2012 Fiscal Year Research-status Report
グライコブロッティング法を用いた糖尿病網膜症関連糖鎖の探索
Project/Area Number |
24659754
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石田 晋 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10245558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 紳一郎 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (00183898)
天野 麻穂 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 特任助教 (80365808)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 糖鎖 / グライコブロッティング |
Research Abstract |
糖尿病網膜症は壮年期における主要な中途失明原因であり、本症の視力予後改善は眼科学分野の責務である。そのため、糖尿病網膜症に対する既存治療法の改良に加えて、新規分子標的治療の開発が当該分野の最重要課題となっている。近年、核酸、蛋白質に続く第三の鎖状生命分子として糖鎖分子が注目されているが、糖鎖構造の変化が蛋白機能に影響を与えることはよく知られており、糖尿病における疾患関連糖鎖を発見することはその病態のさらなる理解や新しい治療標的分子の発見につながる可能性がある。本研究の目的は、糖尿病網膜症患者の血漿および眼内液を対象として糖尿病あるいは糖尿病網膜症関連糖鎖の解析をおこない、新規バイオマーカーの探索ならびにそのデータベース化に挑戦することである。 今年度は、糖尿病および非糖尿病患者より検体(血液および硝子体液)を各20例採取し、保管した。また、同検体の一部を用いてグライコブロッティング法による糖鎖解析をおこなった。糖鎖は大別して1)糖脂質糖鎖、2)N結合型糖鎖、3)O結合型糖鎖の三種類に分類されるが、特によく研究の進んでいるN結合型糖鎖の解析を進めた。結果として、ヒト血漿中では66種類の糖鎖が同定でき、その中で定量性が認められたものは47種類であった。その47種類について糖尿病群と非糖尿病群でその発現量を比較したところ、非糖尿病群に比べて糖尿病群の血漿中で発現量に増加傾向のある糖鎖が5種類同定された。また、硝子体中の糖鎖解析は非糖尿病群6例が現時点で終了しているが、硝子体中には平均で約20種類の糖鎖が存在することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病および非糖尿病患者より検体(血液および硝子体液)を各20例採取し、保管した。また、同検体において血液検体30例(糖尿病11例、非糖尿病19例)、硝子体検体6例(糖尿病0例、非糖尿病6例)を用いてグライコブロッティング法による糖鎖解析をおこなった。 結果として、ヒト血漿中では66種類の糖鎖が同定でき、その中で定量性が認められたものは47種類であった。その47種類について糖尿病群と非糖尿病群でその発現量を比較したところ、非糖尿病群に比べて糖尿病群の血漿中で発現量に増加傾向のある糖鎖が5種類同定された。また、硝子体中の糖鎖解析は非糖尿病群6例が現時点で終了しているが、硝子体中には平均で約20種類の糖鎖が存在することが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒト硝子体に特異的に検出された2種類の糖鎖に対してMS/MS解析をおこない、これらの糖鎖が他糖鎖由来の副産物でないことを確認する。また、今後も検体採取を継続して解析数を増やし、新規バイオマーカーの探索ならびにそのデータベース化を目指す。 また、糖尿病発症に至る経時的な糖鎖修飾の変化を観察するために、糖尿病モデル動物(STZ誘発糖尿病網膜症マウス)における血液および眼組織検体を用いて網羅的糖鎖解析をおこなう。C57BL/6JマウスにSTZを腹腔内投与し、糖尿病を発病させ、経時的に血糖値、体重、臨床所見と合わせて糖鎖解析をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は次年度使用額が発生したが、これは糖鎖解析が煩雑な工程を経ておこなわれるために予定していた解析数に到達しなかったためである。次年度使用額は、今年度と同様に糖尿病および非糖尿病患者より採取される、血液検体および硝子体液検体の糖鎖解析に使用される。
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