2012 Fiscal Year Research-status Report
眼内薬物治療の飛躍的効果向上の研究:自然免疫の関与について
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24659765
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
坂本 泰二 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10235179)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 薬物送達 / 網膜剥離 / 薬物治療 / 細胞増殖 |
Research Abstract |
トリアムシノロン硝子体注射(IVTA)が、網膜疾患治療として行われ、有効性は見られたものの、IVTAを行った直後、無菌性内眼炎が起こることが知られるようになってきた。これは眼内薬物送達における大きな問題である。原因としては、保存剤が主因であろうと考えられたが、研究を重ねるうちに、保存剤の毒性のみが原因と仮定すると説明できないケースがあることが分かってきた。そこで、我々はTAの結晶構造そのものが眼内炎症を引き起こすと考えて研究を始めた。無菌性眼内炎患者の前房水のサイトカインについて調べた結果、インターロイキン(IL)-6とIL-8が多量に含まれていた。そこで、トリアムシノロン粒子のもつ結晶構造が原因と考えた。そこでボイデンチャンバーを用いた。上培養皿と下培養皿は、透過性のある膜で遮られている。下培養皿に各種細胞を培養し、その上に直接TA顆粒を添加する。すると、培養細胞は顆粒の機械的刺激を直接受ける。一方、上培養皿にTA顆粒を入れると、液相濃度はTA顆粒を培養細胞上に直接添加した場合と同じであるが、顆粒は細胞と直接接することはないので、機械的刺激は受けない。その比較を行った。その結果、TA顆粒は細胞と接することで、細胞からIL6/IL-8を有意に分泌させた。一方、TAと同じ結晶構造を持つがステロイド作用を示さない11-deoxycortisolも同様の効果を示した。つまり、結晶構造を持つ顆粒が細胞に接すると、炎症を惹起することが分かった。以上の実験から、粒子状構造物は細胞に炎症を引き起こし、それが無菌性内眼炎をおこすという新しい概念を確立するに至った。現在、ナノ粒子などを使って眼内に薬物送達を行う研究がされているが、その際にこの概念は重要になるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
眼内薬物送達の効果的な達成のためには、薬物送達効率の問題も重要であるが、実は薬物送達時の妨害因子(例えば炎症など)をいかに抑制するかが重要である。我々は、臨床眼科学で現在急速に発展している眼内注射の問題に取り組んだ。その結果、新たな病因を確立して、論文発表するに至った。これは、極めて斬新なアイデアであり、今後検討されると思われるが、新たな問題提議ができたことは大きな成果である。 論文 Otsuka H, Kawano H, Sonoda S, Nakamura M, Sakamoto T. Particle-induced endophthalmitis: Possible mechanisms of sterile endophthalmitis after intravitreal triamcinolone. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013 Mar 11;54(3):1758-66. doi: 10.1167/iovs.12-11247.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、特に細胞死に伴い崩壊組織・細胞から細胞外へ放出される分子DAMPsに着目して研究する。DAMPsはRAGEや一部のTLRのリガンドとなることで、炎症・組織修復などに関連することが知られ、炎症関連自然免疫に関する最近のトピックスである。昨年までの研究で「細胞死と生体反応」に注目して解析を行っており、眼科領域におけるDAMPsに関する研究に取り組んできた。具体的には、代表的なDAMPsであるHMGB1(high mobility group box 1)について報告した(Arimura N, Sakamoto T, et al, 2008, Graefes;Arimura N, Sakamoto T, et al, 2009, Lab Invest, Terasaki et al. PlosOne submitted)。それらの結果から、糖尿病網膜症、黄斑変性などの通常の網膜病変でも自然免疫が活発に働いており、その点を明らかにせずに薬物治療を行っても、期待効果は得られないと予想されている。そこで、その点を明らかにする。各種網膜硝子体疾患の生体標本(硝子体サンプル等)におけるDAMPs/PAMPsの解析を行い、背景因子との比較により、病態への寄与の大きい分子を同定する。特に、生物学的製剤などで治療後のサンプルについて注意する。代表的PAMPsであるLPS(Lipopolysaccharide)についての予備実験は終わっており、細胞内シグナルの解析も順調に推移しており、2013年後半には結果を得る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特に大型機器や、備品を購入する予定はない。細胞実験、動物実験や薬剤費に使用する予定である。また、最初に申告したように、研究内容を発表するための論文代、英文校正費、学会出張経費に使用する予定である。
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Research Products
(11 results)