2012 Fiscal Year Research-status Report
対面積効果の高い皮膚移植法(微細立方体皮膚移植法)の開発に関する研究
Project/Area Number |
24659778
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
漆舘 聡志 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80321967)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 克憲 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00271809)
三上 誠 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30396402)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 皮膚移植術 / 熱傷 / 皮膚潰瘍 / 創傷治癒 |
Research Abstract |
H24年度の実験計画に従ってラット背部の皮膚欠損創に対して微細立方体皮膚移植を施行した。ラット背部に作製した4×4cmの皮膚欠損に対して約1mm四方の立方体皮膚移植を施行し、フィルムドレッシングによる湿潤環境での術後管理を行った。移植皮膚片はおおむね生着し、移植皮膚片ならびに周囲からの上皮化と瘢痕拘縮により術後2週間程度で創閉鎖が得られた。経時的に病理組織学的検索を行ったところ、術後7日目頃から移植皮膚片からの上皮化が見られはじめており、本法でも比較的早期から生着が得られる可能性が示唆された。また個々の移植皮膚片を観察すると、表皮が下層に位置した移植皮膚片からも上皮化も観察されており、立方体のどの面が下層になろうとも生着が得られる可能性が示唆された。しかし一方でこの実験系では瘢痕拘縮が高度のため、上皮化の速度を比較することが困難であることが判明した。 そこで上皮化の速度の比較ではなく、表皮を表として移植した群と(以下表群)、表皮を裏にして移植した群(以下裏群)とで生着に差があるかどうか比較実験を行うこととした。2mm四方の移植皮膚片を作製し、ラット背部の皮膚欠損創に表群と裏群を作製し経時的に病理組織を採取した。移植皮膚片から上皮化が始まる時期を生着の目安として比較検討を行った。その結果いずれの群でも術後5日目頃より移植皮膚片から周囲への上皮化が始まることが判明し、生着には両者に差が無いことが示唆された。しかしながら裏群では底部から表層まで遠回りして上皮化していくため上皮化完了までの期間は表群に比し長IXなる可能性が示唆された。またこの経過中の病理組織の基底層をp63を用いて染色したところ表皮の断端からの上皮化の他に真皮に存在する皮膚付属器からの上皮化とみられる部位も観察され、微細立方体皮膚移植では、1つの移植皮膚片から複数の上皮化起点が得られる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微細立方体皮膚移植にて移植皮膚片の生着が確認できた。また、立方体である本法の移植皮膚片のどの面が移植床に接しているかにかかわらずに生着することが確認された。これにより微細立方体皮膚移植法で生着が得られるかどうかを検証する実験目的が達成された。また移植後のドレッシングとしてフィルムドレッシングによる湿潤環境での管理が有効であることが確認された。これにより微細立方体皮膚移植術の管理として湿潤環境での管理が有効であるかどうかを検証する実験目的が達成された。 本研究の実験系が生着確認においては十分な実験系であるが、上皮化や創治癒の速度を比較するには瘢痕拘縮を抑制しきれないことが判明した。このため瘢痕拘縮を抑制する実験系の開発が新たな課題となった。さらにはこのため上皮化の速度を比較する必要のあるフィブリン糊を用いた実験を施行することができなかった。 皮膚の細分化は採皮用カミソリによる手作業により可能であったが、手技が煩雑で機械化が必要であると考えられた。現在企業との共同開発のための準備をすすめている段階である。 以上よりH24年度の実験計画に対する達成度はおおむね達成できているものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H24年度の実験により、微細立方体皮膚移植術が湿潤環境にて生着が得られることが確認された。今後生着により有利に働く条件や、速やかな上皮化が得られる管理方法などを検討していきたい。具体的には移植皮膚片の大きさの検討、移植後の被覆方法の検討、b-FGFの影響の検討、人工真皮同時移植の影響などである。これを比較するためにはラットの背部の瘢痕拘縮の影響を排除する必要がある。しかしながらH24年度の実験においてラットの創部瘢痕拘縮が顕著であり、これを抑制しきれていない。このためまずは瘢痕拘縮を抑制して創治癒を比較できる潰瘍モデルを作製することが必要である。具体的には潰瘍にフレームを固定して瘢痕拘縮を抑制する予定である。瘢痕拘縮の抑制ができた時点で、ラット背部に同条件の皮膚潰瘍を2カ所作成して、前述の比較実験を進め、より効率的な移植方法を確立していきたいと考えている。 またH24年度実験で示唆された立方体移植における皮膚付属器からの上皮化についても検討したい。もし表皮からだけでなく皮膚付属器からも上皮化が見られるのであれば上皮化の起点として微細立方体皮膚移植術が非常に有効であることが証明できる。 更には固定法としてフィブリン糊での固定実験を行い、フィブリン糊固定の有用性を検証する予定である。 また本大学倫理委員会の承認のもと臨床において本法の有用性につき検討を開始したい。まずは皮膚採皮部位の犠牲の少ない褥瘡潰瘍のポケット部分から採皮した微細立方体皮膚移植術を褥瘡潰瘍に施行し、その有用性を検証したい。 更には皮膚細分化の器械化のため企業との討論を重ねて具体化、製品化を進めていきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
|