2012 Fiscal Year Research-status Report
メッシュレス解析(SPH法)による義歯と周囲軟組織との力学的関係の解明
Project/Area Number |
24659854
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
水口 俊介 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30219688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 佑介 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10451957)
飼馬 祥頼 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤講師 (30401326)
金澤 学 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80431922)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 義歯周囲軟組織 / 数値シミュレーション / 3次元モデル / メッシュレス解析 / SPH法 / インプラントオーバーデンチャー |
Research Abstract |
本研究は、義歯装着によって生じる顔面形態の変化や、口腔機能時の義歯周囲軟組織の動きが義歯形態に及ぼす影響を数値シミュレーションの手法により明らかにするため,無歯顎患者の顎堤,周囲軟組織の形態を数値解析可能な3次元モデルを構築し,新たな数値解析の手法であるメッシュレス解析すなわちSPH法により義歯との力学的関係を解析することを目的とする。本研究で用いるSPH解析法は従来のFEMのような多面体要素(格子)の中の節点間の関係を数式化するのではなく,要素を球形のボクセルとして扱い、そのボクセル間の力学的関係をさまざまに設定し,モデル化するもので,弱い圧力で大きく変形する軟組織の解析のような大変形解析,唾液による軟組織と義歯との間に生じるような滑りの問題を解析するには,FEMより優れていると考えられる。本法は界面の位相まで変化するような超大変形解析にも適用できるため、口腔領域におけるさまざまな数値解析(たとえば印象材や合着剤の流れ、顎口腔再建後の嚥下等の口腔機能のシミュレーションなど)に適用できると考えられ、そのための端緒となる研究と位置付けられる。 平成24年度は、解析の詳細を決定するため、インプラントオーバーデンチャー希望の患者を被験者とし、CT データを取得し、粒子モデル生成ソフトにて顎堤、周囲軟組織と義歯のSPH法による解析モデルを作製し、SPH法による解析を試行し解析法の精度を検討した。平成25年度は、さまざまな顎間関係、顎堤の症例にてモデルの生成、解析の詳細を決定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析の詳細を決定するため、インプラントオーバーデンチャー希望の患者を被験者とし、CT データを取得した。2次元スライスCT画像上で, 金属のアーチファクト等により組織の境界が不明瞭な部分について,Photoshopにより境界を設定した.各画像の組織分類についてはpixel毎に輝度の閾値を併用して骨, 筋, 軟組織, 皮膚の自動判別を行った.実際の口腔内の筋肉は, 人体の中でも特に細かく複雑に入り組んでいる. またCTの分解能からも, 筋肉と軟組織を明瞭に区別して撮影することにも限界がある. よって輝度の閾値のみで組織判定を行うと,筋肉と軟組織が数pixel毎に入り交った状態に判定され, 本来一塊の組織として成り立っている筋肉の連続性が断たれてしまう. このため, 連続性が断たれている部分についてはある程度補完するように自動処理を行った. 解析モデルの材料定数はヤング率、ポアソン係数を、骨では8.63×102, 0.36,筋では6.89×10-3,0.48,軟組織2.31×10-1, 0.48,皮膚8.67×10-2, 0.48 と設定し, 各スライス画像を3次元方向に積み重ね、口腔内モデルとした. 全粒子数は16,988,909となった.
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Strategy for Future Research Activity |
全部床義歯に加わる力をすべて含むには,無歯顎顎堤とそれに付着する筋,その他の軟組織全体をモデル化しなければならないが,一気にそこまでの巨大なモデルを製作し検証するのは実際的でない。顎堤と周囲軟組織全体を含めたモデルは粒子数が大きくなりすぎて解析には不適である。したがって 無歯顎顎堤全体を左右頬側,前歯部等の部位ごと,あるいはさらに頬舌側に分割するなどの,適切な大きさのモデル構築のための手法を検索しなければならない。またSPH法の解析ソフトに関しても改良しなければならない点が見つかっている、材料定数の増減によって、解析対象物が非現実な変形を示すときがあるため、解析の確実性を確保するためには、それらの事象は発生することのない材料定数の変更規則を発見しなければならない。また解析の効率を考え、さらなるPCの導入を考慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.解析のためのPCの追加 現在の解析ペースは1パターンの解析に3日間の計算が必要である。より多くのモデルや定数の検討のためには並列で稼働させる必要がある。 2.定数の確定のためには各種の材料の実測が必要である。現有のクリプメータや万能試験機にアプリケーションを追加し高機能化する。 3.研究報告のための学会発表および論文作成を行う。
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