2012 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎臓病の次世代バイオマーカーの開発―伴侶動物の尿中microRNAを指標に―
Project/Area Number |
24688033
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
市居 修 北海道大学, 大学院・獣医学研究科究科, 助教 (60547769)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | miRNA / イヌ・ネコ / 足細胞・ポドサイト / 慢性糸球体腎炎 / 慢性腎臓病 / バイオマーカー / 尿 / モデルマウス |
Research Abstract |
本研究では、短鎖のRNA(micorRNA ; miRNA)をバイオマーカーとして獣医学に応用することを目的としている。対象疾患としては、伴侶動物で急増する慢性腎臓病に着目した。本年度はバイオマーカーmiRNA候補選抜のため、慢性糸球体腎炎(GN)モデルマウス(B6.MRLc1)を主に解析した。GNマウスは膜性増殖性糸球体腎炎を発症し、メサンギウム増殖、糸球体基底膜の二重化・免疫複合体沈着、足細胞傷害、糸球体でスリット膜関連分子の発現低下ならびに炎症メディエーターの発現増強等を示す。GNマウスの糸球体を分離し、健常マウスとのmiRNAマイクロアレイ比較解析を実施した。4種のmiRNA(miR-92b*、let-7a、miR-26a、miR-195)がGNマウスの病態初期に有意に変動するmiRNAとして同定された。特に、1et-7a、miR-26a、およびmiR-195は健常マウスの糸球体に強く発現し、GNマウスでその発現は低下することをTaqManPCRで明らかにした。miRNAの発現局在をin situ hybridization法で解析し、糸球体構成細胞に陽性シグナルが得られた。さらに、let-7a、miR-26a、およびmiR-195はイヌ、ネコ、ウシ、およびウマの糸球体にも発現することを明らかにした。これらmiRNAは尿に出現し、尿沈渣を除いた尿上清からも検出され、GNモデルにおける1et-7a、miR-26a、およびmiR-195の尿中miRNAレベルは低値だった。in vitro解析において、miR-26aは足細胞株、miR-195はメサンギウム細胞株に強く発現し、特に前者は足細胞の分化と共に発現上昇を示した。足細胞をLPSで傷害したところ、アクチンの減少やCell Viabilityの低下と共に細胞内miR-26a発現も低下した。一方で、LPS刺激中、培養上清中miR-26aレベルは一過性に上昇し、後に減少した。本年度の研究において、糸球体特異的かつ動物種に共通して発現し、さらには尿で検出しうるバイオマーカー候補miRNAを選抜した。特に、糸球体内miR-26aの発現変化は足細胞傷害と関連があり、その尿中検出は非侵襲的な糸球体病変の把握に繋がると考えられる。今後、今回同定したバイオマーカーmiRNA候補さらには新規候補についてマウス以外の動物種でも検討していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画では、疾患モデルマウスを用いて、慢性腎臓病におけるバイオマーカーmiRNA候補の選抜を予定していた。本目標は達成されていると考えられ、上記評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究のゴールは、動物種に共通する腎臓病バイオマーカーを同定し、獣医学に応用していくことである。一方で、伴侶動物(イヌ、ネコ)におけるmiRNAの配列や発現動態に関する知見は未だ乏しい。今後は、イヌおよびネコの腎臓で発現するmiRNAの配列および種類をRNA-seqによって明らかにする。GNマウスの解析で選抜したバイオーカーmiRNA候補の発現を精査すると共に、臨床検体を利用して新規バイオマーカーmiRNA候補の選抜を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行中、バイオマーカーmiRNA候補の更なる選抜・下流分子の同定のため、マイクロアレイならびにRNA-Seqの解析を利用した実験が当初の計画よりも増加した。網羅的遺伝子発現解析は資金と時間を要する。これらの計画を完遂するため、次年度に予算と実験期間を集中させ、解析を実施する。
|