2013 Fiscal Year Annual Research Report
計算生体力学による微小循環系の細胞の機能と環境の相互作用の解明
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24680048
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今井 陽介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60431524)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 計算力学 / 赤血球 / 細胞 / GPU計算 |
Research Abstract |
微小循環系の細胞流動を計算するため,これまでに,赤血球を始めとする細胞を内部流体と膜からなるカプセルで近似し,膜の固体力学に対する有限要素法と,細胞内外の流体力学に対する境界要素法あるいは格子ボルツマン法と連立し,Graphics Processing Unit(GPU)を用いて計算する計算手法を開発してきた.平成25年度はこれによる大規模パラメトリック計算を用いて,様々な条件下における細胞流動現象を解析した. 赤血球流動によって生じる力学環境を定量化するため,準希薄カプセル懸濁液と濃厚カプセル懸濁液のレオロジー解析をそれぞれ実施し,粒子応力テンソルおよび自己拡散テンソルを算出し,それらとカプセルの変形および配向角度との関係を明らかにした. 白血球の流動について,管径,白血球の変形能,赤血球体積率に対する大規模パラメトリック計算を実施し,細動脈相当のせん断速度においても,赤血球の追い越し挙動によって白血球の Margination が効果的に生じることを示した.また,細動脈相当のせん断速度では,Marginationした白血球と血管壁間の距離は,接着を可能とする距離に比べ十分小さくないことを明らかにした. がん細胞の流動についても同様のパラメトリック計算を実施し,管径が大きくなると,白血球と同じく Train から Margination へと運動が移行することを示した. さらに,血小板血栓形成に関する膜タンパクのligand-receptor結合を計算力学モデル化し,shear-induced platelet aggregation の影響を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において開発した細胞流動のGPU計算手法は,当初の予測を超える計算速度を有していたため,研究計画を上回る速度で研究が進行し,さらに計画を超える範囲の大規模パラメトリック計算が可能となっている.赤血球流動の大規模計算についてJournal of Biomechanical Science and Engineering の JBSE Graphics of the Year Award, 細胞懸濁液のGPU計算とレオロジー特性について流体ー構造連成計算の国際会議にてPoster Award (Second Place)を受賞し,また,白血球やがん細胞の流動について,生体力学のアジア太平洋最大の国際会議 7th Asian-Pacific Conference on Biomechanics にて APCB 2013 Award を受賞した.生体医工学,計算力学,GPUに関する国内外の学会において招待講演を依頼されるなど非常に注目されており,当初の計画以上に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり,平成26年度は,マラリア感染赤血球による微小循環障害,白血球の生理機能,がん細胞の血行性転移に関連する流動および接着現象について,それぞれがどのような共通点をもち,どのような相違点があるのか明らかにする.またこれまでに開発してきた細胞モデルを血管内皮細胞に応用する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である. 平成26年度請求額とあわせ,平成26年度の研究遂行に使用する予定である.
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Research Products
(19 results)