2014 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患に関わるストレス脆弱性の分子・神経回路基盤の解明
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24689015
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
古屋敷 智之 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20362478)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳科学 / 薬理学 / 精神医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスはうつ病など精神疾患発症に深く関わるが、その決定機構は不明であり、ストレスを標的とした抗うつ薬創薬戦略は確立していない。これまでの研究から、反復ストレスによりミクログリアが活性化されること、主にミクログリアに由来する炎症関連分子が前頭前皮質ドパミン系を抑制してストレスによる情動変容を促進することを示してきた。本研究では、反復ストレスによる前頭前皮質ドパミン系とミクログリアの制御と作用機序を解析し、ストレス脆弱性の決定機構を分子から神経回路のレベルで包括的に理解することを目指している。 前年度までに、反復ストレスにより脳内で誘導される炎症関連分子を同定し、その分子の受容体(自然免疫分子)の欠損マウスで反復ストレスによる情動変容、神経細胞の機能形態変化、ミクログリア活性化が起こらないことを示した。またストレスによる情動変容を制御する前頭前皮質のドパミン受容体サブタイプを特定し、そのドパミン受容体依存的に前頭前皮質で誘導される遺伝子群の同定を進めていた。本年度は、組織学的解析や単離ミクログリアの網羅的遺伝子発現解析から、反復ストレスによるミクログリアの活性化や遺伝子発現プロファイルには脳領域特異性があることを発見した。そこで脳領域特異的にミクログリアの機能や遺伝子発現を制御する実験系を独自に開発して、上記の炎症関連分子受容体がミクログリアで働いて反復ストレスによる情動変容を促すことを示し、その作用する脳領域も特定しつつある。また神経細胞サブタイプ特異的な遺伝子発現操作により、ストレスによる情動変化の制御において前頭前皮質ドパミン受容体が働く神経細胞サブタイプを同定しつつある。ストレスによる情動変化には前頭前皮質神経細胞の形態変化が重要であることから、組換えウイルスを用いたsparse labelingによる神経細胞形態可視化技術も立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の当該年度の研究計画では、本研究で反復ストレスにおける重要性を示した炎症関連分子受容体の作用する脳領域と細胞種を同定するとともに、反復ストレスによる情動変化の制御において前頭前皮質ドパミン受容体の作用する神経細胞サブタイプを同定することを目的としていた。「研究実績の概要」の通り、本研究で独自に開発したミクログリアの機能や遺伝子発現の制御法を用いて、上記の炎症関連分子受容体がミクログリアで働いて反復ストレスによる情動変化を促すことを示し、その作用する脳領域も特定しつつある。また神経細胞種特異的なドパミン受容体発現抑制法を確立し、ストレスによる情動変化を制御する前頭前皮質のドパミン受容体の作用する神経細胞サブタイプを同定しつつある。また当初の研究計画では、ミクログリア活性化やドパミン受容体が神経細胞の機能形態変化を制御する分子機序についても解析する予定であった。すでに網羅的遺伝子発現解析を通じて、反復ストレスによりミクログリアで誘導される遺伝子群やドパミン依存的に前頭前皮質で誘導される遺伝子群を同定している。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で確立した脳領域特異的なミクログリアの機能・遺伝子発現操作法を用い、本研究で重要性を示した炎症関連分子受容体(自然免疫分子)が反復ストレスによる情動変化を促す脳領域を確定する。ストレスによる情動変化の制御を担う前頭前皮質ドパミン受容体の作用点を神経細胞サブタイプ特異的な発現抑制実験により確定する。反復ストレスによりミクログリアで誘導される遺伝子群や反復ストレスによりドパミン依存的に発現制御される前頭前皮質の遺伝子群について、神経細胞やミクログリアでの役割を初代培養細胞で確認し、初代培養細胞で重要性の示された遺伝子群について反復ストレスによる情動変化、神経細胞の機能形態変化、ミクログリア活性化への関与を調べる。また本年度立ち上げたsparse labelingによる神経細胞形態可視化技術を用い、反復ストレスによる前頭前皮質神経細胞の形態変化とミクログリア活性化や前頭前皮質ドパミン受容体の関連性を組織学的に検討する。反復ストレスによる神経細胞やミクログリアでの細胞内情報伝達分子や転写因子の活性化についても検討したい。
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Causes of Carryover |
計画した実験の一部を次年度に行う必要があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実験のための消耗品の購入に用いる。
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Research Products
(17 results)