2012 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質形成における新規移動制御分子Dpy19ファミリーの機能解析
Project/Area Number |
24700356
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡辺 啓介 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20446264)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 発生・分化 / Dpy191 / 大脳皮質 / 細胞移動 / 興奮性神経細胞 |
Research Abstract |
大脳皮質は哺乳類で特に発達した領域であるが、皮質特異的な発生プログラムについては不明な点が多い。これまで膜タンパク質Dumpy19 like1 (Dpy19L1)が、大脳皮質興奮性神経細胞に強く発現し、神経細胞移動に関わることを見出した。本課題では、マウス大脳皮質形成におけるDpy19 ファミリー(Dpy19L1-L4)の機能・シグナルを解析することで、大脳皮質特異的な発生メカニズムを解明することを目的としている。以下の研究計画を進行中である。 ① Dpy19は膜タンパク質と予想されるが、分子作用機序は不明である。そこで、COS細胞にDpy19L1を発現させ、細胞内局在を検討したところ、核周囲、さらに細胞質では微小管と類似した局在を示した。また、正常な局在には膜領域が必要であることが示唆された。以上から、Dpy19L1と細胞骨格系との関連が示唆された。 ② 大脳皮質形成におけるDpy19の役割を明らかにするため、まずDpy19L3およびDpy19L4ノックアウト(KO)マウスを作製し、組織化学的解析を行った。これまで、両KOマウス大脳皮質に顕著な構造異常を見出せなかった。今後はより詳細な解析を行い、脳形成異常・行動異常がみられるかを調べる。またDpy19L1コンディショナルKOマウスを作製に成功し、解析準備中である。 ③ Dpy19シグナル経路を明らかにするため、細胞移動に関わる既知の分子との関連性を解析し、その結果、神経細胞の移動に必須である分子とDpy19L1が培養細胞内で類似した分布を示した。現在、生化学的手法を用いて、この分子とDpy19の相互作用を解析中である。 本年度の研究により、Dpy19の細胞内局在、分子作用機序の一部を明らかにできた。また、Dpy19L1,L3およびL4の3系統のKOマウスの作製に成功したため、個体レベルでのDpy19の機能解析が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画 ① Dpy19タンパク質の細胞内局在の解析と ③ Dpy19シグナルの解析については、おおむね計画通りに進行することができている。これらは主に培養細胞を用いた実験であるため、計画に遅れることなく遂行できたと考えている。 実験計画 ②大脳皮質形成におけるDpy19ファミリーの機能解析については、若干の研究の遅れが生じている。これは、予定よりDpy19L1ノックアウトマウスの作製が遅れたためである。 当初このマウスの作出は平成24年7~8月を考えていたが、キメラマウスが得られず、4ヶ月程度の遅延が生じてしまった。しかしながら、12月にキメラマウスが得られ、それ以降の繁殖は順調に進んでいるため、平成25年度には大きく研究を進めることが可能であると考えている。当初予定していた交配マウス数を増やすことで、研究の遅れを取り戻すことを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、以下の3つの計画を並行して進める。その中でも、実験計画 ②における作製に成功した3系統のDpy19L1,L3およびL4ノックアウト(KO)マウスの個体レベルでの機能解析を中心に研究を進める。 ① Dpy19タンパク質の細胞内局在の解析:平成24年度では細胞株を用いた解析を中心に行ったため、平成25年度は、大脳皮質神経細胞の初代培養系を用いて、Dpy19と各種マーカーの二重染色を行い、細胞内局在を検討する。 ② 大脳皮質形成におけるDpy19ファミリーの機能解析:Dpy19L1,L3およびL4 KOマウスの組織化学的解析により、これらのマウスで大脳皮質の構築に異常がみられるかを調べる。また、in utero電気穿孔法により、Dpy19遺伝子を興奮性や抑制性神経細胞に強制発現させることで、脳形成に異常が起こるかを調べる。Dpy19L3と双極性障害の関連が報告されているため、Dpy19 KOマウスで脳内情報処理に障害があるかを調べる目的で、行動テストバッテリーを計画している。 ③ Dpy19シグナルの解析:今年度Dpy19と関連をもつことが示唆された分子について、生化学的手法を用いて、Dpy19との相互作用を調べる。さらに、Dpy19 KOマウス大脳皮質にこの分子を発現させることで、神経細胞の移動異常が回復するかを検討する。また、様々なDpy19L1のtruncated form発現ベクターを作製し、Dpy19L1 shRNAと発生期大脳皮質に共導入し、細胞移動異常がレスキューされるかを調べることで、神経細胞移動に関わるDpy19の機能ドメインを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度での解析の中心となる分子生物学(プラスミド精製カラム、制限酵素など)、組織化学(一次・二次抗体、スライドグラスなど)および培養実験(培地、トランスフェクション試薬など)に用いる消耗品を購入する。Dpy19L1ノックアウト(KO)マウスの解析を進めるために、大脳皮質に発現するマーカータンパク質の抗体を購入する。また、Dpy19L1 KOマウスをはじめ、複数系統の遺伝子改変マウスの維持のため、新潟大学動物実験施設内の動物飼育費に使用する。本研究課題により得られた成果を、年国内1回(日本解剖学会総会・全国学術大会)、国外1回(北米神経科学会)にて発表することを予定している。
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Research Products
(3 results)