2014 Fiscal Year Annual Research Report
オリジナル可視化技術による木材乾燥割れ発生メカニズムの解明
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24688019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阪上 宏樹 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40604822)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農林水産 / 可視化 / 環境材料 / 木材 / 乾燥 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、これまでマイクロクラックを板目面に発生させることができなかったため、①板目面に割れが発生しやすいと考えられる広放射組織を有する広葉樹コナラを使用し、②レーザー顕微鏡(CLSM)を搭載し、乾燥環境を制御可能なその場観察装置に小型デジタルマイクロスコープを導入して、マイクロクラックがマクロクラックに進展する様子を経時観察する計画で実験を行った。 まず、コナラの生材心材の木口面をシーリング処理して2日間温度50℃、相対湿度5%以下の環境で乾燥させながら、CLSMと装置内に設置したWifi機能を有し、遠隔操作可能なデジタルマイクロスコープを用いて観察した結果、板目面および柾目面に割れを確認することができなかった。CLSMで得た画像を解析したところ、表層の組織が乾燥初期に約2%程度収縮し、その後6%まで緩やかに収縮していることがわかった。 一方、同一サイズの辺材を同条件で実験したところ、乾燥初期に心材の2倍である4%収縮し、その後緩やかに6%程度まで収縮することがわかった。更には、実験終了時には木材の表面に割れの存在を肉眼で確認することができた。しかし、割れの発生がレーザー顕微鏡およびデジタルマイクロスコープの視野外だったため、発生時期およびその進展を観察することができなかった。辺材と心材の乾燥速度を比較したところ、乾燥初期の辺材の乾燥速度は心材と比べると遙かに大きいことがわかった。乾燥初期の急激な乾燥と表層の大きな収縮が割れ発生の原因と考えることができる。 当初の研究計画に加えて、木材乾燥による収縮を大幅に低減できる可能性があるイオン液体を入手することができたため、本研究課題で開発したその場観察装置を使用してどの程度収縮を抑制できるか細胞レベルで評価した。その結果、接線方向で6%程度の収縮率だった未処理材に比べてイオン液体で処理した木材の収縮率は半分程度に抑えることが可能なことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅延の主な原因は、昨年度の研究の遅れに影響しているためである。当初の研究計画では平成25年度には板目面に発生する割れを観察し、マイクロクラックがマクロクラックに進展する様子を観察する予定だったが、これまで使用していたスギでは板目面には割れが発生しなかったこと、その場観察装置に予定していたデジタルマイクロスコープが設置できなかったため、樹種の再検討および機種の選定に時間を要したことが平成26年の研究にも影響した。ただ、当該年度始めに再考した研究計画はほぼ予定通り進行している。最終年度の平成27年度は本研究課題で最終ステージである軟X線装置を利用したその場3D観察装置を開発して木材内部へ進行する割れの挙動を観察する予定である。観察装置の開発はほぼ終了しており、サンプルが入手でき次第実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで板目面に発生する割れを観察することが出来なかったが、本研究課題で倒立型のCLSMを採用したこと、および平成26年度に広放射組織を有する広葉樹コナラ辺材を使用して実験を行った結果、板目面に発生する割れを観察することができた。ただ、割れが発生したのはCLSMおよびデジタルマイクロスコープの視野外だったため、発生の時期およびその進展を観察することが出来なかった。また、心材と辺材では割れの発生条件が異なり、表層の収縮と乾燥速度との間にも何らかの関係があることがわかった。最終年度となる平成27年度は板目面に発生する割れに関して更なる知見を得るため、サンプル数を増やし、また、複数台のデジタルマイクロスコープを使用して観察視野を広げ、割れの発生初期を観察するとともに、表層の収縮率および乾燥速度を計測し、板目面における割れの発生メカニズムを解明する。 木材中に発生する割れは板目面すなわち表面のみならず内部割れも大きな問題となる。平成26年度は非破壊で木材内部を観察することが出来る軟X線装置の開発に着手したが、環境制御装置の作製に不可欠なX線を透過するカーボン板を入手することが出来なかったため実験を行うことが出来なかった。しかし、平成26年度末にカーボン板を入手することが出来たため、平成27年度はその場3D観察装置を完成させて木材内部に発生する割れを経時観察し、割れの発生メカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
木材表面に発生するミクロレベルの割れがマクロレベルの割れに進展する様子を観察するため小型のデジタルマイクロスコープを購入する予定だった。しかし、デジタルマイクロスコープの使用温度が50℃で、観察環境も50℃だったため、高額なデジタルマイクロスコープを購入し、使用しても破損する恐れがあったため、比較的安価なデジタルマイクロスコープを購入して試行した。そのため、本年度は余剰金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入した安価なデジタルマイクロスコープを使用して比較的良好な画像を得ることができたが安価なレンズ特有のゆがみが生じた。また、得られた画像の視野が狭く、観察対象を十分に捉えることが出来なかった。従って、十分に検討を行い、性能の良いデジタルマイクロスコープを購入するか、多方面からも一度に観察できるように同一モデルのマイクロスコープを複数台購入する予定である。
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Research Products
(1 results)