2012 Fiscal Year Research-status Report
がんサバイバーとの協働による「情報リテラシーを高めるモデル」の開発
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24659994
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
久保 五月 北里大学, 看護学部, 准教授 (60348597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲吉 光子 北里大学, 看護学部, 教授 (60203212)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 情報リテラシー / ヘルスリテラシー / 情報ニーズ / がんサバイバー / がん患者 / アクションリサーチ |
Research Abstract |
研究目的は、治療を終了したがんサバイバーの「情報リテラシーを高めるモデル」を、がんサバイバーと協働して開発することである。H24年度はモデル開発のための基礎的資料を獲得する段階と位置づけ、以下の3点を実施した。 1.海外における情報支援の現状把握:がんサバイバーに対する長期的な情報支援の内容および運用に関する情報を得るために、米国のがんサバイバーシップクリニックを視察した。また、情報ツールとしての、インターネット、オンラインコミュニティ活用に関する海外の動向を探索し、オンラインデータベース、体験共有・相互支援コミュニティサイト、世代別専用サイトなど、情報提供・情報共有の方法に関する示唆を得た。これらの情報は、本研究のモデル開発において有用である。 2.がんサバイバーの情報ニーズに関する過去5年間の国内・海外文献レビュー:対象文献で扱われていた主題を整理した結果、①情報提供の現状、②対象別・時期別の情報ニーズの特徴、③医療情報に関するサバイバーと医療者の認識に大別できた。提供されていない情報があること、診断後の時間経過に応じて情報ニーズの優先順位が変化すること等、重要な知見を得た。しかし、国内文献の多くは診断・治療期(急性期)あるいは終末期の研究に集中しており、本研究において治療を終えた長期生存者の情報ニーズを明らかにすることの重要性が確かめられた。 3.人工肛門造設術を受けたがんサバイバーの復職過程の調査:がんサバイバーの復職支援の重要性に着目し、人工肛門保有者の復職過程における体験を調査した。その結果、職場環境に適応し働き続けるために①必要な情報は何か、②誰と情報を共有するかなど、長期的な情報支援の観点から知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は、「情報リテラシーを高めるモデル」開発に向けた基礎的資料を獲得する段階と位置づけ、3つの計画を立案した。各計画の達成度は、以下の通りである。 1.海外施設の視察調査:米国のサバイバーシップクリニックにおいて医師の診療に同席した後、医師とナースプラクティショナーへのインタビューを実施した。この体験の一部と、インターネット、オンラインコミュニティ活用に関する海外の現状を誌上で紹介することで、多くのがん医療に携わる看護職に、がんサバイバーへの長期的支援の必要性と具体的な支援方法を提示することができた。 2.国内・海外文献レビュー:がんサバイバーの情報ニーズに関する過去5年間の国内・海外文献を集め、主題に基づいて整理した。文献の内容について、国内文献22件は分析を終了したものの、海外文献155件のうち、約3分の1の検討はまだ途中であり、H25年度も引き続き、分析を継続する。 3.情報ニーズと情報探究行動に関する研究:治療を終えたがんサバイバーの情報ニーズに関する研究の一つとして人工肛門保有者の復職過程における体験を明らかにし、第27回日本がん看護学会学術集会において研究成果を発表した。今後、人工肛門保有者以外にも対象を拡大して研究を継続し、がんサバイバーの情報ニーズに関する知見を積む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、「情報リテラシーを高めるモデル」開発の第2段階と位置づけ、がんサバイバーに対する情報支援プログラムの内容と運用方法に関する知見を得るために、新たな計画をスタートさせる。以下、計画の概要と推進方策を示す。 1.国内・海外文献レビューの継続:H24年度に収集した文献のうち、分析を終えていない海外文献について、研究分担者と協力して内容を詳細に分析し、知見を追加する。 2.がんサバイバーの情報ニーズと情報探究行動に関する質的研究:前向き・縦断的デザインを採用し、治療を終えたがんサバイバーの長期的な情報ニーズに関する面接調査を行う。対象は、罹患率の高さと長期生存者の多さという観点から、乳がんサバイバーと前立腺がんサバイバーとする。平成25~26年度にかけて、対象1名につき複数回の面接を行う。質・量の両面から十分な情報を得るために、面接者に質的研究の経験をもつ複数のがん看護専門看護師を加える。研究結果は、学会で発表するとともに、がんサバイバーに対する情報支援プログラムの内容に組み込む。 3.「情報リテラシーを高めるモデル」開発のためのアクションリサーチ:がんサバイバーと医療者の協働によるモデル開発の方法として、アクションリサーチのデザインをとる。参加者は、複数のがん医療専門家(がん看護専門看護師、腫瘍医など)と、研究参加を希望するサバイバー複数名である。サバイバーグループのメンバーは、広くがんサロンや患者会の協力を得て募集する。研究は、①アクションリサーチに関する勉強会の実施、②グループ討議によるモデル試案の作成・修正 の順で行う。平成25年度は①の勉強会を行い、平成26年度は、平成25年度に実施する情報ニーズの研究成果に基づいて②のモデル試案を作成する。 上記、1~3の計画を同時に進行し得られた成果を相互に反映させながら、研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、1.国内・海外文献レビュー、2.がんサバイバーの情報ニーズに関する研究、3.「モデル」開発のためのアクションリサーチを実施する予定である。以下、計画別に研究費の主な用途を示す。 1.国内・海外文献レビュー:海外文献の解釈に関する専門的知識の提供に対する謝金を計上する。 2.がんサバイバーの情報ニーズに関する研究:主な経費は、①人件費と②謝金である。①の内訳は、面接担当者の賃金(がん看護専門看護師3~4名分)と、面接の逐語録作成のための賃金(面接45~60回分)である。②は、研究参加者(がんサバイバー15~20名)の情報提供に対する謝金である。 3.「モデル」開発のためのアクションリサーチ:主な経費は、①書籍費、②謝金、③交通費である。①の内訳は、学習会で使用する書籍費と、「モデル」開発に活用する書籍・文献相互貸借の費用である。②の用途は、アクションリサーチの参加者(がんサバイバー5名程度)への謝金である。③の用途は、勉強会およびグループ討議参加者の交通費である。
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