2012 Fiscal Year Annual Research Report
オリジナル可視化技術による木材乾燥割れ発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
24688019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阪上 宏樹 九州大学, 農学研究院, 助教 (40604822)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 木材 / 乾燥 / マイクロクラック / スギ |
Research Abstract |
木材乾燥割れの発生機構を明らかにすることは、割れの無い高品質な乾燥材を生産する上で重要な知見となる。 これまでの研究では、独自の観察装置を用いて木材表面を観察したところ木口面にマイクロクラックが存在する事が明らかとなった。そこで本研究では、平成24年から平成27年までの研究期間において、更なる知見を得るため、1.利用面で最も問題となる板目面にも同様にマイクロクラックが発生するのかを新たな観察装置を用いて明らかにし、2.このマイクロクラックがマクロクラックへと進展する過程をミクロ観察からマクロ観察まで可能なデジタルマイクロスコープでその場観察する。更には3.軟X線装置を利用したその場3D観察装置を開発して木材内部へ進行する割れの挙動を解明することで乾燥割れの発生メカニズムを完全に解明することを目的とした。 平成24年度は、まず、第一ステップである、板目面における割れ発生メカニズムを解明するため、倒立型顕微鏡を導入した新たな観察装置を開発し、従来よりも大きな試験片を使用して乾燥させ、板目面にもマイクロクラックが発生するかその場観察することであった。そこでまず、新たな観察装置を開発するため、従来と同様の方法である、顕微鏡全体を環境制御装置で覆う方法を探索したが、大型化してしまい、環境をコントロールすることが困難であると予想された。そこで、環境制御チャンバーを小型化し、顕微鏡ステージ上に設置し、そのチャンバー内で従来と同様の実験を行った結果、これまで行ってきた正立顕微鏡と同様にスギの辺材、心材(赤心材、黒心材)の木口面にマイクロクラックが発生していることがわかった。次に、正立顕微鏡ではサンプルサイズの制限があり、観察できなかった実大レベルのサンプルの板目面の観察を、木口面の観察条件と同様の乾燥条件で行った。その結果、木口面には肉眼でも観察出来る大きさのマイクロクラックが存在していることが確認できたが、板目面には顕微鏡でマイクロクラックを観察することが出来なかった。この原因を検討したところ、実験サンプルが軸方向への水分移動が容易なスギの辺材であったため、板目面表面と内部に含水率差があまり生じなかったこと、曲率の小さな年輪を有する樹皮側部からサンプルを切り出したため、収縮の異方度が小さかったことが事が考えられた。従って、板目面のマイクロクラックを観察するためにはサンプルの調整が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
達成目標は観察系の確立および板目面に発生するマイクロクラックを可視化することだった。しかし、観察系の開発は行えたが、板目面に発生するマイクロクラックを観察することができなかった。この理由は、従来の観察系では顕微鏡を覆う環境制御装置を開発したが、倒立型顕微鏡の場合、顕微鏡が大型化し、全体を覆うことが難しく、小型の環境制御装置を設計して開発したため、時間を要したこと、それに派生してサンプルサイズを縮小することが余儀なくされたためであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
・板目面に発生するマイクロクラックを可視化するため、まず、(1)倒立顕微鏡で観察可能な大きさの心持ち材を用いる。これでもマイクロクラックが発生しない場合(2)H25年度購入予定のファイバーデジタルマイクロスコープを用いて別に新たな観察系を作製し、実大材表面に発生するマイクロクラックを可視化する。 この実験と並行し、H24年度開発した観察系を使用し、H25年度研究予定のマイクロクラックからマクロクラックに拡大する形態変化の一部始終を可視化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は人件費・謝金として計上していたが、新たな観察系の開発に時間を要し、実験のデータを得る段階へは至らなかったため、人件費としての支出が発生しなかった。H25年度は実験のデータを得るためにアルバイトもしくはパートタイマーを新たに雇用する予定である。
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