2013 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニン系とmTOR系の情報伝達の交差:自閉症モデル動物における病態とその治療
Project/Area Number |
24659490
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水口 雅 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20209753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 和隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, その他部局等, その他 (60281656)
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Keywords | 自閉症 / 結節性硬化症 / モデル動物 / トランスレーショナルリサーチ / 行動解析 / mTOR系 |
Research Abstract |
結節性硬化症(TSC)は、TSC1またはTSC2遺伝子の機能喪失変異を原因とする常染色体優性遺伝疾患で、自閉症の主要な基礎疾患のひとつである。本研究の予備実験においてTsc1+/-マウスとTsc2+/-マウスの両者が自閉症モデル動物として優れており、トランスレーショナルリサーチに最適であることが判明したため、本研究ではこれらを主たる対象とした。マウスを用いた研究によって、mammalian target of rapamycin (mTOR)の活性化がTSCにおける自閉症の原因となることが明らかとなった。ヒトではTSC2変異例に重症例および自閉症の合併例が多いが、その理由は不明である。そこで平成25年度はTsc1およびTsc2のヘテロ欠失マウスにおける自閉症様行動に差があるか、行動実験によって検討した。方法としてTsc1+/-マウスとTsc2+/-マウスを交配し、野生型マウス、Tsc1+/-マウス、Tsc2+/-マウスおよびTsc1-Tsc2ダブル欠失マウス(TscD)を得た。このマウスに対して、social interaction test(SIT)、3-chamber social approach task(3CST)、self-grooming test(SGT)を行った。ラパマイシン(5 mg/kg)は1日1回、2日間腹腔内投与し、24時間後にSIT、3CSTを行った。その結果、変異マウスはいずれも、SITにおける新奇マウスへの探索時間減少、3CSTにおける後から提示したマウスへの探索時間減少、SGTにおけるself-groomingの増加を示した。3CSTで新奇マウスとケージメートを同時に提示すると、Tsc1+/-マウスは新奇マウスへの選択性が低下し、Tsc2+/-およびTscDマウスは両者を区別できなかった。SITと3CSTの異常は、ラパマイシン投与後に正常化した。以上の結果から、Tsc2+/-マウスにおいて自閉症様行動が重症化することを初めて見出した。今後の研究では、この重症化の機序を解明したい。
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