2013 Fiscal Year Research-status Report
過疎高齢化が進む地域での住民参加型ポピュレーション・ヘルス・マネジメントの展開
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24659988
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森山 美知子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (80264977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貞森 拓磨 広島大学, 大学病院, 病院助教 (40437611)
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Keywords | 慢性病看護学 / 疾病管理 / ポピュレーション・ヘルス・アプローチ |
Research Abstract |
大崎上島町での地域医療、特に専門的能力を有する看護師の不足を補い、本土と島の医療機関の重複受診を減らし、可能な限り長く島で生活できるよう、地域の保健・医療機関等社会資源と協働し、対策を講じ、その介入効果を検証するために、以下を継続実施している。 1.疾病管理の必要な住民の抽出と疾病管理プログラムの実施:町保健衛生課との共同事業:平成24年度特定健診受診者からの12人について継続実施し、終了した。HbA1c:10人中9人が改善、eGFR: 2人がわずかな低下を示し、1人がG3b→G3aと改善した。収縮期血圧4人、拡張期血圧3人が改善した。平成25年度は19人が対象となり、現在5ヶ月目の介入中である。 2.町のかかりつけ医から慢性疾患管理の必要な者の紹介を受け、疾病管理プログラムを実施。平成24年度からの7人について継続実施し、終了した。CKD進行予防2人/血糖コントロール不良5人、脳梗塞後2人/狭心症2人で、HbA1c:4人改善/1人悪化、eGFR2人改善/2人悪化、BMI2人改善/3人悪化、血圧4人改善した。平成25年度は7人が紹介され、現在実施中である。 3.地域の医療連携体制の強化と遠隔からの看護師による支援。CKD地域連携パスを作成し、大崎上島町医師会の協力を得て、本土の専門医との連携を開始した。また、広島大学と患家を電話や遠隔モニタリングで結び、疾病管理を実施している。 4.町の保健衛生課と協力しての専門的人材養成。すでにある人材の活用・強化を行い、①コメディカル人材の発掘と養成、②町のコメディカルに対しての勉強会計3回を実施した。また、疾病管理プログラムを提供した対象者のうち、同意を得られた者に対しては、保健師と同行家庭訪問を行い、対象者への指導を保健師に移行した。 5.町の関係者との問題点の共有と対策会議の実施。2014年3月に第1回大崎上島町医療行政懇親会を、市長、医師会、保健衛生課、関係介護福祉職が一同に会する会議を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.現地の看護師の人材確保の困難:雇用していた町在住の看護師が年度の最初に本土への引越しで辞職した。その後、広島県ナースセンターやハローワーク、町役場等で看護師の募集をかけていたが応募がなく、雇用できなかった(平成26年度は確保できている)。現地雇用ができず、家庭訪問をすべて広島市内から車で通って実施したことから(広島大学(広島市)で雇用している看護師・保健師も短時間雇用のため、離島までの往復時間を考えると、1回の訪問で多くの対象者に面会することができず、対象者を増やすことができなかった。 2.レセプトの電算化の遅れ:町のレセプトの電算化が遅れており、レセプトを分析しての対応策がまだ実施できていない。なお、後期高齢者のレセプト分析は、広島県広域連合から許可が下りずに、止まっている。 3.疾病管理以外の事業の開始の遅れ:対象者には重症者も多く、疾病管理自体にエネルギーと時間をとられていることから、①地域の評価指標の設定、②見守りネットワークの構築、③後期高齢者への疾病・介護予防プログラムの実施に遅れがでている。また、④バーチャル病棟の構築・看取りの推進がまだ実施できていないことから、事例検討会が実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.疾病管理/慢性疾患管理プログラムの継続実施:最終年度となることから、研究終了後も本枠組みや方法論が継続的に実施されるよう、町役場と話し合い、来年度に向けた予算化を働きかける。町にある5ヵ所の診療所が持ち合わせない慢性疾患管理を専門に行う看護師/保健師を町役場に配置/外部委託し、5ヵ所の診療所と町が共通して活用できるような方向性に働きかける。診療報酬やデータヘルス計画とも連動させる。また。保健衛生課の保健師に慢性疾患管理の技術移転を行う。 2.健康指標の分析と住民への周知:レセプトデータ、健診データ、介護保険データを合わせて分析し、町の健康指標、医療費の推移と広島県全体・全国との比較を行い、これを住民に周知する。 3.後期高齢者への疾病・介護予防プログラムの実施:本プロジェクトに関わっている広島大学慢性疾患看護専門看護師コースの学生が、大崎上島町をフィールドに町役場で実習を行うことから、このプログラムや方策を開発し、実施する。 4.在宅看取りの推進:バーチャル病棟構想:平成26年度は大崎上島町も広島県在宅医療推進拠点整備事業に選定される予定である。町のスローガンを「一人暮らしでも安心して最期を迎えられる町」と設定、これを目指すことを確認した。そのために、(1)大崎上島町慢性疾患重症化予防・在宅医療推進会議の開催(年4回程度)、 (2)在宅看取りの推進(①医療者と介護関係者との合同のケア会議の開催、②訪問看護ステーションの機能強化、③医療に強いケアマネジャーの養成、④「寄り添いパートナー(仮称)」の養成と登録、⑤事前指示(advance directive)に関する住民教育の実施)、(3)医療的見守りの強化:慢性疾患等の増悪による入退院の予防(①遠隔モニタリングの実施、②地域連携パスの活用と連絡協議会の活用、③認知症を有する住民への支援)等を実施する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額(B-A)」は622円であり、人件費等で使用した助成金の残額である。消耗品等でしか使用できない残額であることから、次年度に他と合わせて使用する方が効率的に使用できる。 最終年度の補助額と合わせて、交通費等、必要なものに使用する計画である。
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Research Products
(18 results)