2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659891
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
長塚 仁 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻極 秀次 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70335628)
玉村 亮 日本大学, 歯学部, 助教 (00403494)
片瀬 直樹 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30566071)
山近 英樹 岡山大学, 大学病院, 講師 (10294422)
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Keywords | 象牙芽細胞 / TCP / 象牙質 |
Research Abstract |
現在のインプラントは、直接顎骨骨組織に固定して使用されるため、骨吸収やゆるみが生じる問題点がある。本研究では、ハニカムTCPと象牙芽細胞株を用いて象牙質、セメント質を有する完全な歯周組織構築が可能な次世代歯周組織再生型インプラントの開発を目的としている。 本年度研究においてはハニカムTCPの様々な形状、細管の内径等が生体に及ぼす影響について検討した。細胞の培養はGFPラットから樹立した象牙芽細胞を用いた。細胞は石灰化培地にて処理を行い、マトリゲルと混和した後、1200度で焼成したハニカムTCP孔内に充填しSCIDマウス大腿部筋中に移植した。移植後3週目に摘出、組織学的解析を行った。その結果、孔径75、300、500μmの全てのハニカムTCP孔端およびTCP外面周囲に象牙質様硬組織形成が認められた。しかし孔内部には粘液様の間質を伴った紡錘形細胞侵入が認められるのみで、硬組織の形成は認められなかった。各ハニカムTCPの孔径の違いによる硬組織形成様式に大きな差は認められず、これらのサイズの孔径では細胞に及ぼす影響は極めて限定的であると考えられた。細胞の極性に焦点を絞り観察してみると、ハニカムTCP表面に形成した象牙質様硬組織では、部分的ではあるがTCP細粒の極小さな間隙に細胞突起を伸ばしている細胞が規則正しく配列していた。またこれらの細胞の核はハニカムTCPと接触した反対側に局在しており、極性を有する細胞分化が生じたことを示唆する像が認められた。これらの組織学的所見はハニカムTCPに骨組織を誘導した際には観察されず、象牙芽細胞に特異的な性格であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は象牙質微小環境を模倣したハニカムTCPの作製および象牙芽細胞培養条件の検討と、極性を有する象牙質の誘導であった。実験結果からハニカムTCPの孔径が及ぼす影響は極めて限定的ではあったが、ハニカムTCPを用いて象牙質様の硬組織形成に成功している。またハニカムTCP表面に形成された象牙質様硬組織には、極性を有する象牙芽細胞が観察されたことから本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実験結果からハニカムTCPの孔径が及ぼす影響は極めて限定的ではあった。しかしハニカムTCP表面に形成された象牙質様硬組織には、極性を有する象牙芽細胞が観察された。今後の研究の推進方針としては、極性を有する象牙芽細胞の詳細な解析を行う。また効率的な象牙質誘導、形成した象牙質様組織と骨組織との反応性ついて検討するため、骨、象牙質様組織の境界にどのような組織が形成されるかについて検討する。 分化誘導した象牙芽細胞の解析は、象牙質関連遺伝子の発現について検討を行うため、オステポンチン、DSP等、骨歯牙関連蛋白に対する各種抗体を用いた免疫組織化学的解析を行う。象牙質様組織と骨組織との反応性実験では、ハニカムTCP孔内にマトリゲルと共に石灰化誘導を行った象牙芽細胞を埋入し、SCIDマウス骨組織中に移植する。使用するハニカムTCPは前年度研究結果から孔内部にまで硬組織形成が認められなかったことから、長さ1mmに形成したハニカムTCPを使用する。またハニカムTCP以外に多孔質シート上で培養した象牙芽細胞の移植を行う。移植した細胞は4週後に摘出、組織学的解析および検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ハニカムTCP表面に形成された象牙質様硬組織には、TCPの間隙に象牙芽細胞の突起が観察され、極性を有する象牙芽細胞が観察された。極性を有する細胞は限局的かつTCP表面に存在しているため、細胞の回収は困難と考えられた。そのため当初計画していた遺伝子および蛋白質発現に関する研究を変更し、次年度計画として極性の認められた象牙芽細胞の免疫組織化学的解析に変更した。以上の理由により、遺伝子発現および蛋白質発現解析に関連した経費が次年度へ繰り越されることとなった。 当該年度の設備・備品の申請はない。消耗品に関しては実験動物、培養用試薬、免疫組織化学関連試薬等、各種抗体を購入するために経費が必要である。旅費に関しては硬組織再生生物学会学術大会、歯科基礎医学会、日本口腔科学会等にて研究成果発表予定のため申請した。謝金・その他に関しては英文論文2編の発表予定である。この為の論文投稿料(論文掲載費)を申請した。
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