2012 Fiscal Year Research-status Report
臨床看護ケアの質向上をめざし臨床と大学が協働する看護研究支援システムの開発
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24659959
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
内布 敦子 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (20232861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂下 玲子 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (40221999)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 看護研究 / 臨床看護師 / 研究支援 / 研究シーズ / 支援システム |
Research Abstract |
平成24年度は臨床看護師の研究支援ニーズを明らかにするために次の2つの研究を行った。 ①臨床看護師が行った学会発表演題の傾向分析 看護系学会の中から会員が1,000人以上の比較的大規模な20学会を取り上げ、平成24年度に企画された学会での4,289件の発表演題を分析した。臨床看護師が筆頭研究者である研究は学会の性質により異なるが全体の45.4%であった。演題の内容をテキストマイニングによって分析したところ、「患者」「看護師」という2語の頻出度が高いことが確認された。「患者」の共起語としては「受ける」「家族」「検討」が、「看護師」の共起語としては「要因」「新人」「影響」が上位に挙げられた。共起語のデータから臨床看護師による研究は臨床上の患者の健康問題やキャリア開発を課題にしているものが多いことが推測された。一方大学研究者が発表グループに入っている場合の共起語は「評価」「効果」「妥当性」などの共起語が上位に見られ、実証研究に取り組んでいることが推測された。 ②看護師がかかえる臨床看護研究遂行上の困難について 3つの中規模病院において、臨床看護研究の経験がある看護師3グル―プ、および研究指導の役割を担っている看護師3グループ(合計6グループ、26名)に対して、臨床看護研究を遂行する上でどのような困難があるか、フォーカスグループインタビューを行った。その結果、研究法をはじめとする訓練がないまま、看護師が研究課題に取り組んでいるという実態が明らかとなった。「研究テーマの設定」という初めのステップから困難を抱えており、「研究計画の立て方がわからない」等、研究の全過程において11のカテゴリーが抽出された。さらにこれらの困難を取りまく状況として時間不足や文献へのアクセスが難しいことなどが挙げられ、研究の困難をより強めているという構造が明確となった。他に臨床看護現場の研究seedsが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標1)臨床における看護研究支援ニーズの明確化(達成):2つの調査研究によって、臨床看護師は研究課題を決める初期の段階から結果をまとめて学会に発表し論文として完成するまでの全過程で困難を抱えており、そのことが看護師達の大きな不全感につながっており、研究のすべての段階で支援ニーズが存在していることが明確となった。インタビュー結果から今後の研究seedsも抽出することができた。さらに学会発表演題の共起語の分析によって、臨床看護師の研究課題の傾向を知ることができた。 目標2)支援メニューの精錬(達成):調査の結果、臨床現場における看護ケアの質向上を中心に研究seedsがあることが明らかになり、さらに明らかになった研究遂行上の困難カテゴリーに基づき支援メニュー案を作成し、その精錬を行った。その結果、臨床サイドで生じた研究テーマに結びつく疑問を臨床研究として成り立つようにアレンジし、大きくはretrospectiveの調査研究、質改善の準実験的研究の2つパターンで成果を狙うよう、セミナーをシリーズで企画するなど次年度に実現できる支援メニューを計画することができた。学会発表件数を評価指標として次年度に支援を行う。 目標3)支援メニューの作成と提供システムの構築(枠組み構築について達成): 支援提供システムを構築し次のような項目をホームページに掲載し提供した。①研究の基本的な知識(リンクを含む) ②研究班員の専門性を活用した支援メニューの提供 ③セミナー等の情報提供 HPのURLはhttp://kango-kenkyu.org/ である。
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Strategy for Future Research Activity |
【1.次年度計画概要】臨床看護研究支援セミナーを開催し、参加者の研究課題をResearch Questionを次の2つの研究スタイルに集約し研究支援を行う。(i)医療記録などの既存の資料をもとにretrospectiveに検討し、変数間の関連を探索する初歩的研究。(ii)比較的単純な看護ケアの改善策を実施しその効果を評価する改善研究。 【2.次年度具体的実施内容】①臨床看護研究支援セミナーの開催:HPに提示した支援メニューを広告し、順次実施していく。具体的には兵庫県内の病院施設を中心に広告し、連続したセミナーを企画し、セミナーに参加することにより研究課題を達成できるように研究の各段階で支援する。<セミナースケジュール>1回目(6月頃)研究テーマをみつける/文献を読む-課題:文献検索(検索支援行う)2回目(7月)研究計画書の書き方-課題:データ収集 3回目(9月または10月)データ分析(含むEXCEL、簡単な統計)-課題:データ分析 4回目(10月または11月)報告書の書き方 ②セミナーの評価:参加者に対して、セミナー内容の理解度、セミナー内容への満足度、参加のしやすさ、支援システムへの期待について質問紙による調査や状況により数名単位のフォーカスグループインタビューを行う。さらに参加者の研究遂行状況、学会等への発表件数等を指標として、支援システムの効果について評価を行う。 【3.HPの充実による知識の普及】HPのコンテンツを充実し、研究支援を受ける看護師だけでなく、一般の看護師が研究に関する知識を得られるように内容を精錬し、情報提供によって支援する。研究支援依頼を受け研究班内の各研究方法に精通した専門家(実験研究法、調査研究法、量的研究法、質的研究法等)が支援を行うシステムを検討する 。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臨床看護研究支援のためのセミナーを企画し、実施、評価を行うことで、臨床看護支援システムの構築、設立に向けた土台を作る。次のように費用を使用する。 【臨床看護研究支援セミナー内容検討会議】研究班メンバーを拡充して3回程度、セミナー内容を精錬するための会議を行う。<費用>交通費、検討用文献複写収集の費用、書籍の購入を行う。 【臨床看護研究支援セミナー開催】セミナーは4回開催し、募集人員は約40名を予定している。<費用>会場費、講師謝金、資料作成費、資料印刷代、ポスター、看板等の作成、チラシ印刷代、チラシ配布郵送費、当日会場整理人件費 【臨床看護研究支援システム評価のためのアンケート実施】セミナー参加者に対して①セミナー内容に関するアンケート調査行う。<費用>アンケート作成費、調査のための郵送費、データ入力費用、分析費用、テープレコーダーデータの筆稿に使用する。 【webサイトの充実】前年度に構築したwebサイトの内容を充実させる。<費用>ページ更新委託費用、臨床看護研究支援を申し込むページ構築費用、研究班メンバーが逐次内容を変更できる管理画面の導入費用、サーバー費用、およびサーバー管理費用に使用する。 【研究報告書の作成、報告】研究報告は学術集会での発表を予定している。また2年間の研究報告書の作成を行い、今後の支援センター設立に向けて基礎データとする。<費用>学術集会参加費、学術集会参加に係る旅費、報告書印刷費、資料整理のための人件費に用いる。
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Research Products
(11 results)