2013 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射によるiPS細胞移植治療時の腫瘍発生抑制法の開発
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24659575
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
松村 耕治 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門過程, 講師 (30272610)
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Keywords | iPS細胞 / 分化誘導 / 放射線照射 / 心筋 / フローサイトメーター / 温熱 / オレイン酸 / 5FU |
Research Abstract |
前年度までのマウスiPS細胞を用いた研究に加え、ヒトiPS細胞を利用した細胞移植治療時の腫瘍発生抑制法の開発に着手した。未分化ヒトiPS細胞の放射線感受性は、そのコロニー形成能の阻害程度により12Gy以上でほぼ死滅した。次に、ヒトiPS細胞の分化誘導は最初、胚様体(embryoid body: EB)を形成して特異的な液性因子を利用せずに心筋、神経へ誘導した後に放射線照射を行った。この際、誘導は様々な分化細胞へ移行し、またその組織の割合の再現性に乏しい問題点があった。 そこで、ヒトiPS細胞より定方位分化誘導法として、サイトカイン等を利用して心筋あるいは神経細胞へ特異的に分化誘導を行うことに成功した(これは、京都大学iPS細胞研究所の実技トレーニングに参加、指導を受けたことで達成できた)。マウスの実験と同様に、分化誘導した心筋細胞、神経細胞に対して、残存した分化抵抗性の未分化iPS細胞の割合を未分化細胞マーカーを用いてフローサイトメーターで測定した。さらに、未分化細胞を特異的に除去するために放射線照射に加え、未分化幹細胞の増殖を抑制するオレイン酸合成酵素 (SCD1: stearoyl-CoA 9-desaturase1)の阻害薬、癌治療に有効な温熱、抗癌剤(5FU)等を作用させて免疫不全マウス(SCIDマウス)の精巣へ移植して、腫瘍発生が制御できるか否かの検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、マウスiPS細胞の検討からヒトiPS細胞の検討へ移行する年であり、ヒトのiPS細胞の培養から分化誘導まで実験レベルではほぼ完成した。アクチビンやBMP4等を利用したことによる。分化誘導細胞に対して、残存する未分化細胞の割合や放射線などの未分化細胞へ影響を与える処置を行った後の効果をフローサイトメーターで確認した。更に、SCIDマウスの精巣へ移植して放射線照射が腫瘍発生の抑制効果があるか否か検討中である。ただ、SCIDマウスはヒト細胞に対するマクロファージなどの機能が残っているためか奇形腫のサイズはマウスiPS細胞に比べると小さいため、分化誘導細胞の移植においても造腫瘍能の低下が懸念される。本年度は、薬剤(SCDI, 5FU)、温熱も新たな腫瘍抑制作用の候補に加わり、特に5FUが放射線照射と類似した腫瘍抑制効果が認められつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射による分化誘導細胞の腫瘍抑制効果を、抗癌剤5FU、温熱等で同様に検索する。現在までこれらの処置はin vitroで特異的に未分化細胞を除去できることが実験で確認されたので、マウスへの移植実験を継続中である。腫瘍の発生源と考えられる未分化細胞の検出は初期細胞発生のマーカーであるTRA-1-60、Nanogなどで行っているが、最近報告されたレクチンBC2LCLも加える。また、SCIDマウスに加えヒト化マウスにより適合するNOD-SCIDマウスの利用も考える。本研究で利用しているヒトiPS細胞は京都大より提供された201B7株で、心筋や神経細胞などの分化誘導に反応しやすい株といわれている。新たなヒトiPS細胞を作成して本研究に利用する。樹立するiPS細胞は201B7株ほど分化誘導に反応しない株と予想され、移植後の腫瘍発生頻度は高いと考えられる。この新たに樹立した細胞に対して放射線照射などを行い201B7株と比較検討を行う。さらに、分化誘導する際に残存する未分化細胞をセルソーターで分取して遺伝子解析を行う。すなわち、RNA抽出後マクロアレイを利用した網羅的解析を行い、分化誘導前の未分化細胞の遺伝子発現と比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒトiPS細胞の分化誘導は、マウスiPS細胞と比較してより多くの時間が必要で(最低30日)、しかも、分化誘導した細胞数は少ない。したがって、移植すべき細胞も少ないため必然的にマウス匹数も少なくなった。抗体を利用した測定の頻度も減ったため、試薬類の購入が予定より少なくなった事が理由の一つである。また、網羅的解析などの遺伝子検索もまだ行っていないため繰り越された。 実験に必要な分化誘導細胞を増やすために、サイトカイン類(アクチビン、BMP、B27)の追加や蛍光標識抗体、蛍光標識レクチンさらに遺伝子検索のため核酸抽出、標識、マイクロアレイ関連、PCR用の試薬を利用する。NOD-SCIDマウスの購入費用にも充てる。また、最終年度であり、論文投稿料の費用も発生する。
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Research Products
(7 results)