
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24659487
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石井 直人 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60291267)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 白血病 / MLLキメラ遺伝子 / 動物モデル |
Research Abstract |
ヒト造血幹細胞を超免疫不全マウスであるNOGマウスに移植すると、従来は全く不可能であったヒトリンパ球の正常発生・分化がマウス内で観察できる。そこで、移植する造血幹細胞にあらかじめ白血病癌遺伝子を導入して移植すれば、ヒト造血幹細胞の異常な分化、すなわち癌化をもNOGマウス内で再現できるのではないかと考えた。本研究では、乳児白血病関連キメラ遺伝子であるMLL-AF10と、MLL白血病の30%以上で検出される活性化型rasとを同時に造血幹細胞に導入し、NOGマウスに移植した。その際に、MLL-AF10発現細胞にはEGFPが、活性化型K-ras発現細胞はVenusがそれぞれマーカーとして発現するベクターを使用した。移植されたヒト造血幹細胞由来のヒト血球細胞は移植後4週頃より出現するので、その時期より経時的に血球細胞をフローサイトメトリー法により解析したところ、移植後6週後から脾臓と骨髄に出現する異型性の強い単球系細胞が出現した。さらに、サザンブロット法を用いて異型細胞のクローナリティー解析を行ったところ、全てがモノクローナルあるいはダイクローナルであること分かった。すなわち、MLL-AF10白血病の一亜型であるヒト急性単球性白血病(FAB分類M5)をマウス内に発症させることに成功した。このような、ヒト正常細胞から癌を生体内で発症させる妥当なモデルは、ほとんど存在しない。また、MLL-AF10あるいはK-rasの単独導入では白血病の発症が全く認められず、白血病細胞は全て両者(EGFPとVenus)を同時に発現していることが確認された。従って、本研究で確立したモデルは白血病の癌遺伝子2ヒットモデルとしても極めて有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要に記した通り、モデルの確立までは計画通りに進行した。さらに、その発症機序、特に2段階発症の分子機序の解析を開始したところである。従って、計画はほぼ順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
MLLキメラ遺伝子を用いた白血病発症モデルとその解析については計画が順調なので、当初の計画通りに遂行する。他方、当初予定していた、活性化Notch1遺伝子を用いたT細胞白血病発症機構の解析についてはほとんど手つかずであった。そのため、今後は、活性化Notch1遺伝子を用いた研究についても実施していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初計画していた、活性化Notch1遺伝子を用いたT細胞白血病発症機構の解析を延期したために生じたものであり、平成25年度は、活性化Notch1遺伝子を用いたT細胞白血病発症機構の解析を精力的に実施するため、それに必要とする経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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