2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体の非線形光学効果を利用した無染色イメージングの医療応用のための基礎基盤研究
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24680060
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大嶋 佑介 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (10586639)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 無染色イメージング / ラマン分光 / ラマンイメージング / 非線形光学イメージング / SHGイメージング / 顕微ラマン分光 |
Research Abstract |
生体組織に超短パルスレーザーを照射すると,光と分子の非線形な相互作用によって,生体分子を可視化することが可能である.また,振動分光法のひとつであるラマン分光法によって,線形過程・非線形過程を問わず,無染色で分子をイメージングすることが可能である.本研究では,非線形光学およびラマン散乱を網羅的かつ相補的に利用して,医学・生物学分野における無染色イメージング技術の実用化を目指して,これまでに高感度イメージング分光システムを構築した.本システムは,超高感度EM-CCD検出器および透過型VPHグレーティングを搭載し,自発ラマン散乱のような極めて微弱な信号を検出するのに充分なスループット性と波長分解能を有しており,450~900 nmの波長領域において平均0.87 nmの波長分解能で,ラマンイメージングとラマンスペクトル計測が可能である.イメージングシステムのマルチモダリティ化を視野に入れ,蛍光イメージングとラマンイメージングを高速で同時に取得するため,既存のナノ秒パルスレーザーに加えて,連続波の電子制御波長可変チタンサファイアレーザーを励起光源として利用するため,532 nmの励起用CWレーザーを新たに導入した.また,既存のラマン顕微鏡システムおよび多光子励起顕微鏡システムを用いた,生体のラマンスペクトル計測,そして非線形光学イメージングを網羅的に行い,骨粗鬆症モデルラットや脊髄損傷マウスの解析を行った.さまざまな疾患モデル動物の試料を用いた基礎的な解析およびデータベース構築のための予備実験を完了し,新規開発したハイスループットラマン分光イメージングシステムを用いた本格的な計測に向けて,ハード面およびソフト面においてその技術基盤が完成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連続波の電子制御波長可変チタンサファイアレーザーを発振させるための励起用532 nmの光源を導入し,キャビティのアライメントを最適化しており,最終年度に向けた網羅的な解析に向けた,システムの改良は順調に進んでいる.また,既存の顕微ラマン分光システムや多光子励起顕微鏡を用いた疾患モデルの解析についても良好に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,既存のラマン顕微鏡システムおよび,多光子励起顕微鏡システムを用いた,生体のラマンスペクトル計測および非線形光学イメージングによるデータの蓄積を進めていく.さまざまな疾患モデルの動物試料を作成し,基礎的な解析およびデータベース構築を進めていく.また,新規開発したハイスループットラマン分光イメージングシステムに関しては,連続波の電子制御波長可変チタンサファイアレーザーのキャビティのアライメントを最適化し,400 nm~785 nmに及ぶ広範囲の励起波長を利用して,蛍光イメージング,ラマンスペクトル計測およびラマンイメージングが同時にかつ高速で行えるようにすることで,システムのマルチモダリティ化を図る.本研究で開発したハイスループットラマン分光イメージングシステムを,疾患モデル動物の解析へと応用し,その研究成果を広く発信していく.さらに,疾患モデルの解析を通じて,発症メカニズム解明や診断治療への応用可能性を検討することによって,生体分光・イメージング計測のための新しいツールとしての有用性を評価し,実用化へつなげていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生体のラマンスペクトルの網羅的解析において,既存の疾患モデル動物を利用したラマンスペクトル計測を中心に行ったところ,当該年度に予定していた,動物実験や細胞培養実験に関わる試薬・消耗品費が当初見積額を下回ったため. 次年度に行う,動物実験や細胞培養実験のための消耗品費として使用する.また,最終年度にあたり,研究成果の報告のための学会参加に関わる旅費,参加費や論文出版のための英文校正費用や雑誌掲載料などに使用する.
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