2013 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質形成における新規移動制御分子Dpy19ファミリーの機能解析
Project/Area Number |
24700356
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡辺 啓介 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20446264)
|
Keywords | 発生・分化 / Dpy19L1 / 大脳皮質 / 細胞移動 / 興奮性神経細胞 |
Research Abstract |
大脳皮質の興奮性神経細胞と抑制性神経細胞は、発生期において、大きく異なる細胞移動様式をもつが、分子レベルでの違いは不明な点が残されている。これまでDumpy19 like1 (Dpy19L1)が、発生期大脳皮質の興奮性神経細胞の放射状移動を制御することを明らかにした。本課題では、大脳皮質におけるDpy19ファミリー(Dpy19L1-L4)の機能解析を通して、大脳皮質興奮性神経細胞の発生メカニズムを解明することを目指している。以下の研究計画を進行中である。 ① Dpy19は膜タンパク質と予想されている。そこで、COS-7細胞にDpy19L1を発現させ、細胞内局在を検討したところ、核周囲に強く、細胞質では微小管と類似した局在を示した。さらに、ウェスタンブロットや微小管重合阻害実験等の結果から、Dpy19L1と細胞骨格系、特に微小管と強く関連をもつことが示唆された。 ② 大脳皮質形成におけるDpy19の役割を明らかにするため、Dpy19L3、Dpy19L4ノックアウト(KO)マウス、さらにDpy19L3;Dpy19L4ダブルKOマウスを作製し、組織化学的解析を行った。しかしながら、これらのKOマウスの大脳皮質には、組織学的には大きな異常は認められなかった。またDpy19L1 KOマウスを作製し、解析を行った結果、80%程度のDpy19L1 KOマウスが生後1日程度の間に致死になることが明らかになった。さらに生存したKOマウスについては、野生型と比較すると顕著な低体重を示した。この結果から、Dpy19L1が発生期または出生後の生存・成育に重要な働きを持つことが示唆された。 本年度の結果から、Dpy19ファミリーメンバーの分子作用機序の一部を明らかにできた。さらに、Dpy19L1の個体レベルでの重要性を明らかにできた。しかしながら、大脳皮質形成におけるDpy19L1の役割、Dpy19L3およびDpy19L4の機能については今後詳細な解析を必要とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画 ① Dpy19タンパク質の細胞内局在の解析については、おおむね計画通りに進行することができた。これらは主に培養細胞を用いた実験であるため、計画に遅れることなく、研究を遂行することができた。 実験計画 ②大脳皮質形成におけるDpy19ファミリーの個体レベルでの機能解析については、若干の研究の遅れが生じてしまった。これは、新潟大学動物実験施設の耐震工事のため、一時的に仮施設でDpy19ノックアウトマウスを維持する必要が生じたが、仮施設での交配・繁殖がうまくいかず、結果として研究に用いるマウスを確保できなかったためである。平成25年12月に移転後新施設においてDpy19ノックアウトマウスが誕生し、現在計画よりマウス飼育数を増やすなどの対策をとっており、平成26年度にはDpy19ノックアウトマウスを用いた解析を大きく進めることができると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、以下の実験計画を進める。その中でも、実験計画 ②の3系統のDpy19L1,L3およびL4ノックアウトマウスの個体レベルでの機能解析を中心に研究を進める。 ① Dpy19タンパク質の細胞内局在の解析:平成26年度は、培養細胞株以外に、発生期大脳皮質神経細胞の初代培養系を用いて、Dpy19と細胞小器官マーカータンパク質の二重染色を行い、Dpy19の細胞内局在を検討する。また、タイムラプスイメージングを用いて、Dpy19L1強制発現させた時の細胞小器官(微小管、小胞体など)の構造変化を観察する。 ② 大脳皮質形成におけるDpy19ファミリーの機能解析:Dpy19L1,L3およびL4 KOマウスを用いた組織化学的解析により、これらのマウスの大脳皮質形成に異常がみられるかを調べる。胎生期マウス脳のみでなく、生後脳についても解析を行う。また、子宮内電気穿孔法により、Dpy19遺伝子を抑制性神経細胞に強制発現させることで、脳形成に異常が起こるかについても調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物施設改修のため、工事期間中に仮動物施設でDpy19L1ノックアウトマウスを始めとした遺伝子改変マウスを飼育し、必要な頭数まで繁殖し、研究に用いる計画であった。しかしながら、仮施設におけるマウスの交配がうまくいかず、当初予定していた頭数が確保できなかったために、新施設移転、稼働後に再びノックアウトマウスを実験に必要な頭数まで繁殖させる必要が生じた。その結果、研究計画の遅延が起こった。 Dpy19ノックアウトマウスのin vivoおよびin vitro解析に主に使用する。実験に必須となる分子生物学用消耗品(プラスミド抽出キット、PCR酵素、RNAプローブ作製試薬等)、組織化学用消耗品(抗体など)および細胞培養用消耗品(培地、プラスチック器具、リポフェクション試薬、遺伝子導入用キュベットなど)、さらに新潟大学動物施設でのマウス飼育費用に使用する。
|
Research Products
(5 results)